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9月25日、「神舟7号」を打ち上げる前に、胡錦濤国家主席(右)は乗組員の翟志剛、劉伯明、景海鵬の3人に手を振ってあいさつした | 2008年9月25日、中国の有人宇宙飛行船「神舟7号」が甘粛省の酒泉衛星発射センターから成功裏に打ち上げられた。そして3名の宇宙飛行士(翟志剛、劉伯明、景海鵬)は宇宙空間に68時間滞在し、宇宙遊泳も行なった。中国の宇宙飛行士が宇宙遊泳をしたのはこれが初めてであり、中国有人宇宙飛行が新たな段階に進んだことを示している。(文中敬称略)
初の宇宙遊泳
すでに中国が打ち上げに成功した「神舟5号」「神舟6号」と比べ、「神舟7号」の明白な特徴は危険性が高いことである。これまでは主な危険は打ち上げと飛行船の帰還の段階に集中していたが、今回はさらに高い危険性をもつ船外活動が加わった。
船外へ出る、実験材料を収集する、宇宙遊泳する、船内に戻るなどのステップは、一見簡単そうに見えるが、実は大きな困難と危険性を伴う。とりわけ初めて船外活動の任務を担う中国の宇宙飛行士は、地上ではただ水槽内における無重力状態の模擬訓練を受けただけだ。水槽内では、飛行士の身体と宇宙船はだいたい平行になっているが、宇宙空間では、飛行士の身体と宇宙船の角度が大きいため、あたかも飛行士が宇宙船の上に逆立ちしているように見える。だから、宇宙飛行士は宇宙服に付いている安全縄のフックを軌道船外の手すりに引っ掛けて、自分の動き方を巧みに調整しながら慎重に前へ進まなければならない。
普通の人から見れば、中国の宇宙飛行士の船外活動は27日の午後から始まったように見える。しかし、わずか十数分間の短い船外活動のために、宇宙飛行士たちは26日午後からさまざまな準備を開始していた。
まず軌道船(軌道モジュール)の壁に固定されている宇宙服の入った包みを開け、船外活動用の宇宙服を組み立てた。これらの操作に約14時間近くかかった。その後、検査と訓練を行なわなければならない。すべての手順を予行演習し、また軌道船にある低圧に耐えられないすべての物品を帰還船(帰還モジュール)に移した。この段階で宇宙飛行士の体力の消耗はすでにかなり大きかったが、もっとも難しく、もっとも危険な船外活動はこれから始まった。
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中国の有人宇宙飛行船「神舟7号」が宇宙を飛行するイメージ | 9月27日午後4時41分、宇宙飛行士の翟志剛は軌道船のゲートを開いて上半身を外へ突き出し、自分の身に付けている安全縄のフックを宇宙船の手すりにつなぎ、そしてカメラに向かってゆっくりと手を振った。彼の後ろは真っ暗な宇宙と青い地球だった。翟志剛は19分35秒間、総計9165キロに及ぶ宇宙遊泳を完成した。
世界のメディアも高い評価
「神舟7号」宇宙船システム総設計師の張柏楠によると、「神舟7号」は「神舟6号」と比べ、三人の宇宙飛行士を乗せて船外活動を行えるようかなり改良されているという。しかも、宇宙船のシステムの設備はすべて中国製であり、これはいままでにないことであった。これらの技術的設備の中でもっとも注目を集めたのは、宇宙飛行士が宇宙遊泳するときに着用する宇宙服である。
この一着120キロの船外活動用の宇宙服は、一つの独立した有人宇宙物体でもあり、8000キロの宇宙船と同じ機能を、場合によってはさらに優れた性能を備えていなければならない。しかし、研究開発に当たった中国の技術者たちにとっては、この宇宙服の九十数個の重要部品のうち、完成している部品は一つもなく、すべては「ゼロ」から突破しなければならなかった。
米国やロシアの経験では、技術的蓄積が少ない場合、船外活動用の宇宙服を開発するには少なくとも7~10年間かかる。しかし、中国の宇宙服「飛天」は、2004年7月に正式にプロジェクトがスタートしてから2008年初頭に実用段階に入るまで、わずか4年間しかかからなかった。
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中国の国旗を掲げながら宇宙遊泳する翟志剛 | 「飛天」の胴体部分はアルミニウム合金作りで、厚さはわずか1.5ミリ、120キロパスカルの圧力に耐える能力がある。宇宙服の表層の防護材料はプラスマイナス100度以上の温度変化に耐えられる。宇宙服に装備されている酸素ボンベは、安全性を確保したうえで、できる限り多くの酸素を充填した。これは国際的に見ても先進レベルの技術に属する。
ただ一つ残念なことは、「飛天」は使い捨ての製品であり、宇宙飛行士が任務を終えた後、軌道モジュールといっしょに落下する。米国やロシアの宇宙服は繰り返して利用が可能で、寿命は15年と設計されている。中国の宇宙服の独自開発は、まだまだ長い道を歩まなければならないのである。
一着3000万元の宇宙
今回の「神舟7号」の打ち上げは世界各大手メディアの注目を集めた。発射センターには初めて米国や日本など各国のメディアが招かれ、現場から報道した。
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船外へ体を突き出した中国宇宙飛行士・翟志剛はカメラに向かって手を振った | 打ち上げが成功した後、米国の週刊誌『ワシントン・オブザーバー』は次のように論評した。「中国の宇宙技術の発展は米国だけではなく、全世界に深い印象を残した。『神舟7号』は平和の使命を担って打ち上げられたのであり、軍事技術はない。中国は宇宙分野で成果を上げたが、まだ啓蒙・学習の段階である。宇宙開発の分野では中国はまだ『少年』と言っていいだろう」
スペインの『エルムンド』紙は、三人の宇宙飛行士を宇宙に送り出したことは、中国の宇宙事業の「量と質の二重の飛躍」を示していると評価した。中国にとって、今回の宇宙空間での実験は宇宙ステーション建設の中長期の目標に向けての第一歩であるからだ。
また米国の『クリスチャン・サイエンス・モニター』紙は、「神舟7号」の打ち上げは世界が宇宙分野で協力する時代に入ったことを証明していると評価した。現在、宇宙は米ロという二人のプレーヤだけではなく、宇宙探索や地球観測の分野で、世界各国も力をつけている。問題は、いかに協力するかである、と同紙は指摘している。(高原=文 新華社=写真提供)0811
人民中国インターネット版 2008年11月6日
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