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テレビドラマ『金婚』 ある中国人家庭の50年

 

多くの地方局で続々と放映されている『金婚』というテレビドラマが、話題を集めている。編年体で描かれたこのドラマは、1956年に結婚した主人公のトウ志と文麗という夫婦の、2006年の金婚までの50年間の物語である。1年をドラマ一回分とし、全50回で構成されているが、庶民の生活を描くことで時代の変化を映してきた従来のドラマとは趣を異にする。

 

『金婚』では、主人公とその家庭は3年間の経済困難期(1959~1961年)、「文化大革命」(1966~1976年)、改革開放(1978年)以降など、中国のそれぞれの時期の重大な歴史的事件を経験しながらも、家庭における些細な出来事を中心とした内容に始終している。ドラマにおける時代の色彩はあっさりしたもので、夫婦関係、親子関係、嫁姑関係、近所づきあいなどを描くことに力が入っている。つまり、これまでの「小さな事から大きな事を見る」ではなく、単純に「小さな事から小さな事を見る」に留まっているのである。ゴールデンタイムに放送したテレビドラマとしては、新しい試みであるといえる。

 

中国ではテレビのゴールデンタイムといえば20時から22時までであり、家族そろってテレビを見る時間帯となっている。そのため、この時間帯のテレビドラマは、題材、表現手法、道徳観などにおいて比較的保守的なものであった。しかし、『金婚』は多くの伝統的観念における敏感な話題、特に「性」に関する問題に触れたことが斬新であり、その点にも人々は注目した。

 

これまで中国人は、「性」について語るのを比較的避けてきた。そのため夫婦間の「性」を丁寧に描いた『金婚』は、放送前から話題を呼んだ。実際には、ドラマでは「性」に関する描写はだいたいのことを暗示するにすぎず、重点は夫婦関係における「性」の影響を話し合うことにあり、露骨なシーンがあるわけではない。そのせいか放送後にこれといって論争を招くこともなく、広く受け入れられた。

 

例えば、妻の文麗は結婚前「性」について無知であったため、結婚後、夫から性的要求をされるとひどく怖がって実家に逃げ帰り、結婚したくないと言い出す。さらに、きれい好きな妻は夫に、夫婦生活の前に必ず手を洗うこと、きれいに洗った手はドアにも触れてはならないことなどを厳しく要求する。夫はそのことに耐えられずすっかり興ざめしてしまい、夫婦間に摩擦が生じる。二人は注意深く子供を避けて、こうした問題を話し合う。

 

このようなディテールに共鳴したのは、中高年の視聴者であった。これまでのドラマにはあまり見られなかったことである。このドラマの鄭暁竜監督は「家庭生活を語れば必ず『性』に触れなくてはならない。これまでのドラマがあまり触れてこなかったのは、どう語ればいいのかわからなかったからだろう」と話す。

 

このほか『金婚』では、不倫や女性の更年期も比較的描かれている。夫のトウ志は長期で単身赴任した地方で、同僚の李天驕との間に愛が芽生える。北京に戻ってからも、トウ志は李への未練を捨てきれない。一方、妻の文麗はちょうど更年期にさしかかる。情緒不安定になり、不眠に悩み、余計な心配ばかりしては、理由もなく周囲の人々に対してかんしゃくを起こしてばかりいる。

 

ドラマの制作者は、性の問題を話し合うことにも、不倫や更年期の描写にも、寛容に大目に見るという態度を取っている。制作者が注目しているのは、人間の社会における属性ではなく、自然における属性なのである。ドラマに描かれた人間のさまざまな欲望や自然な欲求、人間のさまざまな生理的な反応、人生の異なる段階における微妙な心理は、いずれも時代とは関係なしに人間の感情や理性そのものに関わるものであるということなのだろう。(高原=文)

 

人民中国インターネット版

 

 

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