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中国では現代社会にとけこむ

沈暁寧=文

中医は5000年近くの歴史を持つ。中国では紀元前20世紀の頃からすでに医療用の薬酒や煎じ薬が作られていた。孔子の編集といわれる『詩経』は中国に現存する文献の中で薬に関する記録が収載されている最古の書籍である。

病院以外にも、多くの大手薬局などで患者を診療する中医師が存在する(東方IC)

自然から生まれ、人体に対して全体的に病因・症状などを分析し、治療を施す中医の体系は歴史とともに発展し、中国人の医療や保健における大切な手段となっていて、現在は世界各地にも広がり、人類の幸福に貢献している。今日、現代医療の科学技術の発達に伴い、中医は傷病治療分野でいっそう独自の貢献を果たしている。

今も現役で活躍する中医

「白朮、黄耆、銀花を各6グラム、蘇葉3グラムを煎じて飲むと、新型インフルエンザに対する予防効果がある」。これは2009年11月に新型インフルエンザが中国で流行した時に、北京市中医管理局が市民に公表した予防用の漢方薬の処方だ。

いまも昔ながらの方法で漢方薬を調合している店員(新華社)

その前の7月、フランスの国際ニュース専門チャンネル「France24」の記者は広東省中医病院で追跡取材を通じて、漢方薬で治った新型インフルエンザ患者を目撃した。同テレビ局の記者は、「実に不思議なことです。これらの草花にあの『タミフル』と同じ治療効果があるのです。西洋医薬でなくとも、中国の人々は伝統的な漢方薬を使って、確かに新型インフルエンザを治しているのです。私たちはそれをリアルな映像を通じて視聴者に伝えたいのです」と語った。

これまで、中医は疾病治療分野での探究を連綿と継続してきた。三世紀初め頃、後漢の中医学者である張仲景は著書『傷寒雑病論』で人工呼吸、薬物浣腸、胆道回虫症という三つの「世界初」の治療法を記載している。同じく後漢の「神医」である華佗は漢方薬を用いて、麻沸散という世界初の麻酔剤を調合している。『三国志演義』には、華佗が麻沸散を用いて、関羽や曹操の傷病を治療しようとしたエピソードが見られる。明の隆慶年間(1567~1572年)には、中医師は天然痘患者の膿を健康者に接種することで、天然痘を予防するようになっていた。こうした方法は次第に朝鮮や日本、ロシア、トルコ、英国など欧州やアジアの諸国に伝わり、そして百数年後、英国人ジェンナーがより安全な牛痘接種という天然痘予防法を発明する。

今でも中医は依然、臨床医学分野の最前線で国際的に活躍している。新型インフルエンザの予防・治療でも、効果的で低コストの漢方薬の処方を提供したし、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)との闘いにおいては、解毒・解熱効果のある板藍根などの漢方薬が一時供給が追いつかないほどの人気商品となった。癌やエイズなど現代医学の未解決の難題に関しても、中医は西洋医学と協力して、病状悪化の抑止、患者の苦痛の軽減などにおいて積極的な役割を果たしている。

進化する中医

この百年以来、西洋医学の普及によって、中国では中医と西洋医学の共存時代を迎えている。日常生活において、急病や重症の場合、人々は即応性と即効性の高い西洋医学を選ぶことが多いが、慢性病や軽症、特に養生保健においては、身体全体の機能を調整・改善できる中医が多くの人々の関心を集めている。

1956年、中国政府は医療衛生事業において、中医と西洋医学を結合させ、両者の長所を吸収することで、中国的特色を持った新しい医学、薬学を確立しようとした。五十数年の実践を通じて、中国伝統医学の理論的基礎の上に、西洋医学の診療手段を取り込み、ハイテク医療技術を導入した近代的中医体系が初期段階レベルの確立をみた。

国家中医薬管理局の統計によると、現在、中国には高等レベルの中医学院が47校、中医師が40万人以上存在する。2009年8月、中国政府は初の審査を実施して、30名の優秀な中医師を選出・表彰した。その一人である広州中医薬大学終身教授の鄧鉄濤氏は、「中医の継承・発展は奥深い中華文化に立脚して行なければなりません。伝統を継承しながら、大胆に新しいものを打ち出す若い人材を育成してこそ、中医の潜在能力を開発・発展させ、世界の人々に幸福をもたらすことができると思います」と語った。

2009年11月、重慶市政府から無料で市民に配布された新型インフルエンザ予防用の漢方薬(東方IC)

現在、中医は世界中に広がり、特にその養生保健理念や按摩、推拿、鍼灸といった独自の治療法はますます多くの国や人々に受け入れられている。一方、中国の近代化が進むにつれて、先祖代々伝承されてきた民間中医療法は部分的に徐々に失われつつあり、医学専門家が憂慮する問題となっている。近代化モデルへの適応と数千年来蓄積してきた英知と特色の維持。これは中医がいま抱える問題であり、中国政府と社会がともに直面している問題でもある。

 

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