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2009年の「両会」の注目議題

第11期全国人民代表大会第2回会議開幕式会場

2009年3月3日から13日まで、第11期全国人民代表大会(全人代)第2回会議と第11期全国政治協商会議(全国政協)第2回会議が、北京で開かれた。世界的な金融危機を背景とした「両会」(全人代と全国政協)では、これからの経済というテーマをめぐって、就職、住宅、消費券、被災地の再建などについて検討が行われた。

積極的財政政策で内需拡大

今年の「両会」に提出された『政府活動報告』の中で、2009年の中央財政赤字は前年比5700億元増の7500億元とし、同時に国務院が地方に2000億元の債券発行を認めたことで、全国の財政赤字の合計は9500億元になる、と指摘した。この赤字規模は新中国成立以来60年間の最高記録を創り、史上最高の財政赤字だった2003年のほぼ3倍となった。

これについて温家宝総理は、9500億元は中国の国内総生産(GDP)の3%以内であるとし、09年の赤字の増加はわりに多いが、その前の数年間は赤字が連続して減っていたため債券発行のスペースが大きいので、中国の総合的国力が耐えられる範囲内で、全体的に言えばいずれも安全なものだと述べた。 

全人代の代表で、東北財経大学の艾洪徳学長はさらに「中国は財政赤字の拡大という面でまだかなりのスペースがあり、わりに大きな融通の余地がある」という判断を示した。

主に積極的な財政政策の実施と国債の大量発行からなる財政赤字の拡大は、中国が世界金融危機に応じる重要な措置で、内需を拡大するもっとも直接的で、もっとも有効な措置である。

積極的に質問する女性記者たち

政府の積極的な財政政策の一部として、昨年末に四兆元の投資計画を発表した。今年の「両会」期間の情報によると、四兆元の投資計画は投入先への配分に多少の変化がある。社会保障的な「安居プロジェクト」に使う金額は2800億元から4000億元ほどに増え、衛生、文化・教育など社会事業への投入は400億元から1500億元に大幅に膨らみ、インフラ建設に用いる費用は1兆8000億元から1兆5000億元に減った。これは政府が民生に関するプロジェクトを大いに重視し、初期のインフラ建設に依拠して経済を動かす方式から、次第に経済を安定させ、就職を保障し、消費を促すというように方向を転換したことを意味する。

積極的な財政政策を実施し、赤字を拡大するのは、2009年の8%前後の経済成長率を達成するためである。中国の『政府活動報告』では5年連続、経済成長目標を約8%に設定している。ただし今年の国際金融危機はまだ底が見えず、世界の主だった権威機構の全世界の経済成長予測はおしなべて悲観、主要な経済体についても甚だしきはマイナス成長さえ出かねないと見られている。このような背景の下で、今年の8%前後の目標は明らかに特別な意義がある。

2008年の第4四半期の中国の経済成長率は6.8%に下がったが、国内の広大な内需市場と力強いマクロな調整・制御措置をよりどころに、大会の代表や委員はやはり中国経済の前途に自信を持っている。

全国政協委員で財政部(省)科学研究所の賈康所長は、上手く処理できれば中国の今年の経済成長率は前期が低く後期が高くなるが、国際経済情勢の一層の悪化を防ぐ事前の対策をとっておく必要もある、と考えている。

企業にとっては挑戦とチャンス

周辺地区に1万を超える就職口を提供した内蒙古塞飛亜集団(新華社)

金融危機の影響で中国の対外貿易の情勢は非常に厳しい。沿海地区の外国市場向け企業は大きな打撃を被った。統計によると、昨年末までに、廃業や操業停止、破産した全国の中小企業は約7.5%を占めるという。これについて温家宝総理は『政府活動報告』の中で、優位の企業による立ち遅れた企業、困難な企業の合併と再編を進め、それによってそれらの企業を残し、失業者を減らし、社会の安定を守ることができる、と特に強調した。

工業・情報化部の李毅中部長は、中小企業を苦境から抜け出させるため、国が200億元の専用の技術改造資金を設立、企業に新技術や新工程で新製品を作るよう奨励し、中小企業の担保機構を迅速に設立する、と語った。中央財政はすでに330の担保機構に10億元を支給し、4万軒の中小企業に2500億元の貸付金を提供することができる。

金融危機は企業発展のチャンスだと見なすことができる。

全人代の代表でハルビン泰富公司の楊天夫会長は、「金融危機の発生後、大量の国外の人材が暇をもてあましている。最近、上海で研究開発センターを成立したところ、わずか二カ月で外国で十数年も仕事をしてきた多くの中国系技術者が応募して来た。つまり、経済危機は革新型企業にとっては、人材を取り込む絶好のチャンスであり、独自の研究開発システムを設立する得難い好機である」と述べた。

農民工も学生も 就職難に直面

2009年、第1回ハルビン農民工求職大集会がハルビン市人材資源市場で開かれた。200余りの求人企業が1万余りの就職口を提供し、大量の求職者が詰め掛けた(新華社)

