知り合う機会が少なくて 32歳男性 理工系学部卒の技術者
高原=文 馮進=写真
今年32歳になった金顕増さんはある会社のコンピューター、ネットワーク技術者。生粋の北京っ子でユーモアのセンスに富んでいる。まだ独身で両親と同居。両親は息子の周りの同級生や友だちが相次いで結婚しているのに、いまだに独身の息子のことが心配で、ガールフレンドを紹介してほしいと、いつもいろいろな人に頼んでいる。しかし、当の本人はまるでその気がない。
見合い攻勢にうんざり
その理由について、金さんは女性の友だちの実例を挙げる。彼女は両親にいつも見合いをさせられることにうんざりして、北京を離れ、武漢に引っ越してしまった。それでも帰省するたびに、母親は暇さえあれば彼女に見合いをさせたが、好みのタイプ男性は一人も出会わない。そうしたことが煩わしく、彼女は家に帰りたがらなくなった。こうした親子対立の状態が長い間続いていたが、ある日、思いがけないことに、彼女が恋人を連れて武漢から帰省し、両親を大いに喜ばせた。つまり金さんの結論は結婚相手は自分で探した方がいい、と言うことだ。
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出会い系サイトで女性会員の個人情報をチェックする金顕増さん |
金さんから見れば、両親たち大人が子どもの結婚相手を考える時に、まず相手の家庭状況や生活習慣などの家庭環境をとことん知りたがる。とりわけ中国人にとって、従来結婚は二人だけの話ではなく、両家の重大事なのだ。こうした考えに反して、金さんはお互いに気に入ることが最も大切なことだと考えている。
「両親や親戚から見合いで相手を紹介されたことが何度もあります。その中には、背が高く、体格のよい女性もいました。しかし彼女と並んで見ただけで、二人が全然釣り合わないことはすぐ分かりますよ。そういう人を紹介すべきではありませんよね。また家と車を条件にしていた女性もいましたが、私は両方とも持っていません。共通言語がない女性もいました。例えば、私はサッカーや相声(漫才)、『三国殺』などのオンラインゲームが大好きですから、相手がそういうことに全然興味がないなら、付き合うのはゴメンですね」と、金さん。そこで、理想の恋人はどんなタイプかと聞いてみると「相手に求める基準はさほど高くはありませんよ。親孝行で、安定した仕事につき、普通の容姿ならば、少しくらい太目でもかまいませんよ。知り合った後、お互いじゃれあって楽しく過ごせればOKです」という答えだった。
社交範囲は狭くて浅い
確かにあまり高い基準ではないが、金さんが今までなぜ意中の人を見つけられなかったのか。その一つの要因を挙げれば、社交範囲が狭いことだ。これは多くの独身男女が普遍的に抱えている問題だ。サラリーマンならば、普段接触しているのは職場の同僚と取引先の社員ばかりだ。利害関係が優先し、腹蔵なく話し合うことはほとんどなく、あるいは、商売上のうわべの付き合いしかできない。一見、知り合いが多そうに見えるが、名前を知っているだけで、深い付き合いがない状態で、ましてや男女間の愛情がどこから生まれるというのだろう。伝統的な農耕社会の濃密な人間関係に比べ、現代人の社交範囲は疑いなく狭くしかも浅い。言うまでもなく、メカニズム、電子、インターネットなどの分野の仕事に従事している理工系の技術者たちは、毎日さまざまな設備やデータと向き合って、孤軍奮闘しているため、ただでさえ狭く浅い社交範囲の維持も難しく、普通の人よりも「売れ残り」の苦境に陥りやすい。
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金顕増さんは休みの日には、いつもコミュニティーの図書館へ行き、様々な資料を読んで充電 |
実は、筆者も何度か見合いをしたことがあるが、一度ならず「理工系男子」を紹介された。通信ネットワーク関係、衛星遠隔操作などの仕事をしていた彼らは、高校時代はひたすら勉強に打ち込んで、女生徒と付き合ったことはなく、大学に入学しても、理工系学部は女子学生が少なく恋愛のチャンスに見放された逆境だ。そして、社会に出ると、今度は毎日さまざまな機械とのお付き合いに明け暮れる。やっとのことで友だちが紹介してくれたガールフレンドも、彼の感情が高ぶり、常軌を逸した言動に驚いて、逃げ出すケースが多いようだ。
ゆっくり理想の相手探し
金さんは「若者の社交範囲に限界があるのは事実で、コミュニケーションのチャンスがなく、また社交ができず、同級生の間にあった利害が衝突しない友人関係を見つけるのが難しくなっているからでしょう」と、語る。毎週末、金さんが一緒にサッカーやオンラインゲームで遊んでいる仲間は、昔の同級生や幼なじみで、お互いに気心が知れているし、何でも話せるので気楽で楽しいという。同級生や友だちの多くは、すでに家庭を持っているが、彼らと一緒に遊んでいる時に、金さんは全然違和感を感じないし、その前と少しも変わらないそうだ。「周りの友だちが相次いで結婚しましたが、私は結婚圧力を全然感じていません。マイペースでゆっくり理想の結婚相手を探します」と、金さんは言う。
人民中国インターネット版 2011年10月
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