色とりどりの蒸しもの供える

                           文 写真・魯忠民


「麺花」を作る陝西省華県の農村のおばあさん。下はできあがった麺花

 「麺花」は、また「花篷」「礼篷」「麺塑」などとも呼ばれる。動植物や人の形をかたどった小麦粉製の蒸しもののことだ。小麦粉製の食べ物を主食にしている中国の北方地方でつくられる。各地にそれぞれ特徴があり、たとえば、山西省南部の臨汾・運城地区、陝西省の関中・渭南地区などの麺花は種類も多く、丹念につくられている。冠婚葬祭ともなると、親戚や友人たちから贈られた色とりどりの麺花が並び、まるで「民芸博覧会」でも開くかのようだ。

 食用できるばかりか、形もきれいで、民俗的な価値も高い。もともとは祭祀用の供え物としてつくられた。牛や羊などの供え物の代わりに動物型の蒸しものをつくり、供えたことから始まった。それを民家の神棚に供えればよろずの神を祭り、家系図の前に供えれば祖先を祭った。葬式の棺おけの前に供えれば死者をとむらい、婚礼の「喜」の字の下に供えれば天地の神を祭った。麺花は「礼篷」とも言うが、それは、農村の冠婚葬祭や赤ちゃんの満一カ月の祝い、またさまざまな儀礼の行事に贈りあうので、そう呼ばれている。

 作り手は、農村の女性がほとんどだ。山西省南部や陝西省渭南地区の村では、春節ともなるとどの家でも麺花づくりに忙しい。道具と材料はいたって簡単なもので、のし板と包丁、くし、ハサミ、それに小麦粉とナツメ、緑豆、黒豆、着色料などである。

 まず、小麦粉に水を加え、こねてから発酵させる。これにはコツが必要だ。発酵させすぎると、蒸したときに裂け目が生じる。発酵が不十分なら、蒸してもよく膨らまない。とはいえ数値的な基準はないので、経験とカンに頼るだけだ。

 発酵させた生地は、女性たちが馴れた手つきで、さまざまな形をつくり上げていく。ハサミを使って手足や顔立ちを整え、くしを使って模様を描き、最後に動物の目となる豆をはめ込む。手先の器用な嫁さんたちは、みるみるうちに花々や小鳥、魚などの形をつくる。こうした小さな動植物を、大きなトラの麺花の上に飾りつけることもある。大きなものは数キロの重さになるので、一般の家庭用セイロでは、トラの麺花が一つしか蒸し上がらないという。

 蒸気のたったセイロに入れて、十分ほど蒸したら形を整え、さらに蒸し続ける。蒸し上がったら、熱いうちに色をつける。女性たちは綿棒を使って、すばやく点をつけたり、色を塗ったりする。熱い蒸気が立つなかで、生き生きとした麺花が、次々と並べられていく。

 麺花は祝祭日の供え物であり、食べ物でもある。見た目がよくて、おいしくて、華やかだという特徴は、麺花が今に残されている理由であろう。(2002年12月号より)