【@japan わたしと日本】
 

発見を楽しむ理科の実験
                          深セン外国語学校(中等部) 呉静ブン

 

 2002年2月、私たち深ロレ外国語学校日本語クラスは、日本に研修旅行に行きました。東京、大阪、奈良、京都、長野県飯山市を巡った時間は、あっという間でした。

 楽しかった日本滞在の中でも、もっとも印象的だったのは、飯山市での交流です。私たちは、姉妹校の飯山市第一中学を訪問。交流は三日間だけでしたが、帰国後に思い出すのは、いつでも、きれいな雪景色だったあの飯山での時間です。

 私たちは、飯山第一中の中学生と一緒に授業を受けました。私は2年2組で「理科」の授業を体験。中国では、「化学」と「物理」に分かれていますが、日本では「理科」と呼んでいました。

 その日は、直列と並列の電気抵抗の実験でした。中国ですでに習っていた内容だったため、すぐノートに「R=R1+R2」「1/R=1/R1+1/R2」という二つの公式を書きました。

 「実験はそんなに難しくない。テキストを予習して、公式と実験の注意事項をしっかり覚えれば、日本語の授業でも大丈夫」と思う内容でした。

 中国の先生は、生徒に予習をさせるのは当然として、実験の前に、注意事項と結果(公式)を黒板に書いておきます。飯山第一中での実験の最中、中国での実験の光景が頭に浮かび、先生が、「試験には必ずこの問題が出ます」と言ったことをはっきりと思い出しました。

 そんなことを考えているうちに、日本の中学生は、真剣に実験を始めていました。まずは直列です。先生は前もって結論(公式)を教えていないので、自分たちが何かの大研究に打ち込んでいるように、真剣に考え、計算しながら、おもしろそうに実験を楽しんでいます。

 次は並列です。この時は、実験が終わり、データの計算も済んだにもかかわらず、なかなか結論を導き出せず、みんな困っているようでした。私は、「教科書を開いたらすぐ分かるのに。公式を見せてあげよう」と思ったのですが、一生懸命な様子を見て、やっぱり止めました。

 「確かに自分で考えたほうがいいかも」と思ったからです。その瞬間、いろいろなことを考えました。

 実験を楽しんで、教科書のポイントをうまくつかめない日本の中学生。試験のことばかり考えて、実験を楽しむ余裕のない中国の中学生。実験への取り組みから、それぞれの中学生の勉強に対する気持ちもわかります。

 日本も中国も基礎教育を非常に重視している国です。ここ数年、どちらの国も、詰め込み主義を捨てようとしています。もちろん、簡単に「試験をなくす」なんてことはダメでしょう。中国では教科書の難度を下げ、日本では、できるだけおもしろく勉強できる工夫がされていると思いました。

 私は、勉強を楽しみと結びつけることが大切だと思っています。「勉強する力」は、学生だけでなく、社会人にとっても大切なものですから、勉強の楽しさを味わえれば、知識そのものに対しての興味も深くなります。楽しみながらの勉強。これが、私たち中学生が最も望んでいるものです。

(本稿は日本語でご寄稿いただきました。筆者は2003年全国中学・高校日本語弁論大会で優勝)(2004年05月号より)