中国雑貨店 街角でおみやげ探し

湯を汲みにいく

                         写真・佐渡多真子  文・原口純子
 

 中国語で「打水去」といえば、水を打つのではなく、汲みに行くこと。共同水道まで、生活用水を汲みにでかけるイメージです。この言葉は、またお湯の場合にも使います。例えば、職場で「打水去」といえば、ボイラー室にお湯を汲みに行くこと。そんな時には、手から下げられるよう持ち手がついた、写真のような魔法瓶が使われています。

 細い持ち手の魔法瓶は、片手に二本ずつ両手であわせて四本くらいは下げることができ、大量のお湯汲みには、とても便利です。そして、ボイラー室に着いたら、魔法瓶の口からあふれるほどお湯を注ぎ、コルクの栓をしっかりしめる。こうして魔法瓶のなかに空気が残らないようにすれば、万が一、魔法瓶を倒しても、栓がはずれることがないのです。見かけは無骨なこの魔法瓶、使ってみるとなかなか細かな工夫があり、しかも保温にも優れています。

 生水がほとんど飲めない中国の都市では、人々は仕事の間じゅう、魔法瓶のお湯で喉を潤します。だから多くの職場では「打水去」が一日の仕事の始まり。ボイラー室から立ち上る湯気のなか、挨拶をかわしながらお湯を汲む人々の姿は、職場の朝の風物詩です。ピカピカの高層ビルの、給湯機を備えた職場が急速に増えつつあるなかで、こんな朝も、まだあちこちに残っています。(2001年11月号より)