「まさかお金が戻って来るとは思いませんでした。陳さんには本当に感謝しています!」事が起きて2日後に、楊さんは合肥高新区派出所で、失くした10万元の現金を受け取った。彼はその時、お金を届けてくれたタクシー運転手陳安明さんに、3000元を謝礼として差し出したが、婉曲に断られた。
10月27日午後5時過ぎ、安徽大衆出租車有限公司の皖A82704のナンバーのタクシー運転手陳安明さんは、安農大から明珠広場まで客を乗せた後、さらに明珠広場から海恒社区まで人を乗せ、続けて3組の乗客を運んだ。乗客の乗り降りの際、陳さんは彼らの持ち物に対し注意を払っていなかった。
陳さんの回想によると、車が宿松路と繁華大道の交差点を走っているとき、男女2人の乗客が彼の車に乗り、女性客が乗るなり、後部座席に布袋があると彼に教えてくれた。陳さんが見てみると、それは白い不織布の袋で、前に乗った誰かが忘れていったものかもしれないと思い、その女性客にその袋をリアウインドーの下に置いておくように頼み、続けて車を走らせた。翌朝、車の中を掃除している時、その袋を再び見てようやく思い出し、袋を開けてみると、中には膨らんだ封筒があり、10束のお金が整然と入れられていて、数えてみると合計10万元であった。「こんなにたくさんのお金を失くしたら、落とし主はきっとものすごく焦っているに違いない」と思い、陳さんは袋の中をくまなく探したが、落とし主の連絡先を探し当てることはできなかった。そこで、彼は合肥市運輸管理所に電話をし、この事を告げて、営業をやめて、現金を持って運輸管理所まで行った。
そのお金は、その日の午後、合肥のある建築現場で働く楊さんが、現場作業員の給料を払うために銀行から引き出した現金10万元だった。彼はお金を近くにあった不織布の袋に入れて、陳さんが運転するタクシーで安農大北門から丹霞路と金寨路の交差点まで乗って、降りる時に袋を忘れていったのだった。
「その日、車から降りた後でお金を失くしたことに気づきました」と楊さんは語る。彼はその時あわてて110番通報した。その日の夜、彼は肥西桃花派出所に赴き、派出所の警官に監視カメラで調べてもらったが、「もう日が落ちていたので、タクシーのナンバーをはっきり読み取ることができませんでした」。楊さんはレシートを受け取っていなかったし、車のナンバーも覚えておらず、もう何の打つ手もなくて、すっかり諦めてしまった。警官は出来る限りのことはすると彼を慰めてくれたが、楊さんは金がなくなったからには、もう戻って来ることはないだろうと思っていた。
合肥市運輸管理所の係員によると、彼らは陳さんが届けてきた現金を受け取った後、すぐに合肥市公安局指揮センターに連絡し、金を失くしたと届け出ている人はいないかどうか訊ねた。ちょうど楊さんからお金を失くしたという届け出を受け取っていたために、確認した後、お金を入れた袋は合肥市高新派出所に届けられた。
こうして、見つける手立てをすべて失っていた楊さんは、警察からの連絡を受けた。29日午後、タクシー運転手の陳安明さんと安徽大衆出租車有限公司の責任者が高新派出所にやって来た。彼らが見届ける中、楊さんは10万元の現金を受け取った。警官の手からお金を受け取った時、楊さんはとても感激し、「まさか失くしたお金が戻って来るとは。こんなことはテレビの中でしか起こり得ないと思っていましたが、実際に自分に起こってみると、良い人はわれわれの身近にいるものなんだと思いました」と語った。
陳安明さんは今年48歳で、合肥でタクシーを運転して十数年になる。「以前にもスマホや現金などの落とし物がありましたが、みなすぐに落とし主に返しました」と彼は温厚に微笑みながら言った。「こんなにたくさんのお金を拾っても、私はまったく心を動かされません。私のものでないものは、絶対に受け取ることはできません」。(安徽日報)
人民中国インターネット版 2019年11月4日