世界に影響を与えた科挙制度
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古代に科挙試験が行われた「考棚」の復元模型。上海嘉定孔子廟にある中国科挙博物館に展示されている(東方IC) |
隋は37年しか続かなかったが、政治、経済、社会制度の面でさまざまな功績を残した。そのうち、試験を通じて官吏を登用する科挙制度は、中国と世界の文明にとりわけ大きな影響を与えた。
隋より前の時代、官僚は家柄によって選ばれ、宗法(家族を中心に血統の遠近によって親疎を区別する一族内の規律・規則)や血族関係の重視から、官職を代々受け継ぐことができた。このため、「上品に寒門なく、下品に士族なし」(貧乏で家柄の低い者はいかに優秀でも高い官職につけず、低い官職に家柄のいい者はいない)と言われた。
隋王朝の社会に対する政治的統制を強め、門閥制度を改めようと、煬帝の大業年間(605~618年)初期に試験で官僚を登用する科挙が初めて実施された。これは、家柄を問わず、成績の良い者を採用する試験だった。以来約1300年にわたって続けられた科挙は、異なった家柄の人々が平等に競争でき、門閥や世襲制度がもたらす人材のレベル低下と腐敗という弊害を取り除き、中央集権を強固にさせ、官僚の素養を向上させた。また、「学問して余力があれば役人となる」の提唱を通じて、社会全体の文化的素養や道徳レベルの向上に役立った。その後の英国の文官任用試験制度をはじめとして世界文明に大きな影響を与えたことから、科挙が羅針盤・製紙・火薬・印刷術の四大発明に続く、中国第五の大発明だと考える人もいる。
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