現在位置: 特集一覧>経済
経済苦境の中の農民工たち

 

都市を去る人々の悲哀

 

突然の企業倒産やレイオフが農民工たちを襲った。仕事がなくなり、故郷に帰る人、仕事を求めて都市に出てきた人も、結局、仕事にありつけず、帰って行く。大都市の駅は、こうした農民工でごったがえした。

旧正月前の輸送は史上最高

失業して故郷に帰る農民工は、これからどうしようかと途方にくれている
中国人にとって春節(旧正月)は、一年中でもっとも大切な祭日であり、人々は一家団らんし、行く年を送り、来る年を迎える。

毎年、春節前後は、億単位の人々が、まるで渡り鳥のように故郷と就職先の間を往復する。この1ヵ月余り、全国の交通輸送はピークに達する。これを「春運」という。

だが2009年の「春運」は、例年より早くやって来た。そればかりか、輸送人数も史上最高を記録した。

今年の春節は1月26日だったが、去年の10月末から多くの農民工が帰郷し始めた。重慶市だけでも10万人が帰ってきた。

春節までまだ1ヵ月以上あるのに、北京西駅の待合室では、四川省の農民工数人が帰郷の列車を待っていた。彼らは荷物をいっぱい抱えていた。その中の一人、ピンク色のダウン・ジャケットを着た女性は、がっかりした口調で言った。 「これまでは毎日75元の賃金をもらえましたが、いまは73元。以前は、春節の数日前に帰郷しましたが、今年はずっと早く帰ることになりました。工事現場での仕事がなくなったからです。来年はまた戻ってきて、新しい仕事を探さなければなりません」

広州駅では、甘粛省の若者一人が荷物の上に座って、インスタントラーメンを食べながら「広東で仕事を見つけようと思って2ヵ月前に来ましたが、どこへ行っても断られ、手元のお金も使い果たしてしまいました。故郷に帰るほかはないのです」と言った。

統計によると、1月11日から、2月19日までの40日の「春運」は、全国の鉄道、民間航空、自動車道を合わせて延べ23億3800万人の旅客を輸送し、「春運」の最高記録をつくった。このうち、帰郷した農民工は約7000万人で、全国の農民工の約3分の1を占める。その主な原因は、世界的な金融危機にある。

金融危機の巻き添えに

手に職のある農民工は、街頭で雇い主を探す(東方IC)
「あの朝、いつものように出勤したら、工場入り口の破産通告が目に入って、唖然としてしまいました。こんな大きな企業なのに、どうしてつぶれてしまったのだろうと」

2008年10月15日、広東省東莞市合俊グループ傘下にある2つの玩具製造工場は破産を宣告された。四川省達県出身の農民工、向玉蓮さん(44歳)は、この工場でまる九年間働いていたが、工場の突然の閉鎖によって、一家は生計のめどが立たなくなった。同じように失職の知らせを受けた同僚は七千人以上もいた。

この工場は、輸出用の玩具を加工、製造する大型の生産基地であった。工場の閉鎖は、中国の輸出型企業が金融危機から受けた衝撃を反映したものであった。

2009年5月27日、中国人民銀行(中央銀行)は全国の20の省、自治区、直轄市の輸出企業1156社について、サンプル調査を行い、『2008年中国地域金融の運用報告』を発表した。この報告によれば、海外市場の衰退によって、これら企業の昨年下半期の新規輸出契約金額は、昨年上半期に比べ15%減少した。東南沿海地域の企業が国際金融危機から受けた影響は比較的に大きく、とくに紡績、アパレル、帽子・靴などの製造業の工場稼働率は低下しつつあり、雇用人数は著しく減った。

一方、中国社会科学院の調査研究報告によると、中国の中小企業の40%は金融危機の中で破産したという。昨年のデータで換算すれば、中小企業4300万社のうち、破産したのは1720万社を超える。これら労働密集型の製造業の減産・破産は、直接農民工の失職につながっている。帰郷した7000万人の農民工のうち、約2000万人が職を失った。仕事がなく、お金が稼げないうえに、都市部での生活にかかるコストが高いため、「家に帰る」ことは、彼らにとって、やむをえない便宜的な選択であった。

 

   <<   1   2   3   4   5   >>  

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850