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「私は南開を愛している」

──90周年を迎えた南開大学

 

2009年、天津南開大学は創立90周年、南開学校創立105周年を迎えた。
中国の国公立大学が100年あまりの歴史しかないのに対し、
私立学校として発足した南開大学が100年続き、中国の名門校となったのは奇跡といえるだろう。
そんな創立記念事業の準備の進む南開大学のキャンパスに、足を踏み入れた。

 

天津に南開大学あり、南開大学に張学長あり

キャンパスにある張伯苓学長の彫像

南開大学の歴史を振り返れば、ある人物の名といつも密接に結びついている。南開大学の創立者であり、30年にわたって学長の職にあった張伯苓(1875~1951年)である。また、張学長の傍には、影が形に添うように、厳修(1860~1929年)がいた。厳修は字は範孫、原籍は浙江省であったが、有名な塩商人であった祖先が、天津に移った。南開大学の創立期に、常に経済面で張伯苓を支えた。そのため、南開の人々は彼を敬い、「南開の父」と呼んでいる。

1894年、北洋水師(水軍)で実習中だった張伯苓は中国の戦敗を目の当たりにし、強烈なショックを受けた。彼はこの戦敗経験から、「教育で国を救う」という信念を確立するに至った。1904年から、「文をもって国を治め、理をもって国を強め、商をもって国を富ましむる」を主旨とし、厳修とともに、南開小学校、南開女子中学校、南開中学校、南開大学、及び南開経済研究所と応用化学研究所を創立、南開教育システムを完成させた。創立当初の南開大学の規模は小さなものではあったが、優れた学術と実行を尊ぶ精神が、社会各界から広く賞賛された。

日本軍の砲火をくぐりぬけて残った創立初期の唯一の建物「思源堂」

1937年、南開大学は日本軍の爆撃に遭い、何もかもを奪い尽くされ、キャンパスは廃墟となった。そのため大学は湖南省長沙に移転した。間もなく、雲南省昆明に再移転し、北京大学、清華大学とともに西南聯合大学を組織した。8年間にわたる聯合大学は、極めてつらく苦しい日々に2500人あまりの卒業生を育てた。その中から、中国科学院院士78人、中国工程院院士12人及びノーベル賞受賞者2人が輩出するという非常に輝かしい成果をあげている。

現在、南開学校はすでに105年という時を刻み、南開大学の歴史も90年の歳月を歩んできた。大学創立当初は文、理、商の3学科のみで、学生もわずか73人に過ぎなかったが、現在の南開大学は20以上の専門学院(学科)で文学、歴史、哲学、経済、法律など12の学部をカバーしている。在籍する学部生は12000人余り、修士課程は約6000人、博士課程は約2000人となっている。南開大学のキャンパスの敷地面積は1620平方キロ、建築面積は1167平方キロに及ぶ。グローバリゼーションの影響も拡大し、現在では100以上の国と地区の約200の大学および学術機構と提携関係を結んでいる。

南開の道、南開の精神

今年も多くの学生たちが卒業してゆく。楽しげに記念撮影をする学生たち

兵庫県出身の日本人留学生・井上直樹さん(27歳)は、社会学部に在籍している。2006年から2007年までの10ヵ月間、歴史、社会、中国語など専門の異なる学生8名と共に、『天津の留学生の歴史と現状』をテーマにした調査プロジェクトを完成させた。彼らはまず、天津の約10カ所の大学の留学生1000人余りを対象にアンケート調査を行った。さらに6名の留学生にインタビューし、留学生の中国文化に対する適応度、言葉や生活面などの問題を調査し、約40000字の学術レポートを完成させた。

20世紀後半より、南開大学でも南開中学校でも「社会観察課」を設け、学生たちを集めて、商工、文化教育、マスコミ、司法、軍隊及び政府各界から貧困住民エリアまで、全面的に社会に接することで、学生の社会の現実に対する認識不足という欠点を補ってきた。実践力を備えた人材を育て、社会生活に学ぶことによって、社会のニーズと互いに結びつける。これが南開の伝統である。

「允公允能 日新月異(まことに公にしてまことに能、日進月歩)」

これは張伯苓学長が打ち出した「国を愛し、公衆を愛する道徳や、社会に奉仕する能力を有する学生を養成する」「公にのみ従うゆえ、利己を捨て、ばらばらであるものを凝集し、団体を大切にし、公のために犠牲となる覚悟を備える」という意味の校訓である。「公のため」という教育理念は南開の100年の歴史を貫き、この学校に永遠の創造力と精神力を与え、代々南開の学生を啓発してきた。

南開は人材の育成を重視し、細かいところに着眼し、具体的なところに着手することを重視する。張学長が学校の入り口に設置した全身鏡は、歴代の学生たちの心に深く刻みこまれている。鏡には「顔を洗い、髪を剃り、服を正し、ボタンを留めること。頭はまっすぐ、肩を揃え、胸を張り、背筋を伸ばすこと。気性は驕らず、怒らず、怠らず。顔は和やかに、静かに、淑やかに」という、厳修による「姿勢と立ち振る舞いに関する格言」が刻まれている。南開の学生ならではの独特の気質は、このように長い歳月にわたって一歩一歩積み重ねることにより、知らず知らずのうちに養われてゆくものなのである。

 

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