現在位置: ニュース>文化
視覚障害者のための「映画館」と「図書館」――紅丹丹の挑戦

 

「心目図書館」は中日技術協力の結晶

紅丹丹では2008年1月から音声図書の製作を始めている。2009年、日本の独立行政法人国際協力機構(JICA)の協力のもと、日本の音声解説技術のパイオニアである社会福祉法人・日本点字図書館が紅丹丹にナレーション番組制作、DVD録音編集、DAISY(書籍、雑誌録音の世界的標準規格)の応用と放送番組制作など、多くの技術サポートを提供した。2011年1月29日、「心目図書館」が北京で正式に成立、サービスをスタートさせた。これと並行して朗読録音ボランティアチームも発展・充実してきた。これまでのところ、朗読録音ボランティアはすでに100人を超え、制作されたDAISY図書は80冊以上になっている。

「心目図書館」が制作した音声図書は機械が読み上げるものでも、まったく感情のない電子図書でもなく、人と人の交流感を重視した図書だ。人道的配慮を表すと同時に、立体的なものでもある。表紙のデザインや色、版権情報、図表、イラストからページ番号まで、見ることのできる図書情報はすべて盛り込まれ、正確に視覚障害者に伝えられる。

「心目図書館」で、専用プレーヤーを使い本を「聞く」ユーザー

日本では、視覚障害者のための情報サービスシステムがすでに基本的に整っている。視覚障害者は点字図書館、録音雑誌、映画やテレビ番組の音声解説などを通じて十分な情報を得ることができる。日本から提供された経験と技術は、疑いもなく中国のこの分野における社会活動の発展に力を与えるだろう。時間の経過につれ、この音声解説技術はより多くの視覚障害者に恩恵を与えるはずだ。

日本のこの分野での交流と協力について鄭さんは話す。「日本は視覚障害者に提供する情報サービスという領域ですでに70年の経験を持っています。今回の技術協力を通して、日本は70年の経験を直接中国にコピーしようとしています。これは紅丹丹にとって喜ぶべきことで、私たちは深く感謝しています」

視覚障害者サービスはこれからの領域

現在の視覚障害者が置かれている文化生活状況が容易に見て取れる数字がある。2010年初め、鄭さんが日本点字図書館を訪問した時、交流の過程で知ったのは、日本には30万人の視覚障害者がおり、日本点字図書館のようなサービスをする民間の図書館が97カ所もあるということだ。

「これに比べ、中国には1233万人の視覚障害者がいるのに、民間の視覚障害者用図書館はまだ1カ所もありません」と話す鄭さんの言葉には、あせりの気持ちが表れている。

鄭さんの紹介によれば、中国には2000余りの公共図書館があり、そのうち100余りの図書館で視覚障害者用閲覧室が設けられている。しかし、そこには視覚障害者の姿はほとんど見られない。原因について鄭さんは、「そこは視覚障害者にとってなじみのある生活環境ではないからです。健常者の図書館施設は視覚障害者の使用に適しているとは限らないのです」と話している。

規模的制限があるため、「心目図書館」は現在のところ一部の視覚障害者のニーズを満たすことしかできない。しかし、資金の投入とボランティアの参加に伴って、サービス範囲は拡大し続けるはずだ。2010年6月現在、紅丹丹の登録ボランティアはすでに600名を超えている。大学生、企業のサラリーマンから一般市民などが中心だ。

「ボランティアが500人いて、両手を差し出せば千本です。私たちにはもう(すべての人をもらさず救済しようとする)千手観音がいるんです!」と話す鄭さんの瞳には、心からの喜びが浮かんでいる。

仕事の合間に「心目図書館」で音声図書制作を担当しているあるボランティアは、以前興奮して鄭さんに話したことがある。自分は生きているうちにこうした方式を通じてほかの人に尽くすことができた。これはつまり、将来彼がこの世を去る日が来ても、録音制作した本はずっと必要な人を助け続けることを意味しているというのだ。彼は、これ以上価値のある、意義のあることはないと話したという。

今後、紅丹丹はまだ長い道のりを歩んでいかなければならない。それでも、鄭さんはすでにはっきりとしたプランを持っている。

「私たちは『心目図書館』を利用して、全国各地に視覚障害者図書館を建設していく計画です。まず『心目図書館』の文化ブランドを確立し、それを基礎に関連のボランティア活動をを広げていきます。私たちは、紅丹丹がひとつの種となり、やがて全国各地に、視覚障害者にサービスを提供する1000以上の図書館とボランティア組織という花を咲かせ、実を結ぶことを望んでいます。」

【エピローグ】

紅丹丹では、知覚障害者合唱団が定期的に練習を行っており、ちょうど練習の様子を見ることができた。メンバーの多くは中高年女性だ。練習の時、みんなの表情はとても真剣で、厳粛でさえある。私はかたわらに立ち、彼女たちが落ち着いて練習するじゃまになりはしないかとすこし心配しながら見ていた。やがて、彼女たちが整列し、訪れた参観者のために『小道』という歌をプレゼントしてくれた。彼女たちの歌声が響き始めたその瞬間、先ほどからの厳粛さは消え、どのメンバーの顔にも輝くばかりの笑顔が浮かんだ。合唱は少しだけ不ぞろいなところもあったが、その歌声には心から発せられた、抑えようもない喜びと感動があふれていた。

『小道』を歌う合唱団のメンバーたち

これら暗闇の世界に生きる人たちは、自分たちなりの方法でねばり強く生に対する心からの愛を表現している。その場にいるどの人も、発散される生命の活力を受け止め、彼女たちの感じている楽しさに感染していた…。(孫雅甜=文・写真)

 

人民中国インターネット版 2011年4月1日

 

 

   <<   1   2  

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850