素朴さと知恵が凝縮された建築

 三河古鎮は、合肥市肥西県の最南に位置しており、3本の川――豊楽河、杭埠河、小南河がそこで交わることから名付けられた。

 古鎮を歩いていると、古民家の反り返った軒先が目に付く。これは典型的な徽派建築の特徴で、「馬頭壁」と呼ばれる。昔は政府の役人か貴族しか馬に乗ることができなかったため、一般市民は自分の子どもが将来出世して大きな馬に乗れるようになることを願って、軒先をこのように設計した。また、このような出っ張った造りには火事の延焼を防ぐという実用性もあることから、「風火壁」とも呼ばれている。古民家は木造建築が多いが、軒先部分だけを出っ張ったれんが造りにすることで、火事が起きても、火の粉が風に吹かれて隣の建物に移らないように工夫されている。まさに市民の素朴さと知恵が凝縮された一角なのだ。

 三河古鎮では、それぞれの家の前に、長方形の油紙ちょうちんがつるされている。よく見ると、その一つ一つに違った内容が書かれている。聞けば、表にはその家の主人の苗字が書かれ、裏には出身地が記されているそうだ。昔、全国各地から商人が来て、ここに定住するようになり、このしきたりができたと言われている。さまざまな所から移住者が来たため、この町では「百家姓(中国の代表的な姓)」のほとんどを目にすることができる。

三河にはまた、独特な建築様式がある。「合衆巷」と「一人巷」だ。中国語で「衆」という字には、3人という意味がある。そのため、「合衆巷」とは、3人の人が並んで通れる通路という意味になる。この通路は昔の人の体型を基準に作られたため、今の人が通るには、やや狭いと感じてしまう。同じく「一人巷」とは、1人しか通れない通りのこと。昔の人がなぜこのような通りを作ったのかは未だ明らかではない。ただ、その細い通りを抜けた先に待っている歴史物語は、ここに来る人を絶えず魅了しており、両側に高く積まれた灰色れんがの壁の間から、「一人巷」を通して見える青い空は、美しく、神秘的な色彩を帯びている。

 

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