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『レッドクリフ』と三国志

 

三国志ブームと三国志検定

『レッドクリフ  PartⅠ』趙雲が幼主の阿斗を救う

©2009, Three Kingdoms, Limited. All rights reserved.

これまで日本では、何回か三国志ブームがあった。その背景には、横山光輝の漫画、人形劇三国志、コーエーのゲームなど、三国志を扱ったエンタテイメントの流行がある。今回のブームのこれまでとの違いは、映画『レッドクリフ』という日本の外から来た三国志をその背景とすること、そして何よりも日本と中国の相互の感情が決して良いとは言えない時期に起こったことにある。

いまやアメリカを抜いて日本の最大貿易相手国となっている隣国に対して、その文化や歴史を十全に理解することなく、現代社会の混迷ぶりだけを捉えて、批判の対象とすることはいかがなものであろうか。日本も高度成長期には、食の安全や公害に苦しんだ時期もあった。それを乗り越えた技術や知識を中国に粘り強く伝えていくことも必要であろう。そのためには、中国を理解しなければなるまい。中国製品の危険性や安さにではなく、中国の文化に興味を抱く1つの契機として三国志はある。

三国志を日本と中国との架け橋の1つにしていきたい。そうした思いで、われわれは日中関係が悪化する2006年に三国志学会を設立した(http://www.daito.ac.jp/sangoku/)。三国志学会は、学術雑誌を定期的に刊行し、国外からも研究者を招聘する学会であると同時に、研究者ばかりでなく、広く一般の方々に門戸を開いている。一人でも多くの方に参加してもらい、この学会を盛りあげていきたい。

『レッドクリフ PartⅡ ―未来への最終決戦―』

8月5日 DVD&ブルーレイ発売!!コレクターズ、エディション¥6,090(税込)

10,000セット限定生産スペシャル・ツインパック他、6形態同時発売

公式HP:www.redcliff.jp

発売元:エイベックス・エンタテインメント

販売元:エイベックス・マーケティング

©2009, Three Kingdoms, Limited. All rights reserved.

そうした思いから関わっているものが、昨年から始まった三国志検定である(http://www.3594kentei.com/)。三国志検定運営委員会は、「三国志の知識をどの程度知っているかを計るという単なる試験の提供だけではなく、二次的、三次的に、イベント、キャンペーンなどを展開し、知らなかった知識をのちに学習する機会の創出や、家族、友人との間でコミュニケーションのきっかけ作りなど、三国志のさらなる盛り上げを図っていく」と宣言している。こうした考え方に共感して、昨年、第1回検定として実施された2.3級の試験の監修を行った。その結果、3000人を超える老若男女が集まり、3級は約80%、2級は約30%の合格者を出した。2級はかなりの難問揃いであったが、日本の三国志マニアの力に改めて驚かされた。今年の7月12日には、第2回検定として、2級・3級のほかに、1級および『レッドクリフ』の公開を記念して赤壁検定が行われる。多くの方々の参加を期待したい。

昨年の三国志学会にお招きした、中国の『三国志演義』研究の第一人者である四川省社会科学院の沈伯俊教授は、三国志検定の実施にたいへん興味を持ち、普及のためのすばらしい方法である、と資料を中国に持ち帰られた。もともと三国志検定は、中国、韓国、台湾などの国と地域でも、日本と同じ問題で実施したい、と構想されていた。三国志が東アジアの文化交流の架け橋として、長く愛されていくことを願ってやまない。(『レッドクリフ』日本語訳・三国志検定監修大東文化大学教授 渡邉 義浩=文)

渡邉 義浩(わたなべ よしひろ)

1962年、東京都大田区生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了、文学博士。現在、大東文化大学文学部中国学科教授。

三国志学会事務局長(http://www.daito.ac.jp/sangoku/)。
著書に、『後漢国家の支配と儒教』(雄山閣出版、1995年)、『諸葛亮孔明−その虚像と実像』(新人物往来社、1998年)、『図解雑学 三国志』(ナツメ社、2000年)、『図解雑学 諸葛孔明』(ナツメ社、2002年)、『三国志の舞台』(山川出版社、2004年)、『三国政権の構造と「名士」』(汲古書院、2004年)、『図解雑学 三国志演義』(ナツメ社、2007年)、『三国志研究入門』(日外アソシエーツ、2007年)、『図解雑学 宗教から見る中国古代史』(ナツメ社、2007年)、『全訳後漢書』(汲古書院、2001年〜、全19巻の予定)などがある。

 

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