中国雑貨店 街角でおみやげ探し
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手仕事を味わう月餅の型
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写真・佐渡多真子 文・原口純子 |
旧暦八月十五日は、中国の伝統行事「中秋節」。明月を眺め、家族でご馳走を囲む習慣ですが、そこに月餅は欠かせません。夏の終わり頃から食料品売り場には月餅コーナーが特設され、活気づいています。 中国の月餅は、実に様々なデザインがあります。大小の丸、四角、桃型。そして表面には「豆沙」(あずき)、「棗泥」(なつめ)、「五仁」(五種類のナッツ)など、餡の種類を示す文字があったり、縁起のいい模様がデリケートに配置されていたり。有名店の特製なら、店名やロゴマークが浮き出ているものもあります。……つまり、それだけの型が必要なわけですね。 北京に一つ、注文に応じて月餅の型を作るお店を見つけました。もとは鍋の修理を主にしていましたが、改革開放後、生活が豊かになるにつれ月餅の種類が増え、次第に型作りの仕事が中心になったそうです。今では店中が型の見本で一杯です。 店からの注文を受けて木彫りの型を作るのは、それを専業にしている郊外の農村の人たちだそうです。様々な月餅が並ぶ初秋の豊かな風景はまた、器用な手によっても支えられているのです。そう分かってからはまず月餅のデザインをゆっくり眺め、それから頂くのが習慣になりました。(2000年9月号より) |