89カ国、450カ所の世界遺産を撮影 世界遺産の美しさを日中両国に伝えたい!!
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周劍生写真家 | 周劍生氏は世界遺産をテーマにした写真を撮りつづけている写真家。これまでに89カ国、450カ所の世界遺産を撮影しており、その実績は日中両国で認められている。昨年の北京オリンピックでは、選手村で唯一、作品が展示されたほどだ。さっそく、周氏の世界遺産にかける思いについて聞いてみた。
1950年生まれ。1969年黒龍江省生産建設団。71年チベット《戦旗報》の契約カメラマン。76年中国石油化工部専属カメラマン。78年八一映画制作所にて研修、映画《全民皆兵》、《飛行交響楽》の撮影輔佐。80年中国写真家協会加入。82年中央工芸美術学院(清華大学美術学院)商業美術科および撮影研修科にて研修。89年日本大学芸術学部写真科、90年日本多摩美術大学大学院を経て、芸術修士学位取得。94年世界遺産をテーマに自費撮影の旅を開始。04年キヤノンと富士フイルムの協賛で《周劍生世界遺産写真集》出版。07年中国教育部《中国教師報》芸術指導就任後、現在に至る。08年には北京オリンピック委員会の要請を受けて、選手村で「一人の中国人が見た世界遺産」作品展示会を開催するなど、グローバルに活躍している。
張国清・北京放送前東京支局長:周さんはいつから写真に興味を持ったのですか。
周劍生・写真家:私は家庭のなかで、ごく自然に写真好きになっていきました。というのは、父が映画監督で母が映画女優といった家庭環境だったからです。その後、本格的に写真に取り組むようになったのは18歳のときでした。まちで出会った女の子の写真を撮りたくなって、思い切って声をかけたんです。すると、快くOKしてくれて、私は夢中になってシャッターを切りました。そして、その写真を彼女に渡すために、初めて現像作業をしてみたのです。当時は一刻も早く写真を現像するには、自分でやるのが一番でしたから。それ以来、写真を撮ったり、現像したりするのが楽しくなって、本格的に勉強するようになったのです。
張:軍役を経験したこともあるそうですね。
周:文革のときの下放政策で、黒龍江省の生産建設団を経て、71年に軍隊向けの新聞のカメラマンとして働くようになりました。撮影した写真が掲載されたときは本当に嬉しかったですね。
張:軍役を終えてからは、どんな生活を送っていたのですか。
周:北京に戻って中国石油化工部に入り、そこでも専属カメラマンとして働くことができました。雑誌や広告の仕事がメインでしたが、カメラを片手に被写体を求めて北京市内をブラついていました。ときに、北京の街角や生活をテーマにした写真を撮影したこともあります。また、母の存在もあって、私は中国の女優の撮影を得意としていました。そのおかげで、映画関係の仕事も引き受けることも多かったです。
張:日本にはどのようなキッカケで来日したのですか。
周:写真の仕事をつづける一方で、中央工芸美術学院で写真を学びはじめたのですが、中国では写真が学問として認められていなかったため、学位を取ることができませんでした。そこで、日本の大学で勉強して学位を取得しようと考えたのです。おかげで、日本の大学でテーマを持って撮影することの大切さを学ぶことができました。
張:なるほど、それで世界遺産というテーマで写真を撮るようになったのですね。
周:そうです。とはいえ、最初から世界遺産というテーマに注目したわけではありませんでした。そもそも私が初めて世界遺産に接したのは、フランス旅行でモンサンミッシェルに行ったときのことです。そのステンドグラスに魅せられて、無我夢中でシャッターを切ったのですが、そのときはそれが世界遺産だとは知りませんでした。それからしばらくして、銀座で世界遺産の写真展が開催されたときに初めて知ったのです。写真展では、モンサンミッシェル以外にも魅力的な被写体が数多くありました。そこで、私は世界遺産をテーマにしてみようと考えたのです。
張:これまでにどのくらいの世界遺産を撮影しましたか。
周:私はこれまでに、89カ国で世界遺産を撮影しつづけてきました。しかし、世界遺産は増えつづける一方です。私が写真を取り始めた頃は450カ所でしたが、いまや850カ所もあります。
張:思い出に残っている撮影はありますか。
周:エチオピアの王墓を撮影に行ったときのことです。その遺跡は大きく、空撮でなければ全景を撮ることはできませんでした。しかし、あいにく私はひとりで撮影に臨んでいたので、空撮は不可能でした。そこで、手元にあった三脚を縦に3本つないで、そのテッペンにカメラを固定し、シャッタースイッチを下まで伸ばしたのです。そして、レンズの上にデジタルビデオカメラを設置し、地上からでも、レンズがどんな風景を捉えているかを把握できるようにし、高い位置からの撮影を遠隔操作できるようにしたわけです。その状態でフィルム2本分を撮影したところ、5枚ほどいい写真を撮ることができました。
張:ところで、周さんが撮る世界遺産には独特の雰囲気が漂っていますね。
周:撮影技法だけでなく、撮影の時間帯にこだわっているからだと思います。朝方や夕方など、空の色がぼんやりとしている時間帯に、撮影するようにしているのです。そうすることで、写真に幻想的な雰囲気を与えることができるのです。 私はこれでほとんどの有名な世界遺産を撮り終えました。これからは少しマイナーなキューバやアルゼンチン、ブラジルなどの世界遺産を撮影していきたいと思っています。
張:これからも世界遺産の魅力を、日中両国に伝えつづけてください。
「中国国際放送局 日本語部」より 2010年4月4日
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