林国本
中国翻訳協会対外メディア翻訳委員会・中日翻訳研究会第5回シンポジウムが7月9日午前北京市順義区のリゾート地で開催された。
数十年このかたこの分野で活躍してきた人たちや若い世代の人たち数十人が日頃仕事の中で考えつづけてきたことや独自の見解を語り合った。
数十年来この分野でいろいろと紆余曲折しながら経験を蓄積してきた長い歴史をもつ北京週報(英語版以外はネット版に発展的変化)、中国で前世紀50年代初期に創刊した「人民中国」誌、チャイナ・ネット、日本各地に「北京放送を聞く会」をもつ「北京放送」、世界に中国のニュースを発信しているCCTV(中央テレビ)の元駐日支局長、渉外担当者、中国の政治文献・公的文書の各国語版を翻訳している中央編訳局、多方面の翻訳にたずさわっている対外翻訳出版公司、日本の各層の人々と触れ合いのある中日友好協会の幹部らが一堂に会して経験の交流を行った。
本文の作者である私も北京週報に数十年勤務し、特派員として日本に長期滞在した経験があり、第一線から退いた今日においても同じテーマをめぐって自分なりの役目を果たしているが、この分野において大いに改善の余地があることを痛感してきた。
さいわい、このようなシンポジウムの場ができたことにより、同じ分野でそれぞれの仕事に打ち込んできた人たちが、自分たちの経験、悩み、期待を語り合うことができたことは、たいへん喜ばしいことである。
中国語の表現も、日本語の表現も時代とともに変化しつつあり、これまでのような翻訳調丸出しの形では、コミュニケーションとして効果が半減することはいわずもがなのことである。
中日両国は漢字を使っているので、よほどニュアンスとか、感覚的色彩に気を使わないととんでもない誤解を生じかねない。
中央編訳局のようなセクションは正確な訳が求められるが、その他の場合、いっそのこと原文を素材とみなして日本語で書いた方がよい場合もある。今回、参加者のほとんどが現在の日本語らしい表現を理想像としてもっていることを知って、私は胸をなでおろした。
中日友好協会そのものはメディアではないが、この団体は日本の諸団体、議員、企業家、各友好都市の一般市民とつねに触れ合う機会があり、ある意味では、日本を一番よく知る状況にあると言っても過言ではない。私もこの協会の理事としていろいろ勉強させてもらっているが、正直に言って、単にメディアに閉じこもっているより幅広いことに接することができるのではないかと思っている。そういう意味で、この会合に中日友好協会の幹部を出席させていることはまったく正解であると思っている。
中国も日本もインターネットの時代に入っており、もう古い意味でのコミュニケーションでは時代の動きについて行けなくなっている。今や中国でも日本にひけをとらないほどの国産アニメが出回っているし、形そのものはいくらか違ってもAKIBA48のような歌手のグループも現れている。ヒップホップの文化も若者の間でははやっている。コスプレ文化のようなものも若者の間で人気がある。こういうグロバリセーションの時代にあって、対外メディアはどうイノベーションしていくべきか、今回のシンポジウムは中国語、日本語の対訳のテクニックのみにとどまることではなく、さらに大きな、広い問いかけを参加者すべてに投げかけたのではないかと思う。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年7月11日
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