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「流動児童」の学校はいま

 

社会には賛否両論の声

 

2000年に実施された第5回全国国勢調査によると、中国の0歳から14歳までの「流動児童」は1410万人に達していた。その後8年、膨大な数の児童たちが、出稼ぎ労働者の増加とともに絶えず増加してきた。

しかし、子どもたちは学籍と戸籍の二重の制約を受けており、都市部の学校には限りがあって、家庭は常に移動しており、経済的にも苦しい。こうしたことが影響して、子どもたちは常に教育を受ける機会を失う苦境に直面している。

政府は近年、民生の改善に力を入れ始めた。どのようにして「流動児童」に正常な教育を受けさせるかが、ますます政府と社会の注目する問題となった。

2007年、北京社会科学院流動人口教育・養成訓練センターは、北京市婦人・児童工作委員会といっしょに、長期間、北京で生活している流動人口に対する調査を行った。その結果、77%の「流動児童」が、都市部と郊外の境にあるバラックに住んでいることが分かった。そこは部屋が狭く、冬は寒く夏は暑く、ゴミが山積みとなっている。

また半数以上の子どもたちは、専用の机がなく、椅子や床の上に腹ばいとなって宿題をし、ひどい場合は、家の中では勉強することができない。両親が仕事に打ち込めるよう、大多数の子どもが放課後、料理や家事の手伝いをしなければならない。このため、都市の児童のように各種の課外活動に参加することができない。こうしたことが原因で、「流動児童」の多くは劣等感を持ち、現在の疎外された生活に不満を持っている。

この調査に基づいて中国社会科学院は昨年の社会青書『2008年中国社会情勢の分析と予測』の中で、「農村で基本的に、義務教育の無料化が実現したいま、都市の『流動児童』の教育が、教育の機会均等の上でもっとも突出した問題となった」と指摘している。

現在、北京で学んでいる40万以上の『流動児童』の中で、25万は公立学校で学んでいるが、その他の10余万の子どもは、200ヵ所以上の、同心実験学校のような学校に分散している。

農民工の子女の自弁の学校について、社会には2つの異なる意見がある。

1つは、こうした学校の多くは、教育の条件が悪く、安全面でさまざまな潜在的な危険が存在し、しかも多くは政府の認可を受けていない。だからこうした学校を取り締まらなければならない、という意見である。

もう1つは、公立学校がすべての「流動児童」の入学を受け入れ切れない状況の下では、こうした学校は、社会の圧力を分担し、「流動児童」のために教育の機会を提供するという積極的な役割を果たしている。だから政府は大いにこれを助けなければならない、という意見である。

これに対して中央教育科学研究所の蒋国華研究員は「同じ青い空の下で、農民工の子女も義務教育を受ける権利がある。農民工の子女の学校は、実際は政府を助けて、適齢児童の義務教育の問題を解決した。世界の多くの国々ではどこも、政府が私立学校を資金援助する政策をとっている。日本では、法律で、私立学校の教育経費の20%を政府が支出すると規定している。だから、農民工の子女の学校に対し、関係の立法を整備しなければならない」と述べている。

「流動児童」の学校に対する社会的な評価が定まらないとはいえ、その発展は、1つの分かれ道に立ったように見える。しかし、同心実験学校の孫校長の学校運営に対する態度は依然、楽観的であり、また揺ぎないものである。孫校長は言う。

「私たちが学校をつくったモットーは、すべてが子どもたちのためであり、子どもたちがよく学び、立派な人に育つことです。この目的のために、全校の職員と各界から来てくれたボランティアは、個人の損得を考えず、全身全霊で仕事に打ち込んでいます。これはお金のためでもなく、有名になるためでもありません。この点を、子どもたちも父母もよくわかっています。だから私は、こうした自弁の学校が社会的に認められると信じているし、前途はきっと明るいと思っています」

1990年代に教育部は、都市の公立学校は外から来た子どもの就学問題を解決することに力を注がなければならないと提起した。しかし、公立学校の数には限界があり、都市の児童を入学させた後、「流動児童」をすべて受け入れることはできなかった。また、当時の中国の大・中都市は、財政面で経済発展に力を入れるあまり、この問題に配慮が足りなかった。しかし近年、国が民生の改善にますます重きを置くようになり、「流動児童」の問題にも積極的に関心を払い始めた。

2007年10月、北京市政府は、公立学校に入れない十数万の「流動児童」に対し、毎年、8000万元から1億元の資金を支出し、もっぱら彼らの就学問題を解決するとともに、彼らの教育を受ける権利と基本的な生活の安全を保障する措置をとると表明した。

昨年の全人代と全国政協では、ある人民代表が、農民工の子女に義務教育カードを発給し、この子どもたちが住所をあちこち移している間も、無償で教育を受けられるようにしよう、と提案した。温家宝総理は「良い提案だ」と認めた。

政府は、農民工の子女の学校に対し明確な態度を打ち出していないが、これからの「流動児童」の勉強と生活の環境は、少なくともある程度改善される、と予測することができる。(沈暁寧=文・写真)

 

人民中国インターネット版 2009年4月

 

 

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