中国との出会いは、幼い頃に見たNHKの番組「シルクロード」だった。外国=アメリカというイメージが強かった当時、「こんな国がお隣にあるんだ」と衝撃を受け、中国に興味を持つようになった。
北京外国語大学に留学し、同時通訳の勉強をした後、そのまま北京に留まり、現在は、人民日報社のニュースを電子化してインターネットで配信する日刊日本語ニュースサイト「人民網日本語版」で、翻訳者・チェッカーとして働いている。日刊なので、今日の仕事を明日に延ばすことはできないし、中国関連のニュースをいち早く日本語で届けなくてはならない緊張した仕事だ。この経験を活かして、「将来は翻訳だけでなく、通訳の仕事もできれば」と語る。
一見、色白でやさしげな面差し、穏やかな語り口とたおやかな雰囲気だが、意外と行動派。時間とお金に余裕があれば、ふらりと1人旅に出る。
初めての中国旅行は、北京、上海、西安、桂林を廻るパッケージツアーだった。しかし、どこか物足りなさを感じた。そこで2000年夏、台風の合間を縫って、廈門への6日間の旅を決行した。現地で突然、土楼(客家の住居、要塞のような構造)が見たいと思い立ち、すぐにチャーター車とガイドを手配。翌日、南靖に行くことにした。「思えばこれが、1人旅にはまるきっかけだったのかもしれません」
南靖の現地ガイドに「女の子が1人で旅をするなんて、信じられない!」と驚かれながら、その日廻れるだけの土楼を廻った。延々と続くバナナ畑や竹藪など、南国の田園風景を見ることができたこと、そして何よりも人々が生活する実物の土楼を見ることができた喜びは、今でも忘れることができない。
旅をするときは、ガイドブックに載っているようなポピュラーな場所だけでなく、現地で地図を買ってその場で行きたいところを決めることが多い。自由に行き先を変えられ、気の向くままに足を運ぶことができるのが1人旅のいいところだ。1人でいると日本語を使うことがないから、たいてい日本人とは思われない。「どこまで『中国人』で通すことができるか、それを楽しんでいます」
「知らないことを知りたい。見たことがないものを見たい」。旅が好きな理由は、これに尽きる。中国の魅力は文化・歴史のバックグラウンドの大きさ。知っても知っても知り尽くすことができないのが中国だ。自分の中国語のレベルが上がるにつれ、より深い中国を知ることができるようになってきている。
昨年夏のアジアカップや今年4月の反日デモのときは、中国にいて大丈夫なのかと日本の親戚や友人に心配された。「私がどれだけ多くの中国人に支えられて北京で生活し、仕事をしているか。そういったことがもっともっと日本に伝わったら……」(文=賈秋雅・原絢子 写真=原絢子)(2005年08月号より)
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