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花屋の王海木さんはちょうど仕事中だった |
北京市には現在、数え切れないほどの花屋がある。露店の花屋もあれば、大・中型の花市場も8、9カ所ある。近年、人々の生活において花はますます人気を集めており、北京では生花マーケットが徐々に形作られている。
市の西北部に位置する航天橋の近くに、「航天橋花市場」がある。面積は数万平方メートル。名前の「橋」にちなんで、アーチ型の屋根を持つ広さ4、5千平方メートルの大温室が、ここのメーン会場だ。売り場一つひとつが狭い通路で区分けされており、温室へ入ると、ムンとする生花の香りが漂う。各種の生花は色とりどりに並べられ、目もくらむほどだ。ほかに花の種や肥料、専用の農薬、鉢なども販売されている。花を求める人、愛でる人、商売をする人などで、熱気にあふれた光景である。
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バレンタインデーを過ごすため、楊さんはガールフレンドにバラの花をプレゼントした |
市場を訪れていた楊さん(映画業界勤務)と彼のガールフレンドは、ある売り場の前で足を止めた。「うちの花は品種が多くて美しく、値段も安いですよ」と、親切に説明する店員に上等のバラをすすめられたからだ。
「これはオランダから輸入したばかりの『青い淑女』です。今年、一番人気の品種ですよ。ガールフレンドにいかがですか?」
「1本いくら?」
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日本で華道を学び免状を手にした劉勃さんが、髪のセットにはやりのフラワーアレンジメントを施す |
「90元(1元は約15円)です。たくさん買うなら負けますよ」
バラの花は愛情のシンボルだ。そのため、2月14日のバレンタインデーには、とくに値段が跳ね上がる。
店員の王海木さんは、こう教えてくれた。「贈るバラの本数によっても、意味がそれぞれ違います。1本は『唯一』、2本は『二人だけ』、6本は『順調』、8本は『発(金持ちになる意味の発と8が同音)だから、金持ちになる』、9本は『(久と9が同音だから)永遠に続く』……」
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南京市に住む今年80歳の薛さんは、「母の日」にちなんで息子から花束をプレゼントされた |
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海南省瓊山市で行われた伝統的な祭り「換花節」 |
それを聞いたとたん二人は笑い出した。結局、楊さんは「愛が永遠に続くように」という願いを込めて九本のバラを買い、ガールフレンドにうやうやしく手渡した。彼女はニッコリ、幸せそうに微笑んだ。
現在、楊さんのように気軽に花を求める人たちが急増している。街では至るところで生花を目にするし、それは環境美化の目的以外にも、プレゼントとして活用されている。花は、愛と友情を表す贈り物であるとともに、哀悼の念を表す供え物でもある。昔の中国の習慣では親戚や友人を訪ねる際に、タバコや酒、菓子、健康(栄養補助)食品などを土産にしたが、今では「古くさい」と考えられるため、そうした習慣は少なくなってきた。それに代わって登場したのが、花である。花を贈る習慣は、今や地位と教養の高さを示すシンボルとなっている。しかも若者たちにとくに重宝がられている。
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花屋は結婚式のためにウェディングカーを飾る |
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病院では患者の回復を願って、たくさんの生花を飾る |
中国の南方なまりのある王海木さんの話によると、お得意さんの多くは企業で、製品キャンぺーンや展覧会、除幕式、イベントなどを行う際に、上等な品種がたくさん使われる。一般家庭や個人の消費は次点だが、それも増加傾向にあるという。
温室入り口の右わきでは、ある中年の女性がフラワーアレンジメントの実演中だった。赤いチューリップ6本とカスミソウ12本をピラミッド形の花かごに挿しながら、集まった人々に説明をしていた。彼女は、フラワーアレンジメントクラスに参加したばかりで、そのクラスの先生は日本留学を終えて帰国した大学生だそうだ。現在、北京にはこうしたクラスが増えており、花に関する書物や新聞、雑誌も続々と出版されている。
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花市場で花を愛でたり、求めたり…… |
フラワーアレンジメントというと、多くの人たちが日本を思い浮かべる。インターネットの情報によれば、日本の生花生産とその消費量は世界のトップクラスにあり、フラワーアレンジメントの技術でも世界に名を馳せている。日本はまた花器の輸出国で、近年中国はその主な取り引き先となっている――。
日本や欧米諸国に比べれば、中国の生花産業はまだスタートしたばかりだが、その市場には大きな発展が見込まれている。中国経済が発展するにつれ、人々の生活レベルが向上し、それとともに生花産業も活況を呈するだろうと考えられている。13億の人口を擁する市場は、はかりしれない潜在力を持っているのである。(2002年10月号より)
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