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課題も多い「首鋼」の将来

 

 年産800万トンの鉄鋼企業をまるごと移転させるのは、中国でも、世界的にも未曾有のことである。これは国や地方、企業、従業員の利益に関わる全面的で系統的なプロジェクトである。激しい市場競争に直面し、当面の生産経営をうまく行って、経済的な利益の増加を保証しなければならない。と同時に、鉄鋼の生産量を圧縮し、リストラされた授業員を再配置し、さらに、地方に新しい製鉄所を建てなければならない。その難しさは進して知るべし、である。

 

よみがえる鳳凰

 

曹妃甸工業区の立体模型図(①曹妃甸工業区のゲート②精品鋼材の生産基地③曹妃甸島にあった灯台はそのまま残された④25万トン級の鉱石バース⑤30万トン級の原油バース) 
 2005年10月、首都鉄鋼と唐山鉄鋼は提携して、「首鋼京唐鉄鋼聯合有限責任公司」(首鋼京唐公司)を設立した。首都鉄鋼が株式の51%をにぎり、これが新しい首都鉄鋼の主要な部分となった。

 

新しい首都鉄鋼の平面企画設計は、世界の先進的な鉄鋼企業の経験をもとに、曹妃甸の地理的条件にあわせて描かれた。原料置き場、コークス化、焼結、製鉄、製鋼、圧延などの技術系統は、曹妃甸の25万トン級の鉱石バースから、南から北へ「一直線」に配置され、その配置はきちんと整っており、それぞれの間の輸送距離は短く、それぞれの機能がはっきりと分かれている。

 2008年、首鋼京唐公司は生産を始める。鉱石バースのベルトコンベアーで船の上に積まれた砂状の鉄鉱石を製錬工場に運び、そして5500立方メートルの巨大な高炉の中でこれを溶かして銑鉄にする。

 

 それから、一連のハイテク処理を経て、溶けた銑鉄は純度の高いビレット(鉄の塊)になり、圧延工場に運ばれる。ここで熱間圧延または冷間圧延を経て、自動車や電子製品、電気製品などハイテク産業に使う上質な鋼材が生産される。計画では、新しい首都鉄鋼の年間鉄鋼生産量は1500万トンに達する見込みで、中国最大の新型の上質鋼材の生産基地になる。何巍院長の考えでは、新しい首都鉄鋼はさらに、鉄鋼のなかの「芸術品」といわれる珪素鋼(珪素を含む特殊鋼)の生産を目指して進むことになっている。

 

すでに完成した鉱石バース。鉱石を直接陸上げできる(曹妃甸開発区提供) 
 新しい首都鉄鋼は、生産能力と製品の品質を大幅に向上させると同時に、エネルギー消費量を現在の平均レベルより30%減らさなければならない。しかも、排気ガスや廃棄物、廃液はリサイクルして利用され、「汚染ゼロ」を達成しなければならない。

 

 高温の排気ガスは全部回収されて発電に使われ、新しい首都鉄鋼の電力はその94%が自給できるようになる。工業廃棄物は加工され、セメントの代替品として建築材料になる。製錬に必要な水は、海水を淡水化して使う。この過程で、廃液の循環利用率を98%にし、あわせて塩とアルカリを生産することもできる。高度にオートメ化された生産設備を採用するので、この巨大な製鉄所には、7000人の労働者と管理職員しかいらない。

 

 首都鉄鋼の移転は、華北地区の鉄鋼企業を進化、再編し、中国北方の経済、とりわけ環渤海経済の発展を促すだろう。

 

 少なくとも現在、新しい首都鉄鋼はすでに曹妃甸を活性化させた。曹妃甸工業区の計画面積は310平方キロで、鉄鋼のほか石油、化学工業、機械製造、近代的物流などの大型企業がここに集中している。埋蔵量十億トンの大油田が新たに発見され、埋蔵量44億トンの鉄鉱鉱区を背にし、大型の石炭基地もある。曹妃甸を新たな成長の基点とする環渤海経済圏は、長江デルタ、珠江デルタとともに、中国沿海地区を北から南へ結ぶ三大経済ベルト地帯になるだろう。

