葉夢爍=文 国家体育場=写真提供
「グレート!」金髪碧眼の若者が2人、興奮の声を上げながら、シャッターを押し続けている。彼らはドイツを離れて、北京を初めて訪れた。もちろん、「鳥の巣」の愛称を持つ北京国家体育場を観るのも初めて。だからこそ、瞬間、瞬間の全てを捉えたい衝動に駆られて、こんな行動に出るのだ。そして、彼らとともに観客席にいるのは中国全国各地からの観光客だ。
|
|
「第1回『鳥の巣』杯青少年サッカー大会」の試合光景。若きジョカトーレたちは熱戦を繰り広げた |
イタリア・スーパーカップの開幕式の光景。選手と大会役員たちによる競技場での記念集合写真 |
千万人を超えた「鳥の巣」詣で
今日の「鳥の巣」はことのほか賑やかだ。「鳥の巣」上空には1本のワイヤーが張られている。そこで1人の人間が綱渡りをしている。その様子はリラックスしながらも一心不乱にワイヤーの上を歩いている。彼はこれまで何度も綱渡りの世界記録を更新している新疆出身のアディリー(阿迪力)さんだ。そしてアディリーさんは新疆に伝わる空中綱渡り術「ダワズ(達瓦孜)」の伝承者でもある。
これは5月3日から7月初旬にかけて開催中のイベント「アディリー、『鳥の巣』上空60日」のある日の光景だ。期間中、アディリーさんは毎日、何の安全装置も着けずに、高所で5時間も綱渡りを行い、さらに「鳥の巣」の天井部分の面積9平方メートルの小さな部屋で生活し続けることになっている。彼はここで「高所での連続滞在時間最長記録」や「高所での綱渡り距離最長記録」など多数の世界記録を打ち立てようとしている。主催者側では、会場を盛り上げるため、新疆から舞踊団を招き、ウイグルの民族色溢れるダンスショーも公演している。
「アディリー、『鳥の巣』上空60日」は、北京五輪後に「鳥の巣」で開催された大小さまざまなイベントのひとつにすぎない。「鳥の巣」のようなナショナルスタジアムはスポーツイベントの会場としてだけでなく、大型エンタメイベントの会場としても実に相応しい箱物だ。有名芸能人のジャッキー・チェンや宋祖英などはここで大型コンサートを公演して大成功させた。世界的有名オペラ『トゥーランドット』もここで公演された。2008年10月に一般市民に開放されて以来、「鳥の巣」は延べ千万人の来場者数を迎えた。
「国民皆健、参加奨励」キャンペーン
北京観光ツアーの一名所として、あるいはエンタメイベントの会場として以外に、「鳥の巣」は「国民皆健、参加奨励」の理念を導入して、多方面の協力を取り付ける形で、さまざまな一般市民向けスポーツイベントも開催している。
|
「鳥の巣 氷と雪のカーニバル」では、 「鳥の巣」は一面の銀世界に変身 |
2009年6月、第7回「国民健康祭」が開催され、1万人の市民が参加した卓球大会が「鳥の巣」前で開催された。2009年8月8日には、北京五輪開催1周年を記念して、国務院(政府)は毎年8月8日を「健康の日」と定めた。そして同日、3万人以上のスポーツファンが「鳥の巣」に集い、世界に向けて太極拳のパフォーマンスを披露し、同夜には、イタリア・スーパーカップ「インテルナツィオナーレ・ミラノ対SSラツィオ」戦も開催された。また、同年11月2日から4日にかけては、「2009年レース・オブ・チャンピオンズ」がここで3日間の激しい闘いを繰り広げた。
これらのイベントで最も人々の注目を集めたのが、昨冬開催された「鳥の巣 氷と雪のカーニバル」だった。北京では観光のオフシーズンである冬に、「鳥の巢」は一面の銀世界に生まれ変わった。来場者はここでスキーを始め、雪と戯れ、鑑賞する醍醐味を味わった。会場にはさまざまな娯楽施設と来場者が参加可能なスポーツ種目も用意され、2カ月の開催期間中に約30万人の来場者が「鳥の巢」でウィンタースポーツを楽しんだ。
「氷と雪のカーニバル」の開催期間中、「鳥の巢」は北京市朝陽区政府に協力を求め、2千人の集団太極拳、地域住民による太鼓の集団演奏、集団ダンスなどの一般者参加型のパフォーマンスやスポーツレジャーイベントも開催し、1万人以上の動員と地域住民のスポーツ活動に対する情熱を引き出すことに成功した。同イベントは、北京衛星テレビチャンネル(BTV北京)とのタイアップも取り付け、大型スポーツ・バラエティ番組を制作し、テレビで生中継もしたので、多くの視聴者が銀世界の「鳥の巢」を味わうことができ、このイベントで成功を収めた主催者側は、今後もこのイベントの継続を決定した。
青少年を対象にしたスポーツコンテンツの創出
一般者対象のスポーツレジャーイベント以外に、「鳥の巣」では、青少年を対象としたスポーツコンテンツを創出するために、中国、さらには世界の青少年に試合会場としてスタジアムを提供しようとしている。今年の5月4日から14日にかけて、「第1回『鳥の巣』杯青少年サッカー大会」が開催された。上海市や江蘇省などの各地方から、8チームが大会に参加し、選手はすべて18歳以下の青少年で、彼らは全国各省・自治区・直轄市のサッカー協会あるいは優秀なクラブチームから推薦されて、大会に参加した。7月には、同大会は世界規模に拡大されて、米国、イタリア、オーストラリアなど5カ国から8チームが参加する予定だ。また、サッカー以外に、少年野球大会の開催も積極的に検討準備されている。
2010FIFAワールドカップの開幕を目前に控え、「鳥の巢」では、6月11日から1カ月間、ワールドカップのテーマパークを開催する。この期間、「鳥の巢」は真夏の楽園と化し、そこでは、ワールドカップの歴史とサッカー文化に関する展示イベントだけでなく、夜にはサッカーファンを招いて、みんなで試合観戦を楽しみ、さらには目も眩むほどのアトラクションの数々も用意されている。中でも、人々の興味を引くイベントは、ワールドカップ開催期間中に行われるフットサル大会だろう。社会各界の人々で構成された32チームが同大会に参加し、ここで闘いを繰り広げ、ワールドカップと一体となる。
近い将来、「鳥の巢」では「国民皆健」のスローガンの下、国際的交流がより一層深められるだろう。現在、「鳥の巢」は中日韓青少年サッカー大会の開催準備を積極的に推し進めていて、ヨーロッパのサッカー強国のサッカー協会に協力を求めて、有名コーチを招聘し、サッカースクールあるいは選手育成プログラムを開設しようとしている。今後、「鳥の巣」はそこでサッカーをし、そのレベルを向上させるための機会をより多くの青少年に与えてくれるだろう。
人民中国インターネット版
|