中国共産党中央党校党史研究室教授 謝春濤氏
中国共産党中央党校は党の中高級指導幹部を順次訓練する機関であり、またマルクス主義理論幹部の最高学府だ。多くの読者の目には同校が非常に神秘的な場所と映るだろう。しかし実際には保守的ではなく、党員幹部を訓練する重要な基地であり、研修生を絶えず思想解放へ導いている。同校の謝春濤党史研究室教授に実像をお聞きした。(聞き手・王衆一)
――中央党校は教育プログラムで研修者の思想解放をどのように指導されていますか。
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中国共産党中央党校党史研究室教授・謝春濤氏(写真・王衆一) |
プロフィール |
謝春濤(しゃしゅんとう) 1963年2月生まれ。山東省臨沭県出身。1988年から中国共産党中央党校で党史と理論の教育、研究に従事している。現在同校党史研究部副主任、教授、博士課程指導教官。主な編著に『中国の特色ある社会主義史』『転換する中国—1976—1982』『歴史的軌跡 中国共産党にはなぜ可能か』など。 |
謝春濤氏 中央党校は思想解放の分野で、1978年以来、終始その先頭を歩き、全党に積極的な影響を与えてきたと思います。私は校外でも講義をしていますが、ある人が、党校は大変保守的で、コチコチだと思っていましたが、党校の先生の講義を聞いて、間違っていたことに気が付きました、と私に話してくれましたよ。
党校は研修生に新しい理論と方法を教え、新しい問題を討議するように指導し、かなり成果を上げていると思います。講義内容には少なくても以下のようなジャンルがあります。
第1に、教室で真正面からマルクス主義が時代とともに進むという法則を教えます。これは2001年以来、党中央が終始強調している点です。中央党校は自らの理論教育を通じて、この法則を研修生に深く教えることができます。さらに対外交流を通じて、外国人に中国共産党は過去のソ連共産党とは違い、新しい事物を受け入れ、学習し、絶えず発展していける政党だ、ということを理解してもらっています。
第2に、カリキュラムは研修生の国際的視野を広げる配慮をしています。教育プログラムに最新の国際情勢の紹介を組み込んでいます。既成の知識、感覚を過去のある分野、ある部門の範囲から飛び出させることができます。思想解放に役立つと思いますよ。
さらにもう1つ挙げると、研修生間の相互接触ですね。研修生は中央党校の得難い資源で、党内、国内で頂点にいる人々はここへ来て研修したことがあると思います。2カ月ほどの研修期間中に研修生はお互いに見識を磨き、視野を広げ、問題を考える際にそれまでよりも全体的に、周到に考えることができるようになります。
――現在、党の指導幹部の年齢差は非常に大きいと思いますが、中国共産党員の構成に変化の兆しがありますか。
謝 私が党校に来たばかりの1988年のことを覚えていますが、当時研修に来ていた中級以上の幹部は大多数の人が高等教育を受けていなかった。90年代に入ると、高等教育を受けた人は増えましたが、かなりの数の人々が「労農兵大学生」でした。90年代後半になって、次第に文化大革命以後の卒業生が増えました。現在は文革以後の卒業生が研修生の中心だと言えるでしょう。
――中央党校はどのような課題を研究していますか?政治体制改革や党内民主監督など現時点の問題にも取り組んでいますか?
謝 中央党校の役割を定義すれば、党のシンクタンクと言っていいと思います。研修生を得心させるために、中国の現時点における多くの問題を深く研究しなければなりません。研究内容からいえば、次のような課題があります。1つは、我々の教育目標に直接関係のある課題です。例えば、マルクス主義の基本理論、毛沢東思想、中国の特色ある社会主義など、われわれは絶えず研究しなければなりません。
もう1つは、党中央から委託された、あるいは、実践から生まれた重大な問題の研究です。例えば、ご質問にあった政治体制改革や党内監督の問題などです。たとえ党中央から委託されなくても、研修生からこうした問題をたくさん抱えてここへやって来ます。われわれの回答がたとえ初歩的だとしても、その問題を避けるよりはずっといいと思います。
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中央党校の講義風景(写真・王衆一) |
――これらの問題を研究する際に、党校に有利な点はどこでしょうか?
謝 第1に、中央党校は党中央の声を迅速、正確に聞きとることができることです。党中央がどんな問題に関心を持ち、どんな問題を解決しようとしているのか、われわれの教育、研究はそれに合致しなければなりません。
第2に、調査研究は他の多くの大学より便利なことです。校内で調査研究ができます。研修生と接触することによって、彼らの本音の見解を聞き、各方面のさまざまな実態を知ることができます。われわれは校内で頻繁に座談会を開いています。時には、わざわざある地方へ行って実地考察するよりずっと多くのことを理解することができ、価値があります。
第3に、いろいろな職場と比べて、ここは自由闊達な雰囲気があります。職場では仕事がたくさんあり、落ち着いてさまざまな問題を研究することができず、往々にして職場の制約を受けます。その点、ここでは誰とでも接触することができ、どんな領域の問題でも研究できます。
――最後に、政治体制改革について、中央党校の研究状況を紹介していただけますか。
謝 政治体制改革はこれまでずっと「改」を続けてきました。かなり大きな改革は、例えば、終身制から任期制に変えたことです。しかし現在の状況では満足できないことはまだまだあります。政治体制改革を続けていくことは言うまでもないことです。中国共産党中央委員会の胡錦濤総書記が今年の党成立90周年慶祝大会で発表された講話でもこの分野における意図に言及していました。中央党校として責任をもって引き続き研究していくことは言うまでもありません。わたし自身が今まで携わってきた党史教育、研究では、新中国成立後の過ちを犯したあの時期の歴史にかかわるものがあります。われわれは決して、ただ講義で当時の過ちを指摘するだけではなく、なぜあのような過ちを犯したのか、個人の独断などが原因の1つではないかと、皆さんに考えてもらうように指導しています。どこに問題があったかを皆が認識すれば、そこから問題解決の道が開けます。今でも明らかに、個人の独断や、民主的精神が足りないなどの問題がまだ存在しています。歴史から現実を論じ、これらの問題を解決しなければなりません。
一方、われわれはこれらの問題に関する地方での模索を注目しています。例えば広東の「大部門体制改革」、南京の「公開推薦による直接選挙」、また他の地方では党内民主の刷新に関する実験など、いずれも多くの同僚が現地調査を行いました。また典型的な事例は教育、研究に使っています。中央党校は党の建設に関する各地からの新しい措置や模索を極めて注目しています。参考になる試行の反響を全党的に拡大し、上層部に注目してもらうように貢献しています。(構成 王焱)
人民中国インターネット版 2011年12月 |