「第6回 東京-北京フォーラム」の最終日にあたる8月31日午前9時より、全体会議が行われました。前半部では、日本側から宮本雄二氏(在中国日本国大使館、前特命全権大使)、武藤敏郎(株式会社大和総研理事長、前日本銀行副総裁)、小林陽太郎氏(前新日中友好21世紀委員会日本側座長、元経済同友会代表幹事)、中国側から蘇寧氏(中国人民銀行元副総裁)、孫尭(黒龍江省人民政府副省長)、呉建民氏(外交部政策諮問委員会委員)が、それぞれ基調講演を行いました。後半部は、各分科会から前日の報告が行われ、最後に主催者を代表して言論NPO代表工藤泰志と中国日報社編集委員会委員、秘書長の高岸明から閉幕の挨拶がありました。
最初に宮本雄二氏が壇上に立ち、まず、現状が日中関係進展の好機であることを語り、さらに新しい時代の戦略的互恵関係に基づく日中関係を構築することの重要性を指摘し、日中関係の深化を図るべきだと主張しました。しかし、「日中両国関係は依然として脆弱であり、強い政治的意思と絶え間ない努力がなければ続かない」と述べ、青少年交流や地方交流、本フォーラムなど知的な相互理解を進めていかなければ、関係の強化は図れないことも指摘し、関係改善への継続的な努力の重要性を指摘しました。
続いて講演した蘇寧氏は、世界金融危機後のアジアの現状とその後の展望について講演を行いました。蘇氏は、世界金融危機をアジアがいち早く克服したことから、新しいアジアの発展段階をみることができたということを語りました。そして、今後はアジアの未来を切り開くためにより二国間協力の強化やマクロ経済政策の協調、地域内のいっそうの金融協力が重要であることを強調して講演を締めくりました。
株式会社大和総研理事長である武藤敏郎氏は、アジア経済の中での、日本と中国の今後の役割について講演を行いました。中長期的に中国が高齢化や資源問題などで成長力を阻害する要因があり、決して楽観視できない現状であることを説明しました。しかし、この経験は過去の日本が体験したことなので日本が中国の中長期的な課題に対して協力すべきではないかということを示唆しました。このように、アジア経済の発展を考えると日本と中国の強みを生かして相互に協力・補完していくことの重要性を強調して講演を締めくくりました。
孫尭氏はグローバルな視点から見た地域交流の重要性についての講演を行いました。孫氏は地域の交流強化は経済の推進力となり、黒龍江省が現在、日本や極東ロシアと化学、航空機などの産業や投資、観光といった面で積極的に交流を行っていることを語り、地域のレベルでの交流の強化が重要になってきていることを紹介しました。最後に、黒龍江省はさらに企業誘致などの面で日本とのさらなる関係の強化を図っていきたいと語り講演を終えました。
小林陽太郎氏は、「日中の協力を、いかに進めるべきか」が大切であると述べ、不確実性が増えてきた現状ではあるが幅広い見識を持ち、問題を着実に改善してゆくことで日中の協力を進めてゆくべきと語った。
最後に呉建民氏が登壇。呉氏は「共通の利益」をキーワードに講演し、イラクやアフガニスタンの経験から戦争で問題が解決できない現状に鑑み、古い考えを捨て、「共通の利益」に向かって進む新しい関係を作ろうと呼びかけ講演を終えました。
その後、各分科会からの前日までの報告が行われました。
まず、政治分科会については白岩松氏(中央テレビ局高級編集者)と松本健一氏(評論家、麗澤大学経済学部教授)より、日中がアジアの未来をどのように形づくるのかいうことを日本の大学生と共に討論したということが報告されました。
次に、経済分科会では桑百川氏(対外経済貿易大学国際経済研究院院長)と小島明氏(日本経済研究センター研究顧問)より、中国の金融・為替政策やアジアの成長モデルについて討論を行ったとの報告がありました。
メディア分科会からは崔保国氏(清華大学ジャーナリズム・コミュニケーション学院副院長)、山田孝男氏(毎日新聞社政治部専門編集委員)より、世論調査結果の分析についての議論や、メディアの相互交流の少なさを改善すべきといったことを議論したとの報告がありました。
地方分科会からは蔡建国氏(同済大学国際文化交流学院院長教授)、山田啓二氏(今日と府知事)より報告があり、日中の地方団体が今まで以上に交流を深め、中小企業のマッチング支援等具体的なことでも協力していこうということが話し合われたとの報告がありました。
最後に、外交・安全保障分科会からは呉寄南氏(上海国際問題研究院学術委員会副主任、研究員)、若宮啓文氏(朝日新聞コラムニスト)から報告があり、実質的討議のために円卓方式を採用し、日米中の関係をどう捉えるべきかといったことや防衛対話の強化の問題について話し合われたことが報告されました。若宮氏は丁々発止と議論が行われたこと、日中の間に信頼感ができてきているのかなと感じたと述べました。
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