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史上最多の参加国に上海万博へ カウントダウン

 

ひと足先に会場見学

 
黄浦江と垂直に交わる道は、黄浦江からの自然の風を小道に沿って万博会場内に引き入れる

会場となる黄浦江両岸地区では、現在、パビリオンの建設が急ピッチで進められている。万博軸、万博センター、万博演芸センター、中国館、テーマ館の「一軸四館」はすでに基本的な形ができあがっており、すでに万博会場は緑に覆われている。

堤防の役割を持つ「万博公園」

会場内のパビリオン建設が相次ぐ中、浦東エリアにある「万博公園」は、基本工事がすでに終了している。

ここはもともと上海鉄鋼第三工場と江南造船所があったところだ。今では草木が植えられ、きれいに整備されて、工業的な雰囲気はすっかり感じられなくなったが、埠頭に残る2台のクレーンは、昔の工業地帯の面影をとどめている。

敷地面積約29ヘクタールある万博公園は、万博期間中、観光客の憩いや娯楽スペースとして利用される予定だ。閉幕後も、公園はそのまま維持され、上海市中心部の重要な緑化スペースになるという。

万博公園は、ちょっと変わった景観デザインが採用されている。公園は、黄浦江の川岸から南へと緩やかな扇形をしている。緑で彩られた傾斜面は、観光客が腰を下ろして休憩する場所として活用されるとともに、堤防としての役割を持つ。コンクリートの水防壁よりも、このような緩やかな坂のほうが、間違いなく、より自然で美しい。

また、公園内の芝生には特殊な処理がされており、多くの来場者に芝生が踏まれて土の部分が露呈しても、すぐに取り替えることができる。

この緑の堤防は、工場の移転時に出た処理済みの無害産業廃棄物を積み重ねて形づくったものだ。これは廃棄物の再利用という点で、環境汚染を減らすことにも一役買っている。

公園内にあるアスファルトの小道は、黄浦江に対して垂直に伸びている。空から見ると、まるで緑の扇子の「骨」のようだ。湿気を帯びた涼しい黄浦江からの風が、この小道を通って公園に入り、公園内の空気は快適に保たれる。

プロジェクト担当者の話によると、万博公園には、案内標識の取り付けを最小限にするという。なぜなら、公園の景観は、植物によってはっきりと分けられているからだ。ここには桜の林、あちらにはハクモクレンの林という具合に、さまざまな植物が道しるべの役割を果たしており、人々は標識を見なくても道に迷う心配はない。

景観と交通の主軸線「万博軸と陽光谷」

万博軸、中国館の模型

陽光谷の内部イメージ

浦東エリアの中心にある大通り「万博軸」は万博最大の施設である。地下2階、地上2階の半オープン式の建物は、商業・飲食・エンターテインメントなどの機能を兼ね備え、全長1キロ、幅130メートルにもなる。

万博軸は会場南側のメーン出入り口から北の「お祭り広場」までまっすぐ伸び、その東西には上海万博の4大パビリオンである「中国館」「テーマ館」「万博センター」「演芸センター」が点在する。万博軸は会場の空間景観と人の流れの主軸線となり、期間中の利用者は1日平均90000人以上と見込まれている。これら「一軸四館」は恒久性建築で、万博閉幕後も残り、将来の都市計画の一部となる。

万博軸上に建ち並ぶ巨大なラッパ状のガラス張りの建築は「陽光谷」であり、6つからなっている。陽光谷は、いずれも万博軸の地上と地下の4階分のスペースを貫通しているので、地下まで自然の光が直接射し込むほか、新鮮な空気を注ぎ込むこともでき、地下にいる人が息の詰まらない快適さを保つことができる構造となっている。そのほか、雨天時には、陽光谷は雨水を集めることができる。貯められた雨水は、万博会場内の車両の洗浄や植物への散水などに使われ、節水につながる。

巨大な陽光谷は、天井部分がサッカー場ほどの広さになり、最高地点は地上90メートルに達する。シンプルに見える構造だが、実際に工事を行うのはとても難しい。現場の作業員の話によると、骨組みとなる鉄製の格子の接点やガラスの曲がる角度は、1つとして同じものはなく、それぞれ特注する必要があるという。そのためには膨大なデータを作らなければならず、これが工事の進行の大きな障壁となった。過去にもイタリアのミラノ市で、これに似たガラス張りの建築が建てられたが、陽光谷の規模には、はるかに及ばない。

