「一帯一路」で日中関係を深化

AIIBインターナショナルアドバイザー鳩山由紀夫(談)

 

 

現在AIIB(アジアインフラ投資銀行)特別顧問を務める鳩山由紀夫元首相は、昨年に引き続き、4月下旬に北京で行われた「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに参加した。「一帯一路」構想始動から6年、一貫してその進展を見守り、AIIBでの実務経験を経た立場から、本誌の取材に応じてくれた鳩山氏は「一帯一路」を高く評価。外部による数々の疑念の声へ答えるとともに、アジア全体から世界へと視界を広げ、「一帯一路」に積極的に参加すべきと呼び掛ける。

着実に実績を上げる「一帯一路」

私は習近平主席が2013年に「一帯一路」を提唱した当時から、非常に面白い構想だと思っていた。「一帯一路」は{いにしえ}古の陸と海のシルクロードを新たなバージョンに変え、さらに周辺地域のインフラ整備を行いながら地域を発展させていこうという試みで、非常に好感を覚えた。

それから今に至るまで、「一帯一路」に対してさまざまな声が上がっているが、着実に世界の中で周知され、多くの国々が賛同してきたと思っている。実際、AIIBのインターナショナルアドバイザーパネルのメンバーの会合に行くたび、参加国や地域が増えてきていることからも、世界の多くの国や人々から好感をもって迎えられ、着実に実績を上げていることが見て取れる。「一帯一路」は港湾や道路、あるいは鉄道などのインフラ整備に特化しているのが特徴だ。それぞれの地域が必要としているインフラ整備に、中国がリーダーシップを取って整備に当たるのは素晴らしいことだと思っている。

中国は決して覇権主義を取らない

急速に発展する中国に対し、他の国々からはジェラシーを含めた「やりすぎ」との声も聞かれるし、「借金漬けにして港を奪ってしまうのでは」というような批判があることも知っている。いささか極端な例ではあるが、これは「ゾウとアリ」のようなことなのかもしれない。ゾウが少し動くと他の動物は緊張する。「巨象」中国の一挙手一投足に、他国は戦々恐々としてしまうのだ。資本主義の国々が社会主義国特有のシステムの違いに警戒感を抱くのもまた事実だ。今までは「欧米」対「中ロ」のような構図での批判が多かった。そうした批判に対し中国は、決して植民地主義ではない、決して覇権主義を取らないと信じてもらえるよう行動すべきだろう。

私は習近平主席に何度か会っているが、「中国はどんなに大きく強くなっても覇権主義は取らない」「万里の長城のように、防衛はするが攻撃に中国の力を使うつもりはない」と再三言われていた。これはまさに「一帯一路」構想にも当てはまる。中国が行っていることは決して覇権主義ではないと信じてもらえる日がいずれ来ると、私は信じている。

AIIB加入の早期表明を

今までは欧州諸国や日本などが財政的に厳しい場合、米国の協力でさまざまな事業を進めてきたが、今回「一帯一路」にイタリアが加わったことは、その公式がすでに変わってきつつある事実を示した。今後は発展して大きくなった中国に対していかに協力的であるかが、各国の発展にとって重要になるだろう。

イタリアの「一帯一路」加入を見て、多くの日本人は米国と一定の距離を保ち、中国との各種協力関係を構築することが自国の発展にプラスだということを理解し始めている。それが安倍首相を動かしたのだろう。昨年、李克強首相が来日するまで、日本は「一帯一路」にもAIIBにも非常に後ろ向きだったが、昨年になって安倍首相は「一帯一路」協力への意向を表明した。私は日本と中国の経済的な親密度は、「一帯一路」への協力や第三国協力で深まっていくと思うし、深まっていくようにしなければいけないと思っている。「一帯一路」が現実になっていくよう、しっかりとステップを踏んで協力を行ってほしい。

よって私は、日本もAIIB参加への早期表明をすべきだと思っている。参加表明をしないのは米国を気にしているからだろうが、私はAIIBで実務を行うことで、日本が懸念するような問題を抱えている組織では決してないと明確に理解している。だからこそ、安倍首相には決断をしていただき、「一帯一路」への協力、すなわちAIIB参加というメッセージを出してもらいたいと思っている。これが順調にいけば、日中の第三国協力への姿勢が当然出てくるだろうし、協力するほどにお互いの信頼関係が高まる。そうすれば軍事的な脅威もなくなっていく。そんな方向性をもって日中両国が将来に向け進んでほしいと期待している。

「友愛」の精神で平和構築

「一帯一路」構想について初めて聞いたとき、私が唱える「東アジア共同体」と方向性が同じだと感じた。第1回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの際に習近平主席は、「『一帯一路』の目的は第1に平和の構築、第2に地域の繁栄」と明確に言っている。

私が提唱する「東アジア共同体」は経済協力が最終目的ではない。経済協力と発展により地域メンバーの相互信頼を深めることで、地域全体が不戦共同体になり、二度と紛争を起こさない地域にすることに重きを置いている。ではどのような装置をもってすればこれが実現できるのだろうかと考えた場合、それはすなわち習近平主席が再三強調している「人類運命共同体」の構築であり、平和を目的とする大きな構想である「一帯一路」の実現である。習近平主席の気高い理想に対し、私たち「東アジア共同体」もその一部として協力させていただければと願っている。

「一帯一路」構想は、「友愛」の理念で成就してほしいと思っている。私の言う「友愛」とは、論語の「仁」や「{じょ}恕」と同じものだ。「友愛」の精神をもって近隣諸国との平和構築に向け、信頼関係を高めて平和構築を行う努力をしてもらいたいと思っている。よって私は「一帯一路」国際協力サミットフォーラムで、「一帯一路」構想は「友愛」の理念にのっとったアジアの誕生を促すものであってほしいと提言した。(聞き手編集/于文)

 

人民中国インターネット版 2019425

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