中山大学、中国科学院昆明動物研究所、国家生物情報センターとシカゴ大学などの中国内外の機関の研究者は、「アジアの新型コロナウイルス株が最も早く人々の公衆衛生への注目を喚起したものの、2019年秋より前に新型コロナウイルスがすでにアジアと欧州で緩やかに拡散していた。両地域のウイルスが競合した結果、2020年4月の段階で欧州株が完全にアジア株に置き換わった」ことを発見した。関連する研究成果はこのほど、「National Science Review」に掲載された。科技日報が伝えた。
ウイルスの起源と感染拡大については、「ウイルス起源地」と「感染拡大地」という2つの異なる概念を区別する必要がある。ヒトやイヌ、被子植物などすべての生物の起源には、往々にして果てしなく長い進化の過程がある。生物的な特徴はこの過程において徐々に形成される。
ウイルス起源地は人の少ない、動物宿主の生息地であるはずだ。ウイルスはここで動物宿主と「軍備競争」を展開する。その後、ウイルスが進化・成熟し、免疫を持たない人々に拡散する。一方、感染拡大地は、正確に言えばウイルス起源地とは異なる。これは感染拡大地の人々がこのウイルスに対して免疫力を持たず、人々が事前にそのウイルスに接触していなかったからだ。
簡単に言えば、ウイルス起源地はウイルスが果てしなく長い過程において、徐々に動物から人類へと感染するための一定の条件を満たさなければならない。現在のところ、新型コロナウイルスの起源地に関するはっきりした科学的証拠と結論が出ていない。
人々の健康という視点から見れば、本当に重要な問題はウイルスの起源ではなく、その感染拡大だ。ウイルスは起源地を離れた後、感染拡大を開始する。最初に最も注目されるのは初めて感染が発生した場所、つまり初めて正式に感染が報告された場所だ。だがウイルスは起源地から複数の地域に拡散し、感染症を引き起こした可能性が高い。
過去の研究では、1株ずつのウイルス分析に焦点が当てられていた。ウイルス株の数が多く、数百万本の配列があり、それを1つずつ調べれば初期の変化を見落としがちだ。今回の研究は変異箇所の研究に焦点を当てた。変異箇所の総数は100未満で、そのためウイルスの初期・中期・後期の変化を把握しやすい。
研究者によると、ウイルスの変化は「突然変異群」が次々に現れる世代交代だ。2020年の年初から2021年末にかけて、新型コロナウイルスには少なくとも5波の突然変異群があった。すべての波が新しい変異株によって引き起こされた。
2020年年初の第1波「D614G突然変異群」は非常に特別で、今回の研究の注目点でもある。この突然変異群の4つの変異箇所(以下は「DG組突然変異」)はヒト感染後も消えていないどころか、逆に感染症全体が拡大する基礎となった。
さらに重要なことは、2020年の年初に感染拡大が始まった当初、DG組突然変異がすでに欧州の主要なウイルス株になっており、2019年9月の段階でイタリアで発見されていたことだ。DG組突然変異は2020年3月までに中国で見つかっておらず、アジアでも極めて珍しかった。
そのため新型コロナウイルスは早期において、アジアと欧州で別々に拡大していた。DG組突然変異は欧州で発生し、さらに世界に拡散した。その後また4波の新たなウイルス株の感染拡大があった。直近のデルタ株を含めて、そのいずれもDG組突然変異株の持続的な進化によるものだ。新型コロナウイルスの流行と変化の過程では、変異株の世代交代が複数回発生しており、今後さらに置き換わりが進む可能性もある。
「人民網日本語版」2021年12月30日