干支にみる中国文化       文・魯忠民
戌狗
忠誠を尽くす人々の友
 
 

 戌(いぬ)時は、夜7時から9時である。犬は夜になると家を守り、番をするという警戒心がもっとも強まる。この時、犬は特殊な視力と聴力を発揮して、もっとも遠くまで見たり、ハッキリ聞いたりすることができるという。そのため戌時に犬が配された。

 人々の犬に対する印象は、忠誠を尽くし、感情を重んじ、すばしこく、人の気持ちをよく理解するというものだ。「忠誠心に燃える」と形容され、「子は醜い母をいとわず、狗は主の貧しさをいとわず」とも言われる。また、真心と誠意で恩情に報い、「犬馬の労を尽くす」と形容される。追いつめられて道なき道を走り、「狗急跳牆」(せっぱつまった犬、塀を跳び越える=窮鼠猫をかむ)とも喩えられる。

 その一方で、犬はよく人々の発散と罵りの「代役」となる。たとえば「狗屁」(でたらめ)、「走狗」(悪人の手先となって悪事を働く者)、「狼心狗肺」(人でなし)などなど。

 しかしとどのつまり、犬は人々のもっとも親しい友だちである。農業社会の時代においては、「五穀豊登、六畜興旺」の平和な世界が望まれていた。犬はすなわち六畜(ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ブタ)の一つである。民間には「狗来富」(犬の来る家は家業が栄える)という言い方があり、犬を富裕と平和のシンボルに用いている。

 そのため民間剪紙(切り紙)では、12支の戌も不可欠なテーマなのだ。昔、民間の迷信では、「干支にも相性の良し悪しがある」と言った。たとえば「鶏狗断頭婚」と言うが、それはいわゆる酉年と戌年の人の縁組はよろしくない、という考え方だ。

 

 
 
 
 
 
 
 
   
 
 
 
 

 

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