『舌尖上的中国』(A Bite of China/舌の上で味わう中国)シーズン2
井上俊彦=文
一昨年話題を呼んだ『舌尖上的中国』(A Bite of China/舌の上で味わう中国)のシーズン2(以下『舌尖上2』と略す)が、4月18日から放送され、前作にも増して大きな注目を集めている。
この番組は、中国中央テレビ局(CCTV)が、2つのチャンネルで毎週金曜日の夜9時台、10時台に放送している1時間のドキュメンタリー番組で、毎回違ったテーマで中国の食文化を幅広く紹介するものだ。単なるグルメ案内ではなく、クオリティーの高い映像で美食とそれにかかわる人々の苦労や喜びを紹介し、同時に中国伝統食文化の幅広さと奥深さを描き出している。一方、個人の物語を通じて食と家族、食と社会のかかわり、ひいては現在の中国社会も生き生きと浮かび上がらせており、各方面から高い評価を受けている。シーズン1は全7話だったが、今回のシーズン2では全8話が放送される予定となっている。
番組は、中国各地の美食と、食にかかわる人々の暮らしを追うものだが、画面いっぱいに広がる緑の棚田や黄金色の麦畑、魚網から跳ね上がる魚、せいろから立ち上る湯気、リズミカルに野菜を刻む中華包丁、中華鍋の中で踊る食材など、食をとりまく美しいシーンが続く。夜遅くの番組にもかかわらず、美食が次々とシズル感たっぷりに登場してくるため、番組を見た多くの人が夜食を食べたいという衝動にかられ、特にダイエットに励む女性たちからユーモアたっぷりに批判された。曰く、「深夜報復社会利器」(深夜に社会に報復する道具)。あまりにも美味しそうな画面はもはや反社会的行為のレベルだと言うのだ。微博(中国版ツイッター)を分析した報道によると、テレビ番組を見なくなったと言われる若者たちも、この番組だけは見ようとテレビに回帰しているという。また、「舌尖上的~」という言い方は流行語になり、「~」の部分に地名や国名を入れてご当地の美食を紹介するのが微博で流行した。中には「舌尖上的高校(大学のこと)食堂」といったものまで登場したほどだ。
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