食卓まで48時間
果物や野菜のような生鮮食料品は、運輸時間が品質と価格を大きく左右する。大陸は、豊作のため生産過多となった台湾地区の果物を、大陸で販売できるような一連の措置を出した。しかし当時は「三通」実施前だったので、水路は日本を、空路は香港、マカオ(澳門)を経由しなければならなかった。運輸コストだけではなく、時間がかかり果物が傷んでしまうことも、果物農家や経営者らの心を悩ませていた。
「三通」実現による、水路空路の直行便の開通は、台湾の農産品に朗報をもたらした。台北農産運銷股份有限公司で秘書を務める焦鈞さんは、海峡両岸の空路の物流について、次のように語る。
「春節前に上海江橋卸売市場に出荷した2500箱のレンブ(ジャワフトモモ)は、農家が夜明け方に摘んだものです。それを、我々の会社の卸売市場の競りにかけ、会社側は買ったものを箱詰めし、その日のうちに台湾の『中華航空』(チャイナエアライン)の飛行機に乗せて大陸に送り、翌日、検疫を通過すれば、大陸の買い手はすぐに貨物を受け入れることができます」。また「航空便だと、台湾で摘み取って48時間以内に、大陸の市場に出すことができます。船便も以前より早くなり、72時間以内で着くでしょう」
焦さんが勤める台北農産運銷股份有限公司は1974年の設立で、台湾地区では最大の卸売市場を持つ。朝二時ごろ、台湾各地から果物や野菜が、会社が運営する二つの卸売市場に集まり、競り売りに入る。競りは朝の7時前に終了する。つらい仕事だが、焦さんは達成感があるという。というのは、競り売りの方法は農民、販売者、消費者の利益につながり、しかも果物や野菜の運輸と販売には大きな前途があるからだ。
焦さんはさらに次のように詳しく説明する。果物は流れ作業による生産ラインの作物ではないので、一度に長期契約を結ぶことができない。ある果物は豊作の年は売れ行きが悪く、ある野菜は農民が高い値段に引き付けられて過剰生産に陥ったりするからだ。台湾地区は市場が小さく、消費も限られている。
大陸の数回にわたる台湾余剰作物の緊急購入は、台湾地区の農民たちの焦眉の急を確実に解決してきた。空路や水路にかかわらず両岸間の直行便は、それを、より効率的なものにするだろう。
台湾の発表したデータによると、2005年まで日本が台湾地区農産物の最大輸出相手であったが、2006年より大陸と香港がそれに取って代わった。
収益が大幅アップ
今年の春節、中国大陸と台湾の直行便の航空券、とくに上海発や深圳発の航空券は、すべて売り切れてしまった。上海発のチケットが手に入らなければ、杭州発の便に乗り換える人も現れ、杭州発の便までも便数を増やし臨時便を飛ばした。
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2008年11月4日午前9時、注目を集めていた「海協会」と「海基会」のトップ会談が台北で始まった。握手を交わす「海協会」の陳雲林会長(左)と「海基会」の江丙坤理事長(右) |
「航空券を手に入れましたか」は、台湾の商人らの挨拶言葉にもなった。直行便の開通は、帰省やビジネス、観光にブームを巻き起こした。しかし、もっとも喜んだのは台湾の航空会社ではないだろうか。
燃料の値上げや不景気、台湾高速鉄道の開通により、台湾地区内を運航する空の便は、その多くが廃止され、航空会社は非常に苦しい境遇に直面していた。2008年の1月から9月まで、台湾の「中華航空」は124億台湾ドル、「長栄航空」は104億台湾ドルの赤字を出した。
しかし、今年の春節、この航空会社二社は利益が出た。「中華航空」の責任者の分析によると、台湾海峡両岸に直行便がスタートする前、航空会社は台湾発大陸行きの便でも香港、マカオまでしか出航できず、航空券による収入は、全行程を飛んでいないということで半分ほどしか得られなかった。直行便の就航は、時間短縮ばかりでなく、コスト削減にもつながった。そして、大陸と台湾を行き来する人が増えるにつれ、チャーター便を飛ばし、全行程分の航空券収入を得られるようになった。
以前、大陸への週末チャーター便による収益は、「中華航空」の収益全体の4%を占めていたが、平日チャーター便運航後は7%に上がった。春節期間中、直行便の便数は2倍になり、その売り上げは収入全体の10%以上を占めるまでになったという。
今年、台湾の航空業界は、世界経済の不景気による観光客数と貨物数の減少という厳しい局面を迎えるが、大陸台湾間の直行便運航が、この状況を大いに打開すると、期待を寄せている。
ある航空会社の関係者は「現在、大陸への直行便は、依然として平日チャーター便の形で運営していますが、週あたり54便も飛んでいます。少なくともこの部分で黒字になりました。そうでなければ、飛行機から飛び降りるほかはないですよ!」と冗談まじりに、その嬉しさを語った。
人民中国インターネット版 2009年5月
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