中国外文局人民中国雑誌社と広州聯普翻訳有限公司が共同で開催した「第2回中日異文化コミュニケーションにおける翻訳実践シンポジウム」が8月24・25の両日、北京で開催された。文化部元副部長の劉徳有氏、人民中国雑誌社の王衆一総編集長、全国翻訳専門資格(レベル)試験日本語専門家委員会副主任を務める北京外国語大学の徐一平教授、中国翻訳協会の修剛副会長、中国国際放送局日本語番組キャスターでベテラン翻訳・通訳者の王小燕氏、ベテラン翻訳・通訳者の蔡院森氏ら、6人の中日翻訳・通訳分野の専門家・学者が出席し、講演を行った。全国からやって来た日本語専攻の教師・学生、中日翻訳・通訳従事者ら計150余人がこのシンポジウムに参加した。
人民中国雑誌社の陳文戈社長はあいさつの中で、「中日関係が正常な軌道に戻るに従い、両国の友好交流事業はまた大きな絶好のチャンスを迎えている。両国の友好交流の大局に貢献するため、異文化コミュニケーションの中で直面する実際的な問題をいかに解決するかは、われわれが検討しなければならない課題となっている」と語った。
あいさつをする人民中国雑誌社の陳文戈社長
広州聯普翻訳有限公司の陳定剛社長が開催者を代表してあいさつを述べた。彼は、「このシンポジウムは中日翻訳・通訳実践の発展を推し進めるためのものであり、将来的に聯普翻訳公司は各方面と手を携え、続けて中日文化交流と中日友好のために努力をしていきたい」と語った。
広州聯普翻訳有限公司の陳定剛社長
劉徳有氏は毛沢東主席・周恩来総理のために通訳を務めた時のエピソードにより、「異文化コミュニケーションの基礎は歴史の理解だ」と強調した。彼はさらに、「翻訳・通訳の道は、形だけでなく実質の相似が貴い」とも指摘した。「翻訳・通訳は異なる言語・文字の再現であるだけでなく、さらには再創作と言えるものだ。実践の中で常に認識を深め、その昇華を実践指導の理論とする必要がある」と語った。
文化部元副部長の劉徳有氏
今回のシンポジウムでは、「異文化」「翻訳・通訳」「実践」という3つのキーワードを巡り、ゲストたちが自分の翻訳・通訳の実践経験に基づき、豊富で詳しい実例を通して、異なる角度から自らの考え方を分かち合ったが、それは独特な見解もあれば、共通するところも多く存在した。
成功した翻訳・通訳とは何か?
翻訳・通訳の成功と失敗をどう判断するかは、外国語学習者や翻訳・通訳者が必然的に遭遇する問題であると言えよう。
王衆一総編集長は、厳復の翻訳理論である「信達雅」に対し、自らの新たな認識を示した際に、「訳文は意味の表現が正確である以外にも、言葉がなめらかで、さらには異なる文化言語環境のもとで、障害のない異文化コミュニケーションを実現させることを重視する必要がある」と語った。
人民中国雑誌社の王衆一総編集長
徐一平教授もまた、「言語と文化は翻訳・通訳の二つの重点である」と語った。日本の講談社の野間文芸翻訳賞選出の際のエピソードを例にとり、翻訳・通訳には唯一絶対の基準はないと説明した。
全国翻訳専門資格(レベル)試験日本語専門家委員会副主任を務める北京外国語大学の徐一平教授
修剛副会長は翻訳・通訳における多くの実例を挙げながら、「交際の効果が翻訳・通訳の成功・失敗を判断する重要な基準であり、交際が成功したか失敗したかの判断基準となるのは受け手である」と指摘した。「翻訳・通訳は中国の声を伝えるための重要な役割を担っており、どのように翻訳・通訳を行うか、伝える内容を受け手の耳に入れることができるだけでなく、さらには頭や心に入れることができるかどうかが、長期的な研鑽が必要とされる課題である」と彼は強調した。
中国翻訳協会の修剛副会長
一人前の翻訳者になるために
王衆一総編集長は、自分の川柳・俳句翻訳の実践を例にとり、異なる文化・言語環境のもとで、いかにして原語の中の掛詞を巧みに訳し出し、異文化コミュニケーションを実現させたかという経験を語った。このほか、しばしばみんなが討議する「帰化」と「異化」という2種類の翻訳手法に対し、彼は独自の見解を披露し、受け入れ効果をもとにして手段を選ぶ必要があることを強調した。
徐一平教授は、『雪国』の多くの訳本を対比することによって、日中翻訳の際にいかにして同形語、指示詞、形容詞、動詞などの要素をよりうまく処理するかについて説明した。
王小燕氏は自らのニュース編集・翻訳と通訳の仕事の現場における経験をもとに、「翻訳・通訳者と受け手が異なる文化背景にある中で、時に同じ表現においても理解の差が生じることがあるため、翻訳・通訳には思考の転換が必要である」と指摘した。「翻訳・通訳には豊富な背景知識を持つ必要があり、細かいところに気を配り、状況の変化に注目することで、初めて誤訳を防ぐことができる」と語った。常日頃から連想練習をたくさん行うことで、自らの知識ネットワークを豊かにすることを彼女は提案した。
中国国際放送局日本語番組キャスターの王小燕氏
蔡院森氏は、「中日という2カ国の言語の中には共通する多くの漢字があり、ある程度の利便をもたらすものの、翻訳・通訳者にしばしばまた別の困難をもたらすのが常である」と指摘し、何も考えることなくただ使用することは避けるべきだと強調した。「優れた翻訳・通訳者になるには、積極的に学ぶ能力とすり減ることのない好奇心を持つことが必要だ」と彼は語った。
ベテラン翻訳・通訳者の蔡院森氏
聴衆からの質問
聴衆と専門家のやりとり
この会ではさらに、第2回人民中国杯日本語国際翻訳・通訳コンテスト授賞式も行われた。今回の大会は、人民中国雑誌社と教育部日本語教育指導委員会が連合して主催し、広東省翻訳協会と広州市聯普翻訳有限公司が共同で開催したもので、中国や日本の600余りの大学および企業から3000人近い選手が大会に参加した。
徐一平(後列左端)、修剛(後列左から二番目)、王衆一(後列左から三番目)、王小燕(後列左から四番目)、カシオ(中国)貿易有限公司教育事務設備事業部の趙建華部長(前列右端)が入賞者に賞状と賞品を授与した
入賞者の代表、庄莉さんはあいさつの中で、「この賞を受賞することができ、自分に対する大きな励みとなった。翻訳・通訳の道は常に学ぶことではじめて前進し続けることができる」と語った。(文=李家祺 写真=王衆一、李家祺、楊振生、王朝陽)
人民中国インターネット版 2019年9月9日
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