莫文娜=文 新華社=写真提供
■集団の力で激安を実現
一枚の期日指定なし映画チケット、Mサイズのコーラ、二時間の駐車券がセットになって、通常110元が今なら18元で買えるとなれば、それは常識はずれの安さに見える。北京のある大学院で学ぶシンシンさんはためらうことなく購入を決めた。これは「二十四券」と呼ばれる一日限定販売商品で、ある共同購入サイトが売り出した新しいメニューだ。わずか一日で、9364人がこれを共同購入した。
|
蘇州第五元素コミュニティーの住民は、共同購入優遇カードを使いスーパーで安くお正月用品を買いそろえられる |
ネットでの共同購入は誕生したばかりのショッピング・スタイルだ。2010年3月に最初の共同購入ウェブサイトができてから一年ほどしかたっていないのに、すでに千を超えるサイトがネットにひしめいている。この米国のグルーポンにならったビジネス・モデルは中国の至る所で開花し、共同購入ブームを巻き起こして、中国人の生活を変えつつある。
とっくにネット銀行を通じてお金が引き落とされてしまっているのに、彼女が映画館に行くのは一カ月後だ。そのころようやく、彼女がずっと待っている『ハリー・ポッターと死の秘宝』が公開されるからだ。
「映画館は新しいし、音響設備なども整っています。ただ人が多いので、何時間も並んでようやく午後9時からの回を予約できました。少し遅いですが仕方ありません、8時の回は売り切れてしまったのです」
彼女はそれでも十分価値があると感じている。価格は84%引きでも、サービスの質は割り引かれないのだから。
共同購入サイトはとにかく数が多い。毎月200のペースで増え続けており、ユーザーはとても覚えきれるものではない。そこで、こうしたサイトをリンクした、「共同購入サイトの案内サイト」さえ出現した。
「今、私は毎日30分ほどかけて、何かお得なものがないか案内サイトをチェックしています。化粧品、ホテル、美容室……、どんなものでも得だと感じたら、すぐに共同購入に参加します」
|
毎週末、多くの南京市民は自発的な「果団族」を組織し、農副産物卸売センターで共同購入をする。経済的メリットもあって「新鮮な」共同購入方法は、ますます多くの人を引きつけている |
「共同購入は本当にお得です。もともと買おうと思っていなかったものでも、共同購入サイトですごくお得なものを見つけると、買いたくなってしまいます。最終受付まで余裕があり、買っておいて後日使うこともできるのですから」
彼女は、自身が共同購入に参加する心理をこう説明する。
現在、共同購入にはまっているのは大きく分けて二種類の人たち――学生と若い会社員だ。1980、90年代生まれで「改革開放」以降の物が満ち足りた時代に育った人たちだ。彼らは一般に薄給ではあるが、質の高い生活を求めていて、フィーリング買いや衝動買い、身の丈以上の買い物をしても気にかけない。共同購入は、より少ないお金でより良い品物を手に入れたい、あるいは普段はなかなか手に入れられないサービスを手に入れたいという欲求を持つこうした人たちの心理にフィットしたのだ。
すこし前、彼女たちは大学のクラス行事のため、北京ダックの有名レストラン「全聚徳」での食事クーポンとレジャーのクーポンを共同購入した。クラスの十数人が食事をし、カラオケを歌い、テーブルゲームで遊び、バスケットボールをし、プールで泳いだが、一人平均50元(約625円)以下で済んだという。
現在は共同購入サイトの競争が激烈で、品物はより独特に、より安くなり、酒食遊楽のあらゆる分野で、多種多様なものが販売されている。
■新規参入者においしい商売
現在の共同購入は、知り合いもしくは見ず知らずのユーザーが集まることで、販売業者側との交渉力を高め、薄利多売の原理から、ユーザーにとって最高の条件で業者に販売させるというショッピング方法だ。
初期の共同購入は一般にユーザーが自発的に組織したものだった。数年前、中国の各大学のBBS(電子掲示板)と建築材料購入サイトに共同購入を呼びかける書き込みが出現したが、どれもユーザーの自発的なもので、大規模化することもなかった。
2008年11月、米国でグルーポンが本格的にスタートした。これは、ネットユーザーの共同購入を経営のポイントにするプロの共同購入サイトだ。特長は、毎日一つの割引商品を打ち出し、一人が一日に参加できるのは一回だけというシステムにある。毎日更新され、価格の安さで一定以上の購買者を集め、その後、業者から販売額の50%にあたる手数料を受け取るというものだ。グルーポンはこうした簡単明瞭な方法で、ユーザーの選択の悩みを解消できるとしている。
記者は、北京の中心部に近い西直門嘉茂ショッピングセンターに、共同購入サイト「折学系」の創業者・喬建瑋さんを訪ねた。2010年、米国グルーポンの共同購入モデルが中国に伝わると、喬さんは敏感にビジネスチャンスを感じ取った。以前ネットユーザーにレジャー、グルメ情報を提供するサイトで働いていた彼は、同年4月、自らの共同購入サイト「折学系」を立ち上げた。
「折学系」について語りだすと、喬さんは話が止まらない。見たところ30そこそこの若者には創業の情熱が充満している。
「以前は、事務所を出たら仕事のことを考えるのはやめようと、いつも自分に言い聞かせていました。ところが今は、24時間仕事に全力を注いでいます。だって、これは自分の事業なのですから」。彼は共同購入サイトの現状に対して強い自信を持っている。彼のチームの平均年齢は二十数歳、多くが「85後」(1985年以後の生まれ)で、みな仕事への情熱を燃やしている。
|
蘇州市で開催されたウェディング・フェアでは、「節約共同購入」を目指すウェディング・ショーが蘇州金鶏湖の李公堤で行われ、多くの市民がこれを見て楽しみ、共同購入にも参加した |
サイト設立直後の数カ月間、「折学系」のようなほとんど資金のない小さなサイトもまだかなりもうかった。しかし、八、九月になると、突然競争が激化してきた。
多くの以前からあるウェブサイトが、自分たちの実績を武器にこの分野に進出してきたのだ。それらは、小さなサイトが太刀打ちできない資金力、信用力を備え、同時に膨大な顧客を持っていた。6月23日、「千橡互動」(China Inter Active Corp)集団の「糯米ネット」がオープンした。千橡互動傘下のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「人人ネット」を利用して最初の商品を売り出した。40元の映画ペアチケット・セットで、コーラが二杯、ポップコーン、有名ブランドのアイスクリームが付いていた。「人人」ネットの口コミを通じて、「糯米ネット」のこの商品は15万人以上に売れた。
共同購入サイト参入の敷居は極めて低く、誰であろうと数百元出資すればすぐに枠組みを作ることができる。共同購入サイトの運営費は月額でおよそ5000元。そして共同購入ネットの素晴らしいところは、運転資金で苦境に陥る心配がないことだ。決済はネット上で行われ、サイトはすぐにユーザーからの支払いを受け取ることができる。一方、出店業者のサービスの質をコントロールするため、サイトは通常20~50%の前払いしか行わない。また、サービス系の商品に対しては、ユーザーはすぐに料金を払い込むが、実際にはかなり時間がたってから利用するかもしれない。これは共同購入サイトに大量の現金が沈殿していることを意味する。
比較的少ない資金で開業できる共同購入サイトには多くの人が殺到している。中国の共同購入ネット「F団」(愛富団)の前COO(最高執行責任者)の黄宇さんはこう話す。「これは中国インターネット始まって以来の、個人起業の絶好機です」
|