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大学は出たけれども

 

陝西省西安市の西北工業大学で開催された大学院生のための就職説明会には、同大学の院生をはじめ周辺の大学から1万人近くの院生が集まり、職を求めた

 中国社会科学院が発表した『社会白書』によると、2007年、大学卒業者500万人近くのうち、就職しなかった人は120万人にのぼった。

 

李蘭さん(50歳)の現在の最大の悩みは、息子の就職だ。数年前、息子はさんざん苦労して大学に入った。しかも法学部という比較的よい学部に入学したので安心した。

 

しかし今、卒業を間近に控えた息子を見て、李さんは悟った。以前は就職するときに有利とされていた法学部でも、いまは大学名や仕事の経験の有無を重視され、息子は少しも優位ではないということを。

 

李さんは息子といっしょに何度も大学生向けの就職説明会に参加したが、目の間に広がるのは人、人、人の波。そこで息子は就職するのをあきらめ、大学院に進学することに決めた。「あと何年か勉強して修士号をとれば、仕事を探すのも楽になるでしょう」と李さんは話す。しかしいまは、大学院生の就職も学部生と同じくらい難しい。

 

李さんのような世代の人は、若い人が大学を卒業しても仕事が見つからないという現状に戸惑っている。

 

「古い友人に会って子どもの就職の話題になると、『仕事は分配(割り当てる)されましたか?』とよく聞かれます。本当はみんな、『分配』というシステムはもうなくなったことを知っているのですが」

 

仕事が「分配」されていた時代から自分で「探す」時代になって、まだ10年も経たない。

 

80年代~90年代 「分配」の時代

 

「村官」となった山東省聊城大学の卒業生たち。自分の特技や学んだ専門知識を生かして、農村支援活動を行っている

 1980年代、90年代は、大学卒業者の就職は基本的に学校が「分配」していた。そのため、就職できないということはなく、学生たちが心配していたのは、「分配」された仕事が自分の希望にあっているかどうかということだった。

 

成績のよい学生は中央機関などの待遇のよい職場に入ることができたが、成績があまりよくない学生は、Uターン就職することが多かった。その世代の人たちは、いまの大学生たちが自由に仕事を探すことができるのをうらやましく思っている。彼らは、「分配」の束縛から逃れたいといろいろと知恵をしぼったのだ。

 

広東省仏山市の某企業に勤める石さんは、当時の経験を「不遇」という言葉でかたる。

 

85年に師範大学を卒業したあと、故郷の湖北省の小さな町で教師になるしか道はなかった。せっかく自らの飛躍を求めて故郷を出てきたのに、と考えた石さんは、大学院を受けることに決めた。

 

一年後、希望どおり大学院に受かった。しかし運命というのは皮肉なもので、大学院の修了後、また、湖北省の学校に「分配」された。

 

このとき、新たな問題にもぶち当たった。付き合っていた恋人が、故郷の広東省に戻って就職することになったのだ。

 

当時、大学生のカップルは、卒業すると別れるケースが多かった。大部分が自分の故郷に戻って就職しなければならなかったため、遠距離恋愛に耐えられない場合、別れるしかなかったのだ。

 

しかし石さんは幸運なことに、湖北省で2年間働いたあと、さまざまな手を尽くして、彼女のいる広東省に移動することができた。その後、彼女といっしょに仏山市に行ってさらなる発展を求めたいと思ったが、勤務地を移すのは大変なことで、静かにチャンスを待った。そして2001年、とうとう仏山市に移り住んだ。

 

石さんは16年という長い年月をかけて、ようやく自分の好きな場所で仕事をすることができるようになったのだ。「もう中年になってしまいました。いま自分が持っているものを大切にしたい」と語る。

 

90年代~現在 「探す」時代

 

就職説明会に参加して企業に質問する学生(新華社)

 1992年、一部の大学では、大学生に自ら就職口を探させる試みを始めた。そして6年後、大半の大学生が自分の力で仕事を探すようになった。しかしほとんどの学生は、自分で仕事を選ぶという喜びを味わっていない。すぐに、大学が学生の募集を拡大し、大学卒業者が増えるという大きなショックに見舞われたのである。

 

学校が仕事を「分配」していたときは、学生たちは学生の募集が拡大されようがされまいが気にしなかった。誰かが仕事を割りふってくれるため、就職できないということはなかったからだ。

 

しかし今は、学生の募集を拡大すればするほど、就職活動も熾烈なものになる。職業選択の自由を与えられた学生たちは、就職難という新しい問題にも直面せざるをえなくなっている。

 

2001年に115万だった大学卒業者の数は、08年には559万人にのぼる。中国の経済成長率は07年には10.1%に達し、高い数字を維持しているというものの、大学卒業者の増加スピードにはかなわない。このため、大学生の就職市場は、短い期間で深刻な供給過剰となった。

 

もちろん、この供給過剰という状況は全体的なもので、個人の状況はそれぞれ異なる。一般的には、「東部の有名大学の人気のある専攻」の学生は就職が有利で、選択の幅も広い。一方、「西部の普通の大学の人気のない専攻」の学生は厳しい現状におかれている。

 

また、女子学生の就職が決まるのは男子学生より遅く、同じ条件だと、男子学生のほうが有利だ。

 

就職難の現状を打開するため、学生たちも自分の理想を下げざるをえない。大多数の学生は、「まずはとにかく就職し、自分をブラッシュアップさせてよりよいチャンスを手に入れよう」と考え、給与や職務上の地位が希望とかけ離れていても気にせずに就職する。また、大都市では競争が激しいのをみて、あまり人の行きたがらない農村へ行って「村官」(村の幹部補佐)になることを選ぶ学生もいる。

 

大学生の増加による熾烈な就職戦線。すべての学生が積極的に新しい試練に向うことを求められている。

 

 

人民中国インターネット版 2008年5月18日

 

 

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