7月24日に公開されたアニメ映画「麦兜響当当」は、瞬く間に中国全土でセンセーションを巻き起こした。公開初日に興行収入が1000万元を超え、最初の週末にはさらに3300万元に達した。
実は、「麦兜響当当」のストーリーはごく単純である。ピンクの子豚、麦兜の母・麦太が、香港での生活が順調でないため、何かのチャンスがあるのではと思い、麦兜を連れて大陸部にやってきた。枕元には「CEOになれる道」という本が置かれている。武当山でカンフーを学ぶ麦兜は、テレビもインターネットもない環境に我慢しているが、カンフーはなかなか上達せず、薬を精製する「煉丹部屋」で仲間とこっそりインスタントラーメンを煮るのが最大の楽しみとなった。麦兜とお母さんは互いに鶏肉を譲り合うが、結局その肉は床に落ちてしまう。麦兜は最終的に失敗したけれど、「誰でも李嘉誠(香港の一大富豪)になれるわけではないさ」と思い、うれしそうに香港に帰った。
「先生、私には腰がないの」。この行動が鈍く、太っていて腰もない子豚は、その単純で楽観的な性格と根気強さで人々の心を捉え、「トランスフォーマー2」や「ハリーボッター」などの海外の大作に匹敵する唯一の国産映画となった。上海聯合院線の呉鶴滬副総経理によると、「麦兜響当当」の興行収入は、今年上半期に上映された「トランスフォーマー2」を除くすべての映画を上回った。このまま順調に行けば、興業収入が1億元を超える最初の国産アニメ映画になる可能性も高いという。
「麦兜」人気爆発の秘密はなんだろうか。外資系企業に勤める劉茜さんは、「麦兜」の漫画をたくさん集める忠実なファンである。彼女は、「麦兜の単純さ、楽観的で根気強いところが大好き。いくら挫折しても、彼には永遠に夢があり、夢を持って平凡な生活に色を添えている。毎日地下鉄やバスに乗り、電話、パソコンなどに囲まれ暮らしている私たちにとって、麦兜は楽しみをもたらしてくる友達である」と話す。
フェニックステレビの曹景行評論員は、「麦兜は私たちに生活に対する新らたな姿勢を提示してくれた。市場経済の過酷な競争の中で、誰もが李嘉誠になれるわけではない。ところが、こうした李嘉誠になれない大多数の人々も、自分なりに暮らし、生存していかなければならない。こんな環境の中で、いかにして自分の居場所を探し、自分の歩むべき道を探すかを麦兜が教えてくれる」と話す。
「麦兜響当当」の製作元は、今年初めにヒットした国産アニメ映画「喜羊羊と灰太郎」と同じ上海文広新聞メディアグループである。同グループ運営部の劉咏主任は、「現在、国産アニメ市場は徐々に成長しているが、売れそうなものはまだ少なく、私たちから見れば『麦兜』と『喜羊羊』しかない」と話し、「私たちは、市場を一番大切にしており、何を作るかを市場のメカニズムによって判断しなければならない。もちろん、私たちもメディアとしての責任感があり、低俗なものには絶対に手を出さない。『麦兜』が伝えているのは、単純、楽観、善良である。時代が変われば、映画の伝え方も変わる必要があり、今の人々の生活により近く、受け入れられやすい方式を取り入れるべきである」とした。
呉鶴滬副総経理も、「麦兜はまっすぐに人々を教育しようとはせず、簡単な物語でいい人になるよう簡単な道理を説いている。従来の考え方にとらわれた監督であれば、麦兜の武当山での生活をどのように描くかは想像しやすいだろう。麦兜がどれだけ辛抱強くカンフーを学んだか、いろいろと大言壮語するだろう。この映画はまさしくその反対であり、麦兜らしいユーモアな言葉が多く、子供たちも非常に受け入れやすい」と語った。
「チャイナネット」 2009年8月4日
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