「一帯一路」と新しい日中関係

横浜国立大学名誉教授 村田忠禧(談)

 

 

2013年に習近平主席が提唱した「一帯一路」構想から、すでに5年余りの歳月がたったが、国際社会ではいまだに賛否両論が続いている。新たなデータからその真意に迫り、隣国日本の取るべき態度を改めて探ってみたい。

21世紀の「南南協力」となることに期待

昨年、私は『人民中国』のインタビューで、「『一帯一路』と『人類運命共同体』は中国による改革開放の世界版だ」と語ったが、新たに出てきた数値がそれを裏付けたようだ。

19年1月までに中国との間で「一帯一路」協力文書にサインした国は121に達するというが、その内訳からは興味深い事実が見えてくる。アフリカが37、アジアが35、欧州が24、オセアニアと北米が各9、南米が7という割合で、アフリカが最も多い。これらの国々を締結した文書の種類ごとに色を塗っていくと、陸のシルクロード、海のシルクロードというベルト(帯)のようにつながるイメージより、形や色、大きさがさまざまなパネルで地球が覆われているかのように見えるだろう。

アフリカにアジアを加えると72で全体の60%を占め、北米や南米との結び付きも生まれてくるなど、世界中の発展途上国から歓迎され、一緒に参加し、共に豊かになる世界をつくろうとする動きが拡大しつつある証拠である。そのような地球規模での協力や共同作業によって、共に豊かになる世界をつくっていこうとする行動のけん引役として、中国が重要な役割を果たしている。

発展途上国は国家としての数は多いが、それぞれの国の総合国力は弱く、個別的に先進国に対応するとなると、先進国のやり方で押し切られてしまう恐れが充分にある。発展途上国の要求を上手にまとめて共通の声として取り上げていくことが可能かどうか。まとめ役としての中国の手腕、力量が問われると思う。

発展途上国には内政面でいろいろ問題を抱えている国が多い。中国の改革開放の歩みそのものが模索と総括の積み重ねの中で勝ち取ってきたものであることを率直に伝え、そこから教訓やヒントを得ることも大切なのではないか。

「人類運命共同体」という理念を単なるスローガン、看板に終わらせるのではなく、具体的な行動を支えていく精神として根付かせることが大切と思われる。これはまさに21世紀の「南南協力」といえるであろう。

一方、欧州を見ると、東欧はおしなべて「一帯一路」に前向きな対応であるが、西欧はギリシャ、ポルトガルのみという状況が続いてきた。しかし今年3月に習近平主席がイタリア、モナコ、フランスを訪問し、信頼と協力の関係を築く上で大きく前進した。特にG7(先進7カ国)メンバーのイタリアとの間で「一帯一路」構想についての協力関係が強化されたことは注目に値する。

実際の動きとして、中国と欧州を結ぶ「中欧班列」という鉄道網が整備され、利便性、経済性が理解されて運行回数が急速に増大している。

その増加ぶりには目を見張るものがあり、日本の企業もこの大陸横断鉄道を使った物流を手掛け始めている。「一帯一路」で提唱している「開放性、平等性、ウインウイン関係の追求」を堅持して着実に経済建設を進めていけば、仲間に入ろうとする企業や国は必ず増えていくであろう。

 

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