このような高難度の巨大な建物は、本当に造る価値があるのだろうか。万博軸のチーフデザイナーの1人である李宏さんは、「陽光谷は上海万博のためだけに建てられたのではなく、象徴的なシンボルの意味合いも兼ねています。エッフェル塔も万博の産物ですが、その時代の人類の技術の成果を代表しており、万博閉幕後、エッフェル塔は都市の永遠のシンボルと万博の追憶の象徴となりました」と話した。

「中国紅」で彩られる「中国館」

建設が進む中国館(7月6日撮影)

中国館の垂木表面の「中国印」に施された「南」の字

2009年6月22日夜、「東方の冠」をテーマとした「中国館」がライトアップされ、万博会場でもっとも美しい姿を現した。中国館は、主催国のパビリオンとして世界中の関心を集めると同時に、今や上海万博のシンボル的な存在になっている。

上海万博のパビリオンの中で最大の体積を誇る中国館は、巨大な鉄筋コンクリートの柱4本が、上部の正方型の「斗拱」を支える構造となっている。台座の柱と柱の間の距離は70メートル、屋上の一辺の長さは140メートルで、上部は台座部分の2倍となる。下が小さく上が大きいデザインは、見るものに強い視覚的なインパクトを与える。

中国館の主な色調は「中国紅」である。しかし以前は、「中国紅」とはコンセプトを指すものであった。それではいったいどんな色彩を「中国紅」と呼ぶのだろうか。またどんな材料が、このコンセプトをいちばん相応しく表わせるのだろうか。  考証を重ねた結果、専門家は七種類の異なる赤色を中国館の色調として採用することに決定した。そのうちの四種類を外壁の色とした。さらに、城壁の質感を表現するために、光沢のないアルミ板を用いて、ようやく現在のような効果を引き出すことに成功した、という。

過去最多の50カ国が参加 「アフリカ連合館」

上海万博のさまざまな国家館の中で、中国館を除いて、アフリカ連合館がもっとも早く、その全容を現すパビリオンである。

アフリカ連合館は、すべて中国側が出資し、デザインから建設まで担当した。外観は、アフリカの特徴に富む要素が強調されている。例えば、外壁には、樹木、砂漠、象、キリンなどのイメージを描き、シンプルながらも鮮やかな色彩を用いて、アフリカらしさを表現している。

今回の万博には、これまででもっとも多く、アフリカの53カ国のうち50カ国が参加を表明している。そのうちの5分の1にあたる国が初参加、または長年参加していなかった国である。エジプト、モロッコ、南アフリカなど八カ国は、自らパビリオンを作ったり会場をレンタルしたりして参加するが、それ以外の国はみな、アフリカ連合館で展示を行う。

万博申請時の承諾に基づき、中国政府は、発展途上国に万博参加のための総額1億ドル(約100億円)に当たる支援金を提供する。現在、国際金融危機のあおりや、動乱が発生したりしている状況下で、この支援金は、アフリカの国々が万博に滞りなく参加できることを、ある程度保障するものである。

省エネとエコ技術の集大成「上海・自然保護の家」

万博初の試みとなる「ベストシティー実践区」は浦西エリアに位置する。敷地面積15ヘクタールの実践区内には、世界各地の優れた都市建設の実例が展示され、実物や展示で再現される。

スペインのマドリードからは「竹の家と自然保護気候樹」、ドイツからは「ハンブルクの家」などの実践プランが再現予定だ。日本からは大阪の「環境先進都市・水都大阪の挑戦」をテーマとした大阪の官民の環境技術、先進的取り組みが紹介される。中国からは、上海、天津、蘇州、杭州、西安などの都市のケースが出展予定である。

万博主催地の上海市が展示する「上海・自然保護の家」のモデルは、上海閔行区工業パーク内の建物である。イメージとは異なり、一般の住宅ではなく、上海建築科学研究院の2棟の実験棟である。1棟は日常の事務をこなしたり、実験データを収集したりするために建てられたもので、自然採光、太陽エネルギーと建築の一体化、垂直緑化、地熱エネルギー利用などが採用されている。もう1棟は実験用のモデルハウスで、未来の知能住宅への発展の方向性を代表している。

これらの建物に使用している技術の多くは、すでに上海の新しいオフィスビルや住宅マンションなどに導入されている。「上海・自然保護の家」は、上海の省エネ建築と環境保護技術の集大成といえるだろう。

 

人民中国インターネット版

 

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