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中国人が初体験した日本の特殊な職業――靴選び

 

大学時代に知り合った日本人留学生・泉美さんの招きに応じて、日本の大阪で正月休みを過ごした。数日間、観光やショッピング、日本料理と楽しんだが、何かまだ物足りない気がして、日本の象徴である富士山へ連れて行ってほしいとお願いした。

ただ、荷物を減らすために、運動靴を持ってきていなかった。富士山へ行くには、はき慣れた運動靴が必要だ。しかし泉美さんには考えがあるようで、「大丈夫よ。行きましょう。あなたにぴったりの靴を買いに連れて行ってあげる」と微笑んだ。

バスに十数分揺られ、やって来たのは有名な阪急百貨店。色とりどりの商品の脇をすり抜けて、泉美さんはまっすぐに運動靴コーナーへ向かった。すると、笑顔を浮かべた販売員が親切に迎えてくれた。泉美さんが何か言うと、その販売員は若い男性を呼んだ。

どうして靴を勧めるのではなく、別の人を呼ぶのだろう?

私が不思議に思っていると、出てきた男性は泉美さんと親しげに挨拶を交わした後、「山田と申します。バチェラーのシューフィッターです」と私に名刺をくれた。「シューフィッターってなに?バチェラー?」。何がなんだかわからずにいる私に、泉美さんが簡単に説明してくれた。「シューフィッターというのはお客さんの足に合った靴を選び、微調整などもしてくれる専門家のことよ」。中国ではほとんど見たことがないが、日本では16年も前からある専門の仕事だという。

興味を持った私は、「バチェラーのほかにどんなグレードがあるの」と尋ねた。山田さんは、「シューフィッターになるのは簡単なことではありません。『足と靴と健康協議会』という団体の認定を受ける必要があるのです。グレードはプライマリー(初級)、バチェラー(上級)、マスター(修士)の3つです。いま、マスターの資格を持っているシューフィッターは全国で15人しかいません」と誇らしげに答えた。そして、「私はまだまだ努力が必要な身ですので、どうぞよろしくお願いします」と言って私たちを笑わせた。

シューフィッターについて理解すると、いよいよ靴選びがスタート。山田さんは私の足の計測を始めた。靴を脱いで裸足で3Dスキャナーの上に立つと、すぐにスクリーン上に私の両足の3D画像が映し出された。

それを観察した山田さんは、「あなたの足は右と左で受けている力があまり均等ではありません。立っているとき、左足を支えにする癖がありますね」と言った。確かに、私は左足に重心が偏る傾向がある。思わず山田さんに敬意を抱いた。続いて、山田さんは専門のフットゲージを用いて、足長、足幅、足高、足囲などを細かく測り始めた。私は少しきまりが悪かった。

計測を終えると、山田さんは非常に正確な結論を下した。「あなたの左足は右足より0.3ミリ大きい」。自分の右足と左足が同じ大きさではなかったことに驚く私に、山田さんは急いで説明した。「実は、右足と左足が完全に同じ人はいないのです。ですから靴もそれに合わせるべきなのです」

20分後、山田さんは私専用のインソール(足底版)を持ってきた。「今後、革靴や運動靴など、どんな靴を買うときもこれに合わせて買うといいですよ」。試してみると、確かにぴったりだった。

私たちはそれを持って運動靴を選んだ。履き心地がよく、私の足にぴったりのものが見つかった。インソールの価格は3000円。そんなに高額ではない。今後、自分の足に合った靴をはいて健康で快適な生活を送れると思うと、それだけの値打ちはあるだろう。

日本で、シューフィッターと出会うことができたのは、思っても見なかったことで、幸運だった。いま、靴を購入するときは、いつもあのインソールに合わせて選んでいる。中国の販売員はこれに興味津々の様子だ。一日も早く中国にもシューフィッターという専門職が登場することを願いたい。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年2月23日

 

 

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