いつのころからか、年末にコメディー映画を見て、心の底から大笑いすることが「年越しの娯楽」として欠かせなくなっている。
昨年末も例外ではなかった。11月末から『一九四二』(戦争と飢饉に見舞われた農民たちが出会う悲劇を描いた作品)、『王的盛宴』(項羽と劉邦の「鴻門の会」を新しい解釈で映画化した作品)などの大作が上映されたが、どちらも重苦しく、古臭いテーマで、リラックスしたい気分の観客を満足させることはできず、ますます本物のコメディー映画に対する期待が高まっていた。まさにそうした時に、正月映画市場にダークホースが飛び込んできた。
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大当たりだった正月映画のポスター(東方IC) |
12月に入って、低予算の中国コメディー映画『人再囧途之泰囧』の売れ行きがウナギ登りに伸び、上映4週間で11億元(1元は約14円)を突破する奇跡を生み、中国映画史上の記録だった『阿凡達』(日本語題はアバター)の14億元にあと一歩だった。この勢いは「逆天(天が引っくり返った)」という言葉で形容されたほどだ。映画の題名に出てくる「囧」はちょうど「orz」に相当する、失意や落胆、非常にきまりが悪いことを意味するネット用語。
筆者もクリスマスイブに友人とこの映画を見に行った。通俗的過ぎると批判する人もいるが、私たちの考えは至って単純。面白ければいい。初めから終わりまで、映画館内は爆笑また爆笑で、筆者も笑い過ぎて涙が出たほどだった。
ストーリーは、仕事上のライバルに追いつめられた中年ビジネスマン(徐錚)がタイ旅行中に知り合った善良な農村青年(王宝強)と繰り広げる珍道中。脚本・監督と主演を全部兼ねた徐錚は筆者が大好きな俳優で、苦労を重ね、懸命に生きる無名の小人物を演じるのが上手だ。一方、王宝強が演じる青年は大した望みは持っていないが、全身エネルギーのかたまりで、「ちょっと抜けてる田舎の若者」そのものの雰囲気が伝わってくる。
映画の主人公の生活は仕事オンリーで、家庭を顧みず、プレッシャーが大きく、幸福指数は極めて低そうだ。きっと都会生活をしている観客には彼と自分の姿がダブって見えるだろう。また、「田舎の若者」からは昔懐かしいほんわかした温かみを感じるだろう。こうした土の香りが漂う人物やストーリーだから、その雰囲気が観客席に伝染するのかも知れない。
最後にひとこと。このようなコメディー映画は仲のよい友だちを誘って見に行くのが一番。周りの気分にあおられてもっと大笑いできるからだ。
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編集部記者・孫雅甜
1981年、山東省生まれ。2007年、北京外国語大学日本学研究センター日本文化コース卒業、同年入社。「交流&イベント」など担当。趣味は映画鑑賞、旅行。 |
人民中国インターネット版 2013年4月10日 |