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北京の名物鍋

                         写真・佐渡多真子  文・原口純子
 
 羊のシャブシャブ「シュワン羊肉(ヤンロウ)」用の鍋は、本当によく考えられた形をしています。まずは中央の煙突から、炭を入れてよくおこします。火力が足りなければ、煙突の上に空き缶などを利用して作った細長い筒をつけ、空気の対流を利用して、火の勢いを強めます。火を弱くしたい時は、小皿などで煙突の穴を少しふさぎます。そして煙突のまわりで羊の肉や野菜を煮ていきます。

 食卓の上に、炭火を置き、加減をしながら食事する楽しさ。炭の香りが、寒い季節 には食欲をさらにそそります。煙突の下部は格子状になっていて、灰は鍋の脚部分に自然に落ちる仕組みです。食事が終われば掻き出し口からそれを捨てればいいのです。

 北京では、この鍋の形の赤いシールを窓ガラスに貼っている食堂がよくあります。 それは「シュワン羊肉ヤッテイマス」の目印。つまりそれほどに「シュワン羊肉」という料理と、 この鍋は分かちがたく結びついているということでしょう。

 時にはマイナス十度以下にもなるような厳寒の北京の名物料理、「シュワン羊肉」。昔も 今も、このよく工夫された鍋が、人々の体を温め続けているのです。(2001年2月号より)