今年8月15日は日本の敗戦・降伏65周年にあたる。報道によると同日は、菅直人内閣の閣僚全員が靖国神社を参拝しなかったのみならず、各省の副大臣や政務官も誰一人参拝しなかった。ただ、超党派議員団体「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の国会議員41人のみが参拝を貫いた。こうした情況に、日本の右翼勢力は意気消沈している。(文:劉江永・清華大学国際問題研究所教授、新中日友好21世紀委員会中国側委員。「人民日報海外版」のコラム「望海楼」より)
このような異例な事態が生じたのは、別に不思議なことではない。
第1に、日本社会の政治思潮には現在、国内外のさまざまな要因の影響を受け、「脱右傾化」という変化が起きている。小泉純一郎氏が首相在任中、A級戦犯の亡霊を合祀する靖国神社を6回参拝したことで、日本とアジア隣国との関係、および日本の国際的イメージは深刻に損なわれた。これを受けて日本社会全体が考え直したことで、政治の右傾化が阻止されたのだ。06年9月の安倍晋三内閣発足以来、在任中のリーダーは靖国神社を参拝しないことが慣例となった。昨年9月に発足した鳩山由紀夫内閣以降は、閣僚全員が靖国神社を参拝していない。
第2に、民主党の主なリーダーは野党時代、当時の小泉首相による靖国参拝に断固として反対していた。06年8月15日に小泉氏が首相として参拝すると、鳩山由紀夫氏は民主党幹事長として直ちに談話を発表。歴史と国益を正視する立場から、これを厳しく非難した。結果、民主党はこのために票を失うどころか、09年8月末の総選挙で勝利し、与党となった。
第3に、菅内閣はこの問題において思想と行動の一致を保っている。今年6月、菅氏は首相に選出された後「A級戦犯の合祀問題などから、首相や閣僚の公式参拝には問題がある。在任中は参拝しないつもりだ」と表明した。
菅内閣の閣僚が靖国神社を参拝しなかったことは、歴史を正視する勇気を持つという民主党政権の正しい立場を示しており、日本とアジア隣国との未来志向の友好協力関係の発展にプラスだ。一方で、靖国神社をめぐるせめぎ合いが終息したわけではないことにも目を向けなければならない。小泉純一郎氏は退任後も引き続き参拝を貫いている。国会議員に当選したその息子も、今年8月15日に参拝に馳せ参じている。安倍元首相も退任後に参拝し、自分の考えに変りはないと表明している。自民党の谷垣禎一総裁は06年の選挙時、首相に選出された場合は参拝しない考えを表明したが、最大野党のリーダーとして、すでに2回参拝している。
靖国神社はすでに、日本の右翼勢力がその存在を誇示し、アジア隣国に向けて示威し、世界の認める正しい道理と普遍的価値観に挑戦する政治的な場となっている。07年6月、日本の右翼勢力は「台湾独立」のボス・李登輝を靖国参拝に招待した。何を企んでいるのか計り知れない。今年8月14日にも、日本の右翼団体はフランス「国民戦線」など欧州諸国の右翼団体の頭目を靖国参拝に招待した。これも企みがあってのことだ。
実は、日本の極右勢力が靖国神社を参拝するのには、別のレベルの目的もある。自衛隊を「戦争のできる軍隊」にすることだ。田母神俊雄・元航空自衛隊幕僚長はこの観点を持っている。彼らは「国のために命を捧げても、国の指導者が英霊に感謝し、参拝しないのなら、将来誰が国を守るというのか?」と主張する。65年前に日本軍国主義が靖国神社を精神的支柱として発動した侵略戦争が徹底的に失敗したという歴史的事実を、彼らは完全に忘れている。
このことから、靖国神社に対しては参拝するか参拝しないか、それが試金石であることが分かる。
「人民網日本語版」 2010年8月17日
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