王 浩=文・写真
ここ数年、内蒙古自治区の経済は高度成長を持続している。成長幅は7年連続全国1位で、自治区の様相と人々の生活に大きな変化が生じている。内蒙古の中西部に位置するフホホト(呼和浩特)、パオトウ(包頭)、オルドス(鄂爾多斯)の3市は中でもとくに注目されている。3市の経済総量が全自治区の半分以上を占めており、しかも3市が隣り合っているので、内蒙古の「グリーントライアングル」と冠して言われるのである。
本誌の記者はフホホト、パオトウ、オルドスの3市を取材し、内蒙古の「グリーントライアングル」の経済・社会の発展状況を目の当たりにした。以下はその取材記である。
金融危機下の内蒙古「グリーントライアングル」
内蒙古自治区は中国北部に位置し、内地の数多くの省に比べて言うなら、ここの春は総じて遅く、4月中旬になってやっと柳が淡い緑色になる。ところが室外のこの寒さとは打って変わって、パオトウ市の内蒙古第一機械集団北奔重汽公司の生産現場は活気に溢れている。生産ラインでは、一台一台の大型トラックが、最後の調整を待っていた。
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北奔重汽公司の大型トラック組み立てライン |
内蒙古第一機械集団は1950年代につくられた内蒙古の大型機械生産企業の一つで、2万7000人を超える社員を抱える。この集団は北奔重汽公司に所属し大型トラックと工事用車両を生産しているが、常にいい市場を持ち、海外にまで販路を持っている。この集団公司の白暁光総経理の説明によれば、この数年ずっと好調な販売業績を維持し、毎年30%近く成長していて、2008年の総営業額は130億元を突破した。しかし、2008年末、国際金融危機は最初に自動車産業に衝撃を与え、北奔重汽公司も同じく冬の時代を迎えた。今年1月の計画は3000台の生産を予定していたが、思いもよらず、多くの国内外の顧客から突然注文がキャンセルされた。その月の販売台数はわずか400台であった。
市場が突然下落し、北奔重汽公司は生産計画の見直しを余儀なくされた。国の4兆元の内需拡大投資策の公表を受けて、会社は工事用車両の大幅な増産を決定した。白暁光総経理は「内需を引っ張り上げるため、政府はインフラ整備に力を注ぎ、船舶・石油化学・自動車などの産業の振興計画を打ち出しましたが、これによって国内の大型トラックへの需要が急に高まることが会社の生産調整の主な目的です」と言う。彼の説明によれば、2月に入ってから北奔重汽公司の注文が徐々に増え始め、3月末には会社は全部で1万1000台の車両販売契約を結んだ。その内の60%が工事用車両である。白暁光総経理は、「今、会社の毎月の販売額は急速に増えている。国のマクロ的調整措置が確実に実行されれば、我々の2009年の販売量は2008年を超えるはずです。20%の成長に達し、金融危機の影を拭い去ることができます」と言った。
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内蒙古には豊富な草場があり、その牛乳製品の生産量は全国首位である。写真は、フホホト市の蒙牛公司の近代的な搾乳場 |
金融危機の背景の下で、フホホト市は住民の就業問題に積極的に取り組んでいる。写真は市の職業サービスセンターの職員が求職者の手続きをしているところ |
内蒙古地域は広く、総面積は118万平方キロである。この広大な地に豊富な資源が眠っている。かねてからよく「東林西鉄、南糧北牧(東は森林、西は鉄鋼、南は食糧、北は牧畜)」と言われてきた。2008年に至って、内蒙古はすでに石炭の埋蔵量が6583億トンで、全国各省のトップであり、天然ガスは1兆5000億立方メートルに達することが分かっている。このほか、この地の非鉄金属や希土類などの鉱物資源も豊富である。内蒙古の「グリーントライアングル」はちょうど、鉱物資源の豊富な中西部地区に位置している。パオトウ、オルドス両市は石炭と鉱物資源をよりどころにパオトウ鋼鉄集団、内蒙古第一機械集団と億利集団などの大型鋼鉄、石炭、石油化学などの工業企業を興している。フホホト市は内蒙古の豊かな草原に依拠すると同時に自治区の区都という優位性にのっとって「伊利」「蒙牛」の国内最大の二大乳業を育てた。この三市は共に特殊な資源を背景にしている。
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内蒙古自治区常務副主席 任亜平さん | 2000年、中国は西部大開発戦略を実施した。内蒙古も辺境地区として西部開発の範疇に加えられた。2007年、自治区の東部地区が国の東北老工業基地の範囲に振り分けられ、幸いにも国の2つの優遇政策を享受することになった。国の政策の下で、内蒙古は2000年以来、経済建設への投入が大きく増加し、多くの古い工業企業が新しく生まれ変わることになった。さらに新興のハイテク企業が続々と名乗りを上げ、当地の経済の発展を促した。この三市はその先頭を切っている。内蒙古自治区の任亜平常務副主席は内蒙古がエネルギーと資源を多く持つ省になる重要性をつぎのようにたとえて言った。「内蒙古の電力エネルギーは豊かです。今、北京に灯る10個の電灯のうち9個は内蒙古が灯しています」
国際金融危機が来てから、重要なエネルギー源と工業基地としての内蒙古も例外ではなく影響を受けた。しかし、国が公表した一連の内需刺激策にともなって、とくにインフラ整備に力を入れることになり、内蒙古のエネルギーと鉱物資源が注目され、また国の重点投資の地域となり、内蒙古は金融危機の下でかえって経済発展の契機をつかむことになった。オルドス市の杜梓党委員会書記は、「金融危機が試しているのは、企業の本当の実力です。発展の方向からいえば、ある意味で生産性の低い、技術の遅れた企業は自然淘汰に任せ、環境保護型、科学技術型の項目は優先的に発展させます。政府もこの金融危機の力を借りて、産業構造の調整をし、地区の経済発展をさらに合理的にすべきです」と述べた。
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