筆者（左）と�ｹ林さん

　列に並んで記念切手を手にした時、突然涙が出た。とてもうれしかった。現代中国絵画が切手に採用され、発行されたのは、日中の歴史上初めてのことである。

　一般には、中国文明というと古い美術品をイメージする人が多い。しかし私は、現代のすばらしい美術品を思い浮かべる。その気持ちから、記念切手発行に当たり、「現代中国絵画を採用してほしい」と、片山虎之助総務大臣に進言した。そして特に、今回採用された絵画の一つである中国女流画家�ｹ林さんの作品『紫藤花』を推薦した。この作品には、お互いが助け合い、大きな豊かな花を咲かせようという心が込められている。

記念切手発行祝賀会にて。右より筆者、片山虎之助 総務大臣、武大偉 駐日本中国大使、筆者夫人

　この作品の特色は、古代から引き継がれた伝統技法、写意を発展させているところにある。対象をそのまま描くことではなく、対象の持つ生き生きとした精神的なものを取り出し、その核心を鋭く表現した。その意味から、日中のこれからの実りある明るい関係を暗示している。

　記念切手は、9月13日の発売と同時に、大変な注目を集めた。私の住む広島県福山市は、発売の翌日にはすべて売り切れになるほどの反響だった。広島県のすべての郵便局で、数日のうちに売り切れたと聞いている。

　10月12日より、中川美術館で開催された「第三回�ｹ林絵画名作展」（主催：人民中国雑誌社、中川美術館）の開幕式には、片山総務大臣夫妻も出席され、�ｹさんに記念切手の感謝状を渡された。�ｹさんは返礼に、自ら署名捺印した「紫藤花のエスタンプ」を贈呈した。拍手の嵐であった。

日中国交正常化30周年記念切手の一枚『紫藤花』（絵・�ｹ林）

　また�ｹさんは、名作展上にて、記念切手を貼った『�ｹ林絵画名作集』にサインを求める来館者の要望に応え、終日、汗だくでサインをしていた。「手がしびれてしまった」と感慨深そうに話された。日中友好の大きなかけ橋となった。

　片山総務大臣、�ｹさん、人民中国雑誌社の沈文玉社長、王衆一編集長、それに私は、中川美術館での名作展記念茶会で抹茶をいただいた後、縦2・1メートル、横1・5メートルの日本最大の中国「端渓硯」で墨を練り、大筆を使い、記念揮毫を行った。会場からは、日中友好万歳という大きな声が上がった。（2002年12月号より）