経済成長のスピードダウンや企業経営の苦境が、就職戦線を直撃した。主に工業企業、中でも労働集約型企業や輸出加工型企業への影響がもっとも厳しい。これらの企業は、農民工が主力であるため、彼らの就職への衝撃がもっとも大きい。

人力資源・社会保障部の尹蔚民部長によると、昨年年末時点で、全国の農民工の総数は2億2500万人、そのうち出稼ぎ農民工は1億4000万人という。今年の春節(旧正月)後、大多数の農民工は都市に戻ったが、まだ1100万人が未就職。

厳しい就職情勢を踏まえて、政府は一連の政策措置を打ち出し、ある程度の効果を収めた。尹部長によると、今年一月と二月、都市部における労働力の人数は増加に転じた。わずか1%の増加であるが、喜ぶべきニュースである。

「両会」に参加した経営者たちはリストラや給料削減をできる限り避けると表明した。「リストラはしないが、少し休みをとってもらう。休みの間に、社員の生活を配慮する。工場でも、社員でも、みんな一つの運命共同体だ」と、全人代代表で、浙江富潤控股集団有限公司の代表取締役・趙林中さんは言う。

この他、大学生の就職問題も無視するわけにはいかない。山東大学の徐顕明学長は、今はまだ、大学生の就職率の低下はそれほど目立たないが、企業側の募集情報は20%くらい減少していると言っている。

国務院は大学生の就職を促進するため、西部での就職、自己起業などの奨励、大学の研究機関が卒業生を研究アシスタントとして受け入れ、研究経費から報酬を与えることを認めるなど、すでに8つの措置を取った。

地震後の再建プロジェクト 三分の一が着工

中鉄二局集団有限公司の労働者たちは成都—都江堰鉄道客運専用線の施工現場で働いている。これは「5・12」大地震後、鉄道部と四川省が締結した初の震災後大型再建プロジェクト(新華社)

四川汶川大地震発生から300日以上が経った。社会各界は現地の再建工事の進展状況に強い関心を寄せている。これに応えて、北京で「両会」に参加した四川省の蒋巨峰省長と魏宏常務副省長は相次いで記者会見を行い、関連する現況を紹介した。

それによると被災した工業企業の九七%はすでに生産を再開した。今年二月末現在、目標の31%を占める計1万124の復旧再建重要プロジェクトの工事が始まった。今年の年末までに、被災後再建すべき重要任務の72%を完成させるという。

蒋省長によると、災害後の再建プロジェクトには全体で約1兆7000億元の資金が必要であるが、まだはるかに足りない。これから、地方債の形で内需を拡大すると考えているが、具体的な金額は未確定だという。

四川省は労働力をもっとも多く輸出している省である。昨年5月の地震で百万人以上が失業した上、国際金融危機の影響で300万人以上の農民工が里帰りを余儀なくされた。そのため、四川省は被災地再建を行う中で「救済の代わりに仕事を与える」という政策を打ち出し、里帰りした農民工が直接再建工事に参加できるようにした。これによって再建コストを押さえると同時に、里帰りの農民工の70%に仕事を与え、一部がふるさとで農作業に従事、また一部の人は出稼ぎのチャンスを待っている。

賛否両論の中 消費券で内需を拡大

2月16日、南京市は2000万元の「南京村落旅行消費券」の籤を発行、20万戸の家庭が消費券を獲得した(新華社)

最近、中国の多くの省、市が相次いで各種の消費券(商品券にあたる)を発行し、市民の消費を刺激して内需の拡大を図っている。これが「両会」代表や委員たちの間で話題となった。

2008年末、成都市が全国に先駆けて都市部と農村部の最低生活保障対象(低所得者など)や重点特別優遇対象(烈士の家族など)に一人当たり百元の消費券を配布した。この消費券は、市場の一般商品を買うことができる。

続いて、杭州も困窮家庭や定年退職者、障害者、小中学生に向けた消費券を支給した。

その後、消費券の発行は全国各地でブームになった。中でも、観光消費券がもっとも多い。ほかにも、電器消費券や住宅購入消費券、航空消費券などが誕生している。

消費券の役割について、代表や委員たちは考え方がそれぞれ違う。国際金融危機の底が見えない中、市民消費を拡大する急務は、即時の消費、つまり人々に今すぐ買わせることである。したがって消費券の支給は有益である。全人代代表、杭州市の蔡斉市長によると、杭州市での消費券の使用効果は大変よく、貧困家庭での消費拡大効果は1~5倍。杭州は今年さらに6億元の消費券を発行する予定という。

しかし、一部の人は根本から内需を拡大するには、社会保障システムをさらに充実させることが必要と考える。全国政協委員である賈康さんは、消費券の支給は一種の短期的な「場当たり」の手段に過ぎない。しかも、もっとも消費券が必要なのは低収入層であるため、対象に確実に配布するには、技術や管理面でコストが非常に高い。むしろ社会保障システムを充実させた方が長期的で、持続可能な方法だと考えている。(高原=文 魯忠民=写真)

 

人民中国インターネット版 2009年3月30日

 

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