楊偉国氏中国人民大学労働人事学院博士中国就職研究所、大学生就職問題研究所副所長
――2007年の大学卒業者のうち、120万人が就職できませんでした。これについてどう考えますか。
楊偉国氏(以下は楊と略す) これは、「三方合意」(学生、学校、雇用者の三方が結ぶ就職合意で、これにより正式に就職したことを確認する)を結んでいない卒業者が120万人いたという意味で、なかには大学院への進学準備をしている人もいますし、非正規の就職者もいます。非正規の就職者の仕事は安定したものではありませんが、就職していないとはいえません。そこで、「三方合意」だけを見て、どのくらいの学生が就職できなかったと判断するのは難しい。
――大学が学生の募集を拡大したことは、大学生の就職難に関係していると思いますか。
楊 学生の募集拡大によって、2003年の大学卒業者は前年より46%増えました。04年は32%増、05年は20%増です。中国の経済成長率は10%前後ですから、企業の求人数が毎年20%以上も増加するわけはありません。そこで、03年から08年までの就職難は、学生の募集拡大と直接的な関係があります。
しかしこれは短期的なものだと思います。長い目でみると、この二つはまったく別のことで、因果関係はありません。
もし学生の募集を拡大しなければ、大学に進学できなかった若者は、いい仕事を探すチャンスに恵まれません。中国の高等学校教育は受験を重視し、技能面は育成しませんから、高校を卒業しても、建築現場でアルバイトするほかありません。でも大学教育を受ければ、比較的よい就職のチャンスに恵まれ、教養を磨くこともできます。このため、学生の募集拡大は、経済発展の基礎であり、歓迎すべきことだと思います。
――地域間のアンバランスをどのように解決しますか。
楊 大学生を西部の発展していない土地で就職させようとしても、給料が低いため難しい。もし行かせるのなら、補助金を出したり、大学院入試の点数をプラスしたりと、優遇措置をとるべきです。
国を発展させるには、大学卒業者が西部に行く必要があります。しかし、市場のメカニズムだけに頼っていては、誰も行きません。国が責任を持って、さまざまな優遇措置を講じて、学生たちを引き付けなければいけないのです。
――政府は現在、西部へ行く学生に対して優遇措置をとっていますが、これは毎年違い、しかも地方によって異なります。
楊 確かにそうです。大学生に西部支援を呼びかけるプロジェクトは、政治的な意味合いが強く、優遇条件についても基準がはっきりしません。たとえば、北京で働く場合と、内陸部の山西省へ行って働く場合では、その収入差は簡単に計算できます。しかし、提供する優遇条件についてはあいまいで、計算することができないのです。
――最近注目を浴びている「大学生村官」についてはどう思いますか。
楊 私の勤めている大学にも「村官」になる学生がいます。都市部で仕事を探すのは簡単ではないのでしょう。農村で数年働いて戻ってくると、注目度がアップする可能性があります。自ら進んで貧しい地区で働いたことを、多くの企業が重視するからです。また、彼ら自身も農村で働くことで、自らの能力を高め、将来の発展につなげることができます。
就職問題の解決という点からすると、この計画はとてもいいのですが、コストがかなりかかります。しかし長い目で見れば、これは中国の新農村建設に積極的な役割を果たすことでしょう。また、ずっと大都市の「象牙の塔」のなかで勉強してきた学生が、中国の農村問題を理解するよい機会だと思います。
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