 

従業員はどこへ

 

1992年に生産を始めた第三製鋼工場。三基の転炉と四基の連結鋳造機があり、鉄鋼の年産は300万トン近い(首都鉄鋼提供)
 劉慧さんの息子である劉岩さんは39歳。7歳の男の子を持つ。彼は首都鉄鋼のカラーコーティング工場の生産ラインについている普通の労働者である。この工場は2002年に建てられ、全部輸入されたオートメーション設備を使っている。労働者たちはコンピューター室で、スクリーンに表示されるパラメーターをチェックし、マウスをクリックするだけで仕事ができる。父親の世代が汗を流して働いていた情景とはまったく違う。

 

 現在、劉岩さんが働いているこの工場も、移転するかもしれない。彼の話によると、工場には環境汚染の問題はないが、大量の水蒸気と電力の供給が必要であり、この先はどうなるか、まったくわからない。

 

 「これからどうなるにせよ、労働者たちは現在、普段通り働いていて、特に何かを心配してはいません。首都鉄鋼はきっと私たちをみな再配置してくれるでしょう。今の二十代、三十代の若者たちはみんな、仕事をしながら新しいものを勉強しています。彼らは曹妃甸の新工場に行きたがっています。そこの給料はたぶん少し高いかもしれません。でも、四十代、五十代で、特別な技能を持っていない人は、これからはかなり難しくなるでしょう」と劉岩さんは言う。

 

 彼自身がどうするのか。「私は別にどうでもいいです。どこへでも行きます。ただ首都鉄鋼で20年も働いてきたので、情が生じ、『故郷離れがたし』という思いが少しあります」

 

 まだ先の分からないカラーコーティング工場と比べれば、首都鉄鋼の第三製鋼工場の未来は明るい。今年の年末に生産を停止する。第三製鋼工場技術科の王堅さんによると、この工場の労働者は基本的にみな曹妃甸の新工場に行くという。「大多数の人が行きたがっています。今は、新工場の新しい設備と操作方法に慣れようと、みんなトレーニングを受けています」と言った。

 

第三製鋼工場の技術者の中核である王堅さん(中央)。彼は懸命に勉強し、新しい首都鉄鋼へ行き、さらに大きな挑戦を受け取るつもりだ
 王さんが唯一、心配しているのは、新しい技術をうまく身につけられなくて、これからの新しい仕事がうまくいかないことである。

 

 首都鉄鋼の移転で一番厳しい試練は、人の問題である。今回の移転で、首都鉄鋼には45万人の従業員を再配置する必要がある。しかし曹妃甸の新工場は、生産のオートメ化の度合いが高く、数千人しか必要でない。

 

 残りの人々はだいたい三つの方向へ進むことになる。

 

 第一は北京・順義区に年産150万トンの自動車用鋼板の冷間圧延工場が建設され、ここに一部の従業員が吸収される。

 

 第二に、首都鉄鋼の非鉄鋼産業、たとえば電子製品、不動産、さらに首都鉄鋼移転後、元の場所で発展するサービス業などは、今後大きく発展する余地がある。こういった産業は、従業員を募集する必要がある。

 

 第三に、年齢がかなり高く、新しい持ち場に就くのが難しい労働者に対しては、一定の補償を与え、早めに定年退職させる。そのために、20077月、首都鉄鋼は従業員就職サービスセンターを設立し、余った人員の再就職問題の解決を支援している。

 

 北京に住む首都鉄鋼の従業員は8万余人、その家族も加えると十数万人になる。だから首都鉄鋼の移転は、首都鉄鋼にとっての重大事であるばかりでなく、北京にとっての重大事でもある。首都鉄鋼の剰余人員をみなうまく再配置してこそ、はじめて社会の調和と経済の発展を保証できる。このため首都鉄鋼の指導者たちは労働者に「一人一人の従業員を再配置し、工場が退役するその日まで、われわれは最後までここを去らない」と約束している。

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