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中国雑貨店 街角でおみやげ探し
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春を呼ぶ鉢
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写真・佐渡多真子 文・原口純子 |
![]() 冬至のころ、花屋の店先には大きな水仙の球根が並び始めます。そのほとんどが昔からの名産地、福建省ユト州で栽培されたもの。中国ではそれは地面に植えるのではなく、「水仙盆」と呼ばれる専用の鉢に入れ、室内で育てます。 「葉が育つ時は寒い所に、つぼみが出てきたら暖かい所に置く。水は昼間は球根がひたる程度に入れて、夜は水をあけておくこと」。花屋のご主人から、こんなふうな細かい注意をうけました。こうして気をつけて育て、上手くいくとちょうど旧正月のころ、水仙の花が満開になるのです。凍てついた戸外には一つの花も見られない旧正月に、こうして丹精した水仙の鉢を飾るのは優雅な伝統で、骨董店などでは様々な意匠を凝らした、古い「水仙盆」を見かけることもあります。 こんな美しい習慣を知ってからというもの、私も毎年冬になると、球根と好みの鉢を買って部屋で水仙を育てるのですが、その難しいこと。現代の部屋は暖かすぎるのか、毎年葉だけが異様に伸びてジャングルのようになり、花は二つ、三つという結果になってしまいます。それでも何かを育てるのは、とても楽しい。葉やつぼみの変化を眺めているうち、日ざしの変化にもふと気がついたりします。鉢の中から少しずつ春が始まっていくようです。(2001年3月号より) |