レベルの高い映画交流を期待
――デジタル映画時代に中国映画は新たな繁栄の時期を迎えています。監督はこの点についてどのような印象を持たれていますか?
滝田 確かにすごいですね。上海国際映画祭に参加した時にシネコンに足を運びましたが、規模の大きさに驚きました。中国の映画館建設は完全に日本を凌駕しており、映画館がどんどん増えていますが、いずれも最新の素晴らしい設備です。スクリーンの効果も素晴らしく、音響も一流です。その上3D上映ができるものばかりです。世界でも最新、最高の映画館はほとんど中国に集まっているのではないかと思っているほどです(笑)。
――何度も映画祭審査員を務められていますが、中国で行われている国際映画祭についての印象はいかがでしょうか?
滝田 中国の映画祭では審査員を非常に重視しています。これは北京もそうです。ホテルから一歩も出ることがなく、今日こうしてインタビューを受けるためにも外出許可を申請する必要がありました。毎日朝から遅くまで滞在先と上映場所を往復するだけで、審査員に真剣に審査する状態を保たせています。比べてみると、東京国際映画祭の審査員の方がややリラックスしています。ここでは、毎日映画を見なければなりません。今日のように休みを申請しても、遅く帰ってからやはり残業でDVDを見なければなりません。全ての時間が映画を高密度に浴びるようになっている感覚です。僕にとってさまざまな映画を見ることは、集中的に学習する良い機会です。今のところ半分見ただけですが、どの作品もみな特筆に値するものばかりです。映画祭に来る最大の収穫は多くの審査員や映画人と交流できることと、大量に異なった文化を背景にした作品に接し未知との遭遇があることです。他人の撮影した映画を見てなぜ自分と異なっているのかを考える。このような刺激は全く新しい啓発をもたらし、とても有益なものです。
――今年、北京国際映画祭では日本映画週間が復活し、監督もゲストとして開幕式に参加されました。今後の中日映画交流についてどのように見られていますか?
滝田 僕が日本の同業者に言いたいのは、みなさん一度北京に来て見てくださいということです。映画製作者は自ら中国に来て、自分の作品がどのように中国の観衆に見られているのか、批判されているのか愛されているのかを感じてほしいのです。映画監督として自分の作品が異なった国で上映され反響を引き起こすというのは、相当に光栄なことです。今後は小さな作品でもいいから、監督の良心を反映した作品、観客に見せる価値のあるものを選ぶよう、作品選定の視野を広げてもらいたいと思います。 将来性ある若手監督の作品を映画週間に持って来られたら、きっと彼らにも全く新しい刺激を与えられると思います。僕はそうした優秀な新進監督を推薦することができます。最も重要なのは彼らが中国に来て同業者と交流を持ち、中国社会について自ら感じることです。今回僕は、中国に多くの日本映画ファンがいること、お互いがますます近くなっていることを感じました。機会があれば、自分の以前の作品を持って映画週間に参加したいと思っています。
――作品がこんなに中国で愛されて、また中国とこのように多くの交流があるようになり、今後中国語作品を撮影したいとは思いませんか? その場合どんなテーマを選ばれますか?
滝田 確かにそうした考えはあります。ただまだ中国を身をもって感じている部分が少なく、どういった要素に共鳴できるか分かりません。人に関する要素かもしれませんし、置かれた状況かもしれません。原作のある作品を撮影するなら、原著の中に自分が共鳴できるものがあるかどうか探さなければなりません。僕は自分が十分に鋭いとは思っていませんから、いろいろな人と付き合ってみて、自分の目で見て、自分自身でふさわしい題材を見つけなければなりません。実は僕と中国との縁は家族に関係があります。父母や妻の親族も、いわゆる満州すなわち中国の東北部で生活したことがあります。彼らはみな僕に多くの中国の素晴らしい印象を話してくれました。例えば地平線のある景色です。島国に暮らす僕は水平線しか見たことがないのです。僕は、父母や妻の親族が若かりしころに住んでいた中国の地を妻と共に訪ねて、時代を超えた体験をしてみたいと思っています。そしてそれが中国で映画を撮る一つの入口になればと願っています。必ず中国で映画を撮ります。 最後に言いたいのは、世界中のどんな人もみな自分の心の中の物語や考え方を持っており、それが表現されることを願っているということです。小説を書くにしろ映画を撮るにしろ、作者たちが努力するのはそれを表現するためです。ですから、監督が良い映画を撮るよう努力し、観客は優秀な映画に注目すれば、われわれの間では必ず共感が生まれるはずです。映画は人と人を結ぶ絆です。この意味において、僕は「映画万歳!」と大声で叫びたいのです。
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滝田洋二郎監督(左)と王衆一総編集長(写真・陳克/人民中国) | |