中国雑貨店 街角でおみやげ探し

幸せ祈る新婚用品

                         写真・佐渡多真子  文・原口純子
 
 日用品売場の片隅で見つけたピンクのガラスのコップ。幸せを祈る「双喜」のマークが浮き出ています。妙に凝ったデザインなのが気になって、店のおばさんに尋ねて見たら、八〇年代中ごろまで、婚礼用品としてよく使われていたものだそうです。

 当時の新婚生活では、男性側が家具や家電製品などの大物を揃え、女性側は、魔法瓶や洗面器など、いくつかの決まった小物を用意するしきたり。そんな小物類には、お嫁入り用の特別仕様として、「双喜」がつけられていたのです。

 「私もこれ持ってお嫁に行ったんだよ」売場のおばさんはふと遠い目になりました。新婚生活では歯磨きコップとして毎日使い、ビールが出回るようになってからは、そちらにも活躍しました。いろいろ使えるから「多用杯」と言うそうです。

  生活が豊かになり、婚礼も豪華になる一方の今、「新婚生活に使う人なんて、もういないよ」とおばさん。なるほど、このコップも「双喜」つきの魔法瓶なども、店の片隅でひっそりしています。それでも見ていると、ささやかな幸せを祈る素朴な想いが溢れてくるよう。結婚する友達へのおみやげにどうでしょうか。(2000年1月号より)