|
大学生フォーラムで弁論する学生(写真・黄秀芳) |
今年5月18日、北京市西部にある北京外国語大学・日本語学部の校舎は、たいへんなにぎわいだった。「第七回日本文化芸術祭」が開かれていたからだ。
同大は、国内でも最多の外国語学部をもつ大学である。この芸術祭は日本語学部の学生会により計画され、組織されている。1994年の第1回開催から、同大の伝統的なビッグイベントになっているのである。
芸術祭では、「裏千家茶会」や「日本料理試食会」「日本アニメーション映画展」などさまざまな活動が行われた。例年と違うのは、中日国交正常化30周年の今年は、両国の青年が理解と交流を深めるための「大学生フォーラム」が開かれたことである。北京大学や清華大学、北京語言文化大学など七大学の日本語学部の学生たちが、「中日両国関係の現状と未来への発展」というテーマでそれぞれ弁論を行った。
会場となった構内の国際交流学院の階段教室は、大勢の学生たちで満席となった。若い弁士たちは、政治や経済などの問題、文化交流、人的交流から見た中日関係など、それぞれの考え方を明確に打ち出した。
|
「裏千家茶会」で茶道を学ぶ人 |
北京第二外国語学院の林晨さんは、「中国と日本は文字が似ていて、髪の毛や皮膚の色も同じ、礼儀作法の文化も似通っているので、西洋人と比べれば『親戚』だと言える。文化交流と共同の利益のために両国は結びつく必要がある」と両国の協力強化を訴えた。
また、北京大学の王善涛さんは、こう述べた。「中日関係発展の過程で生まれる摩擦の根源には、主に二つの問題がある。つまり中国を侵略したという歴史認識の問題と、台湾問題である」。中日両国は誠意を持って互いを理解し、譲り合い、小異を残して大同についてこそ、今後の友好協力関係が発展するだろう――と王さんは強調した。
厳粛だったフォーラムに比べると、「日本料理試食会」や「裏千家茶会」「日本流行歌会」などの活動はリラックスした雰囲気にあふれていた。
|
キャンパスで見かけた「日本文化芸術祭」のポスター |
午前11時ごろ、学生食堂に設けられた「日本料理試食会」窓口の前は、すでに長蛇の列だった。窓口の奥で、和服姿のある男性料理人が忙しそうに働いていた。特別メニューの寿司は一皿(8個入り)8元(1元は約15円)で、スーパーで売られる寿司と比べれば破格の安価である。北方交通大学の学生・林さんは試しに一皿買ってみたが、意外なことに、少しのハムを具にした海苔巻きであることがわかった。「これが日本の寿司ですか? 中国のご飯とほとんど同じようですね」と林さんはおもしろがっていた。
「裏千家茶会」は日本語学部の茶室で行われた。学部では、日本文化を理解するために裏千家茶道クラブが作られている。茶会は、大学三年生のメンバーたちの実践授業でもあった。そのメンバーたちがお茶を点ててくれた。彼女たちは日本の茶道文化を紹介するために、みな和服を着ていた。茶室は和式建築で、八畳ほどの広さであった。学生だけでなく、子ども連れの母親や白髪のお年寄りなど、さまざまな人が訪れていた。
茶会は午後1時30分から5時まで開かれ、その間、客が続々とつめかけてきた。日本人のように畳の上に座り、茶道の解説を真剣な面持ちで聞いていた。明らかに好奇心はあるのだが、正座には慣れていない。「足をくずしてください」と声がかかった時、みなホッとした様子で、しびれた足を揉みながら「大変だわね」とささやきあった。
芸術祭の盛り上がりが最高潮に達したのが、午後1時30分から大学講堂で行われた「日本流行歌会」である。日本の流行歌やトレンディードラマなどを楽しもうとする催しで、千席ほどある講堂はたちまち満席になった。中国には現在、たくさんの「哈日族」がいる。日本の歌手やアイドルの話、アニメキャラクターに非常に詳しい若者たちのことだ。音楽会は、日本の歌手を素人が模倣するだけの演出だったが、かなりの人気を集めていた。
|
美しい日本の風景写真が紹介された |
香港映画『パラパラ桜の花』の公開で一躍有名になった日本生まれのダンス・パラパラで開幕し、会場はたちまちこの楽しげな雰囲気に包みこまれた。ある女子学生は言った。「『桜の花』の公開後、パラパラを教える特別クラスが次々と開かれました。私の宿舎にも学んだ友だちがいますよ」。学生たちは歌ったり、踊ったりして、さらには日本の人気ドラマ『ラブジェネレーション』を演じる一幕も。主演の木村拓哉と松たか子をまねた二人の学生俳優には、会場から盛んな拍手が送られた。
芸術祭の開催は一日だけだったが、キャンパスの中は日本的な雰囲気が漂っていた。日本語学部の学生会主席・陳偉斯さんは「芸術祭は毎年、学生会にとっても重要な仕事です。学生会では昨年11月から、今回の準備にいそしんできました。企画立案から後援者への依頼、そして最後の開催まで、とても大変でしたが鍛えられました。芸術祭を通してわが校の学生が日本文化に対する理解を深めたとともに、他大学にもいい影響を与えたようです」とその成果を喜んでいた。
「春に一粒の種をまけば、秋に万の実を収穫する」。北京外国語大学日本語学部の教師と学生は、「日本文化芸術祭」が春にまいた種のように、中日両国の青年たちの期待を集めて、友情の実りとして育つことを願っているのである。(2002年9月号より)
|