文=常翠芳 写真=王丹丹
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上海を代表する繁華街である南京路の夜の風景 |
2010年の上海万国博覧会は「城市 譲生活更美好(都市――生活をさらに美しく)」をテーマに都市生活に焦点をあてた初めての万博となる。多様な文化が交じり合い、共存してきた上海はこのテーマを掲げるに相応しい大都市だ。
黄浦江の西岸にはバロック式、ゴシック式、ルネサンス式の建築物がたたずむ一方、川向こうの東岸には、現代的な金茂大廈が高くそびえ立つ。石庫門(上海特有の共同住宅)で昔ながらの庶民の生活が営まれているかと思うと、近くのブティックにはファッショナブルなバッグやアクセサリーが並ぶ。朝は広東式レストランで飲茶をほおばり、夜はフレンチの名店で美食を楽しむ。このような、時代や空間を超えたシーンが、上海ではごく自然なこととして繰り広げられている。
今と昔が混在する「新天地」
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石庫門をバックに結婚写真を撮ることが上海の若い人の間では流行っている |
風情ある観光スポット「新天地」 |
上海の「古今融合、中西融合」文化の縮図である観光スポット「新天地」は、市の中心部に位置する。上海の歴史文化や現代の生活を体験できる場所として、海外観光客からも人気が高い。
新天地の付近には風情ある石庫門が残る。弄堂(横町)を歩くと、黒レンガの歩道、漆塗りの重厚な門、赤レンガと黒レンガで築かれた塀に、1920、30年代のオールド上海が甦ってくるようだ。
しかし建物のなかに一歩足を踏み入れると、時はとたんにファッショナブルな現代に移りかわる。内部を仕切っていた壁がすべて取りのぞかれて広々とした空間が作られ、国際的なギャラリーやブティック、おしゃれなレストランやカフェ・バーなどが入っている。
ヨーロッパ調の暖炉やソファー、中国式の正方形のテーブルやひじ掛け椅子が同じ空間に存在し、バー、カフェ、茶館、中華レストランの調和もとれている。壁に現代アートが飾られているかと思えば、アンティークのレコードプレーヤーも置かれている。そして、世界各地からやってきた観光客が、コーヒーを片手におしゃべりを楽しむ。
太倉路には、1920年代の石庫門を改造して設立された展示館「屋裏廂」がある。陳列品はすべて、当時の実物だ。
8年前、香港の不動産開発会社が石庫門の改造に乗り出したとき、「昔のものは昔のままに」という原則に基づき、もとのレンガや瓦はそのままに残した。その一方、内部には現代的な要素をふんだんに注ぎ込み、21世紀の都市の生活スタイルや審美眼に合わせた内装をほどこした。こうして今日の新天地が形成され、伝統と現代の間で、多彩な文化を体験できるようになったのだ。
クリエイティブな空間「田子坊」
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「田子坊」は、形態が異なる石庫門が20種類以上あり、歴史文化がもっとも豊かに残る上海の古い地域だ。市民たちは今でもここに暮らしている |
市内南部の泰康路は、中国と西洋の文化が結びついた代表的な古い弄堂。ここにあるすべてのもの、ここで営まれているすべてのことが、アーティストたちのインスピレーションの源となっている。
泰康路210弄は上海のソーホーとして注目を浴びる「田子坊」だ。1930年代の工場を利用して、ギャラリーやカフェ、チャイナドレスショップ、ネパールのアクセサリーショップなど、個性豊かな店舗が軒を連ねる。このほか、米国、フランス、ベルギーなど18の国のデザインスタジオもある。
面積7万平方メートルあまりの「田子坊」は、上海に数多くあるクリエイティブエリアのなかでも特別な存在だ。ほかのクリエイティブエリアは、単独の古い工場や倉庫を改造したもので、周辺の民家とはかかわりがない。しかし「田子坊」は、一本の弄堂を改造したものであるため、個性的なショップが周辺の住民たちの生活と共存している。
洗濯物がはためく弄堂で、買い物かごを提げたおばあさんとカメラを持った観光客がすれ違う光景は、一種特別な趣がある。
