中国では公立病院が医療機関の主体だ。統計によると2010年末時点の医療機関の総数は2万918で、そのうち公立病院が1万3850を占めている。来診者の90%以上が公立病院で診療を受けている。ここ数年、人々からたびたび指摘されてきた「受診難、診療費高」という問題は、主に公立病院に集中するものだ。そのため、公立病院改革という「難物」をそしゃくできるかどうか、が「新医療改革プログラム」の成否を左右するだろう。
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安徽省蕪湖市第二人民病院の薬局で薬を受け取る患者たち。薬代は「差額ゼロ」改革で安くなった |
2010年2月、中国は公立病院改革の試行に着手した。江蘇省鎮江、遼寧省鞍山、福建省アモイ(廈門)、広東省深圳など16の試行都市が相次いで公立病院改革に乗り出した。そのうちの一つ安徽省蕪湖市は一足早く2008年の年初から、「医薬分業」を突破口に、公立病院改革の口火を切った。
「医薬分業」を断行 住民の利益を図る
蕪湖市民にとって、2011年10月1日は記念すべき日だ。当日午前零時から蕪湖市の20の公立病院すべてが薬の「差額ゼロ」販売を実行し、蕪湖市民は農村住民と同じように薬の「差額ゼロ」の優遇を享受できるようになった。これは中国初の例だ。
このサービスは、蕪湖市が実行した「医薬分業」制度に由来する。
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蕪湖市第二人民病院で診療を受ける患者 |
改革の発想について、蕪湖市衛生局の韓粛局長は次のように説明した。公立病院は政府の投入が不足し、診療費が他に比べて安く、中堅医師の給料が低いなどの状況が一般的だった。収支が合わない状態で、薬が融通性の最も高い収入項目だった。2007年、蕪湖市の医療機関に対する調査によって、評判の良い医師のほとんどが薬のリベートを受け取っていることが明らかになった。この現象は蕪湖だけに限らず、全国の公立病院でもよく見かけられ、そのために医師と患者の間にトラブルが絶えず生じていた。
病院と薬との利害関係を切断するために、2008年1月1日、蕪湖市は薬品管理センターを成立し、正式に医療改革をスタートさせた。
医薬分業の方針にしたがい、薬品管理センターは、財政によって全額支給される事業体と定められた。政府の依頼を受けて、8つの公立病院の薬の購入、販売権を接収し、病院の薬局は薬品管理センター傘下の薬品調達センターに改変し、薬剤師の人事、給料などはすべて調達センターが管理することに改めた。薬剤師の給料は市財政部門が定額支給し、病院の薬販売は禁止された。管理センターが全市の薬使用リストをまとめ、統一的な薬の購入、供給情報の管理情報システムを設立し、薬の入札購入を実施することによってその品質と安全性を保障し、臨床用薬のニーズに満足できる結果が得られた。
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蕪湖市医療改革の現状を説明する蕪湖市衛生局の韓粛局長 |
蕪湖市第二人民病院では、患者がセルフチェックマシンで診断結果を知ることができる |
管理センターは薬を直接八つの病院に配送し、上乗せ料金の比率は国家規定の15%より5ポイントも減少させ10%に統一した。薬代収入は病院が代理で徴収し、毎月管理センターに全額を納付する。同センターが薬品納入業者との精算に責任を持ち、同時に、病院側には予め薬の上乗せ料金の80%を返還することにした。「また、われわれは年末の業績評価によって、八病院に賞罰を実施し、病院のモチベーションを向上させるようにしている」と韓局長。「ここ数年の試行錯誤と刷新を通じ、医薬分業はすでに制度化、スタンダード化が進み、市民たちが実利を獲得した。2008年にはこの八病院の薬代収入が平均で全収入の40.55%を占めていたが、2011年には35.04%まで下がり、4年間で、2億5000万元以上の利益を市民に還元した」
2011年8月、薬品管理センターは「薬品医療機器管理センター」に改名した。こうして、管理センターは医療機器も統一に購入、管理することになり、その機能が強化された。10月から、全市(4つの県を含む)16の公立病院が薬の「差額ゼロ」販売を全面的に実施し、同月だけで、市民に302万5000元の利益を還元したと推算された。
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