「差額ゼロ」で薬価低減
農民の診療費の軽減はいずれも安徽省で実行されている基本薬の「差額ゼロ」販売のおかげだ。
毎月10日と26日は大英鎮センター衛生院が薬品配給計画を申告する日だ。担当者が「安徽省薬品集中購入センターのサイト」に登録し、ネットで注文書を発送すれば、23日後には薬が届く。「やっぱり速いですよ」と、呉さんは言う。
ここで、壁に貼ってある公表された国の基本薬リストと安徽省の補充薬リストに記載されている薬品だけが販売でき、しかも省クラス集中入札で購入された原価で販売することが義務付けられている。つまり、「差額ゼロ」だ。
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取材に答える安徽省医療衛生体制改革弁公室主任を兼ねる同省発展・改革委員会主任の沈衛国氏 |
1950年代、国の財力不足で、公立病院への補助が限られていた当時、「薬代に上乗せ」という政策を制定し、病院は薬の購入価格に15%上乗せして患者に販売することを認めた。この政策はかつて公立病院の運営と発展には積極的な役割を果たした。しかし、末端医療機関にとっては、管理監督制度の不備と公共財政投入の深刻な不足によって、「上乗せ薬代」が主な収入源となった。調査によると、利益本位に走った改革前の安徽省各地の郷・鎮衛生院の上乗せ率は普通で60%、村の衛生室では80%以上に達し、かなりの数の病院が90%以上も上乗せし、中には167%以上に達していたところもあったという。医師は患者に多量の、高い薬を処方し、「上乗せ薬代」による収入の最大化を求める有様だった。そのせいで、患者は無駄な出費を強いられ、負う必要のない負担をかけられていた。
「長期間にわたって、『薬代で病院の経営経費を補う』手法が医薬衛生体系のあらゆるところにしみこみ、わが国の医療衛生事業を公益性に欠ける事態に導いた主な原因となり、医療改革を深化し、解決しなければならない主な課題となっている」と、安徽省医薬衛生体制改革弁公室の主任を兼ねる同省発展・改革委員会の沈衛国主任は力説した。
住民の受診費が高すぎるという難題を解決するため、2009年8月、国は307種類の常用薬を全て基本的な医療保障薬給付リストに取り入れた基本薬物制度を打ち出した。病院側はこれらの基本薬を一括購入、一括配送し、中間段階を減らし、「差額ゼロ」の販売を実行し始めた。
新医療体制改革によって、2009年末までに30%の政府管轄下の末端医療機関が基本薬を使い、薬代の「差額ゼロ」販売を実施し、2010年に60%に拡大し、2011年には全国カバーする計画だ。
しかし、「改革の重点中の重点」と言われるこの制度には、参考に値するいかなる前例もなかった上に、多方面の利害にかかわるため、各地での進展は従来のスケジュールよりかなり遅れている。そうした中で、安徽省は全国の最先端を行っていると言えよう。
2009年11月、安徽省は省内の32県(市、区)で末端医薬衛生体制総合改革の試行を開始した。2010年8月、安徽省は改革試行の経験を総括したうえで、省全域で改革を全面展開すると同時に、全国に先立って新しいメカニズムのもとで国が指定した基本薬の集中入札、購入、配送を全省で実施した。省の薬品購入センターが末端医療機関に代わって、薬品生産企業に対して直接、基本薬の集中入札を実施し、中間段階の費用を減らし、薬価を大幅に下げた。
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安徽省来安県大英鎮大黄村衛生室の正面 |
末端医療機関の需要に応じて、安徽省は307種類の国の基本薬に、合わせて255種類の補充薬を加え、全量を省が統一的にネットで集中的に入札、購入し、これを統一定価とした。「改革後、末端医療機関で住民の診療費は平均で30%前後下がり、抗生物質の使用比率も15%下がりました。住民は間違いなく利益を得ました」と、沈さんは語った。
「薬代で病院の経営経費を補う」という弊害を次第に廃止するとともに、安徽省はさらに末端医療機関の総合的な改革を推進している。主に要員の配置、役割分担、業績による人事考課、多チャンネルの補償、人事を含むメカニズムと体制を改革し、ポストにふさわしい人材を招聘し、業績による給料制度を段階的に取り入れ、医療従事者の積極性を引き出している。
「安徽省の改革は完璧ではありません。今はただ郷・鎮の衛生院などの末端医療機関で推進され、医療資源全体の15%しか占めていません。今年はさらに県レベルの病院で次第に推進し、完成度の高い制度をつくる予定です。さらに重要なのは信用メカニズムの構築だと思っています。安徽省の医療改革はいまだに『任重くして道遠し』ですよ」と、沈さんは率直に語っていた。
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