泰康路248弄に住んでいた楊振鑫さんは2005年、あるデザイン事務所に自宅を貸し出し、別の場所へ引っ越した。これにより、家賃収入が得られるようになったばかりか、住宅環境もよくなったという。
上海を代表する画家、故・陳逸飛さんの彫刻と油絵のアトリエもここに残されている。この二つのアトリエの外観は非常にシンプル。今は「陳逸飛スタジオ」のオフィスとして使われているが、近いうちに陳逸飛さんがここで絵を描いていた様子が再現され、一般開放される予定だという。
ここにはもう一つ有名なアトリエがある。著名な写真家の爾冬強さんが設立したアートセンターだ。古い工場の構造をそのまま残し、展示エリアや版画スタジオ、カフェなどを設けた。ここではアート作品展やジャズコンサート、オペラコンサートなどさまざまなイベントが催される。
新感覚の雑技ショー「ERA――時空の旅」
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観客を興奮の渦へと巻き込む「ERA――時空の旅」(写真提供・「ERA――時空の旅」) |
文化と流行の都として、上海では各種公演が年間数千回以上行われる。地元の若者に人気のネット小説を舞台化した小劇場の現代劇や、アヴリル・ラヴィーン、セリーヌ・ディオンなど世界的なミュージシャンのコンサートも催される。チケットが海外より安いため、日本人や韓国人観光客もよく観に来る。
2005年9月、国内外の観光客を惹きつける新たなステージが登場した。マルチメディアを駆使した雑技ショー「ERA――時空の旅」だ。
ステージが始まると、まず一組の男女が小舟を漕いでステージの真ん中に進み出てくる。バックには美しい江南の水郷の風景が映し出される。男は女に自分を誇示しようと、一平米しかないデッキの上にローラーを置き、その上に長方形の板を置いて、板の上に立ってバランスをとる。そして板の上にガラスのコップを四つ並べてさらに板を置き、その上に立つ。さらにコップを並べて板を置き……というように、板はますます重なり、スリルもますます高まる。
そのパフォーマンスが女に認められると、2人は小舟に乗って去ってゆく。そして次は、昔の上海人の格好をした車夫が手で大きなつぼを操りながら登場する。つぼはまるで新体操の選手が操るボールのように上下に舞う。しばらくすると、その車夫は腕比べをする少年たちの審判役になる。少年たちは輪くぐりを競い合う。ステージでは、このようなすばらしい雑技の数々が相次いで披露され、オールド上海の情緒も漂う。
「ERA――時空の旅」の公演は、上海馬戯城で行われた05年9月27日の初演以来、すでに千回以上行われている。国産の雑技ショーでは、同一劇場での公演回数最多、チケットの売上げ枚数最多を誇る。海外でも数回公演したことがある。海外のメディアからは、「アジアでもっともすばらしいステージショー」と称される。
「ERA――時空の旅」は、海外から招いたクリエーティブチームが創作の全過程に参加した初めての雑技ショーだ。カナダの芸術家と中国のクリエーティブチームが協力し、中国的な要素を発掘してそれを取り入れた。そして、世界一流のマルチメディア舞台技術を使って、この独創的かつ魅力的な雑技ショーを創作した。ショーのなかの雑技やマジックはとくに珍しいものではないが、オールド上海の情緒やラブストーリーの要素を加えたため、これまでにない新鮮なものとなった。 舞台効果も豪華だ。マジシャンがお椀の水を空へまくと、空からは細い雨が流れ落ち、瞬く間に高さ8メートル、幅18メートルのウォータースクリーンができたり、スクリーン上の風車が高さ十数メートルの回転する巨大な輪に変わったり……。巨大な輪のなかには直径2メートルの小さな輪が3つあり、雑技員たちはその小さな輪の内側と外側で、バランスをとりながら歩いたり、縄跳びをしたりする。
「ERA――時空の旅」は、観客をワクワクさせ、大きな楽しみを与えてくれる。演出家のエリック・ビルヌーブが言うとおり、グローバルなショーであり、言葉や文化の隔たりはない。(0806)
人民中国インターネット版 2008年7月